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青鯖が空に浮かんだような顔

青鯖ははねて、空に浮かぶ。
それからバタバタと尾鰭背鰭を動かして、空を泳いでいく。
青鯖が空を泳ぐなんて、知らなかった。
ぷかぷかと、青鯖はどこふく風で、空を泳ぐ。

僕は初め、それが青鯖だとは思っていなかった。
魚を取るために海に潜っていた海鳥、だと思っていた。
だから空に浮かんでパタパタと蠢いている姿を見て、不細工な海鳥、だとしか思わなかったのだ。
けれど、良く見ると、魚の形をしていて、泳いでいる。

青天の霹靂じゃあないか。

鯖が空を泳げないと誰が言っただろう。
少なくとも、僕は聞いたことがない。
だから、僕が知らないだけで、公然の事実なのかもしれない、と思う。
青鯖は当然のように、空を自由に泳いでいく。
どこに向かうのだろうか。

天竺へ。
鯖が答える。まさか、空を泳ぐだけでなく、言葉まで喋られるなんで、それこそしらなかった。
そして、青鯖が空を泳いで天竺を目指しているなんて。

天竺へ行って何をするんですか?
初対面であるし、とりあえず僕は敬語を使った。鯖は僕より小さいけれど、年上かもしれない。
え、天竺って何かするためにいくところじゃ無いだろう?
逆に聞かれている。

ずいぶん教養のある青鯖である。
僕は言葉に気をつけて答える。
けれど、ただ天竺に向かって泳ぐだけでいいんですか、他に行くべきところがないんですか?
例えば?
USJとか。
あのねえ、青鯖はUSJにはいかないよ。

天竺にだっていかないのでは、と思ったけれど僕は言わない。

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