雨音。

雨の音が心地よい。
わたしの汚れた部分が浄化されるように
すぅーっと気持ちが楽になる。

その音と共に心の中にずっと溜めていたダムが
崩壊していくのが分かる。
不思議だ、濡れることは嫌うくせに
雨音は心地よいなんて。人間はなんて勝手な生き物なのだろう。

時計が24時を回ろうとしていたが
私の体は思うように動かなかった。
激しい眠気に襲われ、鉛のように重い。

まだ入浴を済ませてなかったため
少し気が焦ってはいたものの、意識とは
反対方向を走る魔物が私を襲った。
いっそのこと、このまま眠ってしまおうか。
とも考えたが、やはり気持ちが悪い。

あと5分..10分..覚悟して体を起こそうとするも
中々言うことを聞かない。

その時、雨音がピタリと止んだ。
今まで心地よかった音が消えた。
舞台の陰に隠れていた
秒針だけが私の部屋の指揮者となった。

指揮者は急かすように秒針を走らせる。
チクタクチクタク..
まだか、まだ起きないかと言わんばかりに

チクタクチクタク..
前者のオーケストラには無かった
不安と焦燥感が生々しく体に残っていく感覚。
なんとも気分が悪い。

鉛のように重い鍵盤を指揮者のリズムに合わせるように、私は体を起した。
頭が微かに痛い。シャーンとシンバルが鳴り響く。

同時に指揮者は秒針から鼓動へと変わり
目を覚ませる。
あしたの天気を考えながら私は浴室へと向かった。


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