耕す

種を蒔き 水を遣り 草を引き 
支柱を立てては下ろし
収穫を分かち合い
季節が一巡り

近頃は専ら雨頼みだったが
まだほんