母と歌えば2024⑭
「今、どこにいるの?」
先週の木曜、母の抜糸の日だった。背中に粉瘤というものができ、良性だとはいえ、背中がゴロゴロして眠れない、と言い、前の週の月曜に外科で切開したのだ。
抜糸の予約時間は朝の9時。
「私はそんな早い時間には来られないので、もう少し遅い時間にできませんか?」
と、私は予約の際、病院の先生に言ったが、母はひとりで来るからいい、と言った。もちろん、大丈夫だろうけれど、母は耳が遠い。補聴器をしても、聞き取れない音もある。
「あんまりなんでも人に頼ると、一人で何もできなくなっちゃうわ。」
それもそうね。その日は母一人で病院に行くことになった。
「でもね、補聴器の調子も悪いの。家の中に居ればなんでもないんだけど、外に出るとピーピー鳴り出すの。」
抜糸をする外科のある病院から、補聴器の調整をする眼科までは、割と近い。歩いて10分はかからないだろう。
「じゃあ、私は抜糸が終わる頃、病院に行こうか?それで一緒に眼科に行けばいいよ。」
母はそうするかどうか、決めないうちに当日になってしまった。私は当日、母が出かける前の時間に電話をしてみたが、電話には出なかった。まだ、補聴器をしていなかったのかも知れない。メールもしたが、出先の母と出かける用意をしている私のメールは入れ違いになり、母から
「全部終わったので、帰ります。」
というメールが届いた。私はとりあえず、実家に向かうことにした。昔の母はこういう時、とても怒っていた。私は前日に実家に行った時、忘れ物もしていたので、それを取りに行くという口実もある。私はバスに乗って実家に向かった。その旨、メールすると、
「まだ病院の近くの駅にいます」
というメールが届いた。あー、それならばバスを降りなければよかった。私はそう思いながら、実家に向かった。
「あなたのいうとおり、待ってればよかったわ。そうすれば、用事を二つ済ませられたのに。」
実家で待っていると、帰って来た母がそう言った。そうね、でも病院のはしごってきっと疲れるよ。
前日に続いて、お昼ご飯ごちそうさま。
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