母と歌えば2024⑱

今年の6月、親戚の人が三人もお空に行ってしまった。去年の11月にも父の妹が亡くなった。
「そう言う時期なのよ。」
実家のリビングでノンカフェインの紅茶を飲みながら、母はしみじみと言った。
「でもね、全然関係ないけどね、ダスキンで布団のクリーニング頼もうと思うの。高いだろうけど、私、まだ死なないと思うし。」
母はちょっとふざけた。そうよ。良いじゃない。ぜひ、夏の間に冬用の布団をクリーニングしておいてね。
 父の兄弟は六人。
「去年の秋までみんな存命だったのに、もう二人も亡くなって、生きてるのは三人だけ。あら、計算が合わないわね。」
一人足りないのは父の分。父は2011年の1月に亡くなっている。
「あー、パパを数えるの忘れてた。一人だけ先に亡くなったからね。」
 父の兄弟姉妹の中で子供がいなかった人が二人。つい最近亡くなった叔父とその前に亡くなった叔母にはお子さんがいなかった。だから、何かにつけて末っ子の小岩の叔母が面倒を見ることになる。
「末っ子の運命だから、しょうがないの、って言ってたよ。」
「そうかなぁ?うちではそんなこともないわよ。」
母は自分の兄弟姉妹のことを考えているようだった。母は十人兄弟の下から二番目だが、母の兄弟の中には子供のいない人は誰もいない。
「みんな子供がいるからでしょ?」
でも、その下の代を考えると子供のいない夫婦もいれば、一人っ子の家もあるし、結婚しなかった人もいる。だんだん、血縁のない人が亡くなった人を送り、財産やお墓の面倒を見ることも増えてくるのかも知れない。
「小岩のおばちゃんがね、葬儀の最中に棺の中のおじちゃんに向かって、『にいちゃん、こんなお葬式で良かった?』って何度も聞いてたよ。」
私がそう言うと、母は少し涙ぐんだ。
地方在住の叔父や頭の良い叔母は、末っ子のおばちゃんに何も意見を言わなかったのだろう。確かにその方がことは上手く運ぶのかも知れないが、何もかも一人で決めなくてはいけないのは、きっと辛かっただろう。
 「さ、そろそろ歌いましょ。」
七夕は数日前に過ぎてしまったが、母は今日も七夕の歌が良いという。
「私ねー、あなたと一緒に歌うことや体操すること、すごく大切だと思ってるの。」
それはそうだと思う。一人で暮らす母はしゃべることは少ないだろうし、自分の口から声を発することは、他人の言葉を聞き取る力をアップすることにも繋がるような気がする。
 「金曜日にお墓参りに行くの。あなたも行ける?」
ごめんなさい。金曜日はダメです。妹の車で行くそうだ。気をつけて行って来てね。

ランチはハンバーグ。サラダも美味しかった。

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