未だに忘れられない元カノと、久しぶりに再会しました
スーツを纏った会社員が行き交う、平日の朝。
〇〇と会社の同僚である△△は、少し街外れにあるカフェに来ていた。
△ : こうやってカフェに来るのも、たまにはいいな!
〇 : ......まぁな。けど、お前奥さんにちゃんと言ったんだろうな?
△ : え、何を?
〇 : 有給を勝手に取ったことだよ。
△ : いや、そんなのバレたら怒られるし言える訳ないだろ!?
〇 : はぁ、やっぱりな...だからお前奥さんと喧嘩するんだろ?
△ : ウグッ...そ、そうだけどさ......
ここ最近、△△は奥さんと上手くいってないらしい。
仕事終わり家に帰るのも嫌だそうで、よく俺の家に泊まりに来る。
俺からすれば、いい迷惑だ。
しかも、話を聞けば悪いのは全て△△だし...
まぁ、今日はその気分転換としてカフェに来たって訳。
〇 : このままだと離婚まっしぐらだな。笑
△ : おい、そんな事言わないでくれよ...
〇 : ならちゃんと奥さんに謝れよ?
△ : は、はい...
なんて偉そうに言ってるけど、俺は彼女すらいないんだよな。
彼女がいたのも、もう随分と前の話。
その彼女とは3年近く付き合っていた。
でも、突然俺の前からいなくなった。
理由は分からない。何も言わずにいなくなった。
......俺はまだ、好きなんだけどな。
まぁ、あいつはもう何とも思ってないか。
△ : なぁ、〇〇は結婚願望とかないの?
〇 : 結婚願望ね......
〇 : あるけど、まず彼女がいないしな。
△ : 気になってる子は?
〇 : ......いないかな。
△ : ちぇっ!つまんない奴だなー。
〇 : 悪かったな、つまんない奴で。
△ : なんか〇〇って全然女っ気ないよなー?職場の女性とも話そうとしないし。
〇 : 職場の女性には興味ねぇんだって。
△ : 俺が可愛い女の子でも紹介してやろうk...
Prrrrr.....📞
△ : あ、電話だ......ごめん、出ていい?
〇 : おう。
△ : ありがと! はい、もしもし......
〇 : ......。
結婚願望...か......
俺だってもういい歳だし、結婚はもちろんしたい。
でも、どうしてもあいつが頭から離れない。
そのせいで結婚どころか彼女はもちろん、気になる子すら出来ない。
......あいつ、今何してんのかな。
はぁ......ダメだ。早く忘れないと。
〇 : ......。
△ : 〇〇ごめん...!急用が出来て、家に帰らないといけなくなった!
〇 : はぁ? お前の為に有給取ってここまで来たのに...
△ : ごめんって...!
〇 : ......ふふっ、冗談だって。早く行ってこい。
△ : ありがとな!また今度休みの日に行こうぜ!
〇 : おう。
あんな事言っといてあいつ、家族想いじゃねぇか。
家に帰れば奥さんがいて、子供がいて...
皆で一緒にご飯を食べて、会話をして...
やっぱり、結婚って幸せなんだろうな。
〇 : ふぅ......こっから何しようかな...
カフェを出たのは良いものの、手持ち無沙汰になってしまった。
〇 : せっかくだし、買い物でも行くか。
そう思い、歩を進めようとした時...
? : 〇〇......だよね...?
〇 : ん......?
? : やっぱり〇〇だ...!
〇 : な、和......!?
この瞬間、自分の想いを抑え込んでいた蓋が一瞬にして弾け飛んだ──
和 : 久しぶりだね!
〇 : そ、そうだな...
和 : 元気にしてた?
〇 : ......まぁ、おかげさまで。
和 : そっか!
こいつが俺が最後に付き合った、元カノ。
3年近く付き合った、元カノ。
俺の前から突然いなくなった、元カノ。
今でも想い続けている、元カノ。
忘れたいのに忘れられない、元カノ。
和 : 今は何をしてたの?
