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Nのために(湊かなえ)ドラマ感想文



 「Nのために」(湊かなえ原作)は、2004年、クリスマスイブの夜、偶然同じイニシャルNを持つ6人が東京のタワーマンションで殺人事件に巻き込まれてゆく心理サスペンスだ。

 警察に事情聴取された彼等は、自分の大切なNを守ろうとそれぞれが嘘の証言をしてゆく。それは罪の共有でもあった。  
 タワーマンションで暮らす野口夫妻に憧れと野望を抱いていた大学生の杉下希美(のぞみ、榮倉奈々)は、事件現場に居合わせた成瀬慎二(窪田正孝)と高校時代の同級生で、実は4年前にも故郷の島で罪の共有をしている。 

 小さな島で育った希美は金持ちの父親が愛人を作り、母と弟と共にお城のような家から追い出され、廃屋同然の家に住むようになる。
 父から貰った養育費も、お姫様育ちの母親がすべて自分の化粧品に使ってしまい、食べ物を愛人に土下座してまで分けてもらう希美が哀れでならない。
 でも、同時に、希美には、
“どんなことをしても生き延びてやる!”  
という雑草のような逞しさも感じられる。
 “飢え死にしたくないから”と、手に入れた食材で、あらん限りの料理をガンガン作り、冷蔵庫をタッパーで埋め尽くす希美は、凄く強迫観念に満ちていて、崖っ淵に小指一本で捕まっているような危うさに、見ている私は胸が潰れそうになった。

 希美が貧乏になってから無視されるクラスで、唯一の友達が成瀬くん(窪田正孝)で、放課後、海岸や島の展望台でお互いの夢を語る時だけが、現実を忘れられる、ひとときだった。
 しかし、成瀬くんの家が経営する料亭が、ある晩、火事になり全焼してしまい、希美は彼の秘密を守るために別れを決意する。

 このドラマでは悲しい愛が幾つも交錯する。愛するが故に離れてゆく、希美と成瀬くん。
歪んだ愛しかた、愛され方しか知らなかった
タワーマンションで殺された野口夫妻。
 恋人から利用されていたとわかった後でも、自分の愛を貫抜こうとした希美と同じアパートの文学青年の西崎。
 希美(のぞみ)と同じ名前を持つ野口の部下、
安藤望(のぞみ、賀来賢人)は希美を愛していたが、一人だけ最後まで事件の真相を知らずに、海外へ旅立つ。

 大学生になってからも希美の生活苦は続くが、同じアパートの大学生の西崎(小出恵介)と望(賀来賢人)の明るさに、どれだけ救われたことだろう。台風の後、みんなで協力して屋根を直すシーンも微笑ましいけど、でも私がいちばん好きなシーンは、希美と成瀬くんが高校時代に夢を無邪気に語り合うところかな。
 プライドをかなぐり捨ててまで、
“絶対、私は高みへと這い上がるんだ!”
という希美の生きる執着心の強さは、そのまま希美のエネルギーへと昇華されてゆく。

舞台は2004年のタワーマンションの事件から⇨2000年の過去⇨2004年の現在⇨2014年の未来へと、3つの時代をタイムスリップするように4人のNが、その時の心情をモノローグするが、それぞれの生き方がブレないところが、
私は好きだ。 



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