〇 : ......会社の同僚といたんだけど、色々あって1人になったから買い物に行こうかなって。
和 : そうなんだね!
〇 : ......和は?
和 : 私も1人で買い物してた所だよ!
〇 : ......そっか。
和 : なんか...知らないうちに〇〇凄いかっこよくなったねっ!
〇 : ......別にそんなことないよ。
もう、やめてくれよ...
どうせ和は、俺の事を何とも思ってないからそうやって言えるんだろうけど。
俺の気持ちを知らないで...
いつまで経っても忘れられないだろ...
〇 : ......。
和 : ね、ねぇ...〇〇?
〇 : ......何だよ。
和 : やっぱりあの時の事まだ怒ってる......よね?
〇 : ......。
和 : あの時は、本当にごめんなさい...
〇 : ......。
和 : 〇〇の前から突然いなくなって...
和 : 〇〇の気持ちを一切考えて無かった...
〇 : ......別に、もういいよ。
和 : 本当にごめんなさい...
〇 : ......ただ、あの時凄い悔しかった。
和 : えっ...?
〇 : 何も言わずに、俺の前から突然いなくなって......怒りよりも、何も言ってくれなかった事への悔しさの方が大きかった。
〇 : 和をずっと待ってても、帰ってこない......所詮俺はそのくらいの彼氏だったんだって...
和 : 本当にごめんなさい...
〇 : もう謝らなくていいよ。でも、なぜ急にいなくなったのかだけ教えて?
和 : ......実は私、小さい頃からの夢があったの。
〇 : 夢?
和 : 私、アイドルになりたかったの。
〇 : そ、そうだったんだ......でも、それなら相談してくれれば良かったのに。
和 : 私も相談しようと思ったんだけど、相談したら何か自分の中で踏ん切りがつかなくなる気がして...
和 : だから、あんな行動を取っちゃったの...
和 : まぁ、夢は叶わなかったんだけどね...
〇 : そ、そっか......それで今ここに戻ってきたの?
和 : うん......本当にごめん。
〇 : ううん、大丈夫。教えてくれてありがとね。
和が突然いなくなった時、てっきり嫌われたのかと思ってた。
だから、そんな事があったなんて思いもしなかった。
和がアイドルを目指してたなんて一回も聞いた事がなかったし、そんな素振りも一切見せなかった。
そりゃ、本当は相談して欲しかった。
別れようの一言だけでも言って欲しかった。
でも、誤解を解く事が出来て本当に良かった。
和とまた会えて、本当に良かった。
〇 : じゃあ...あの時の誤解も解けた事だし、もう行くね?
和 : ......。
〇 : ......じゃあ、また。元気でな。
和に背を向け、帰ろうとしたその瞬間...
馴染みのある俺の大好きな香りが鼻先をくすぐり
それと同時に、小さく華奢な身体が俺の身体を掻き抱いた。
〇 : 和...?
和 : ......ごめん。
〇 : ど、どうしたの...?
和 : ......本当は、ずっと忘れられなかった。
〇 : えっ...?
和 : 〇〇の事、ずっと忘れられなかった。
和 : あんな事しといて、今更言うなよって思うかもしれない...
〇 : ......。
和 : でも、この気持ちにやっぱり嘘はつけないよ...
和 : 凄いわがままだけど、〇〇が良かったら...
「私と、また一からやり直して欲しい。」
〇 : ......。
和 : お願いします......
〇 : ......俺だってずっと忘れられなかった。
和 : ......っ。
〇 : 和がいなくなった日から、和を一瞬たりとも忘れた事なんか無い。
〇 : でも和は俺の事をもうなんとも思ってないんだって、ずっとこの気持ちに蓋をしてた...
和 : ......。
〇 : だから和が気持ちを伝えてくれて、本当に嬉しかった。
〇 : こちらこそ、和が良かったら...
「俺と、また一からやり直そう」
"未だに忘れられない元カノ" と久しぶりに再会し
数年後、"生涯忘れる事のない奥さん" になりました。
𝑭𝒊𝒏.
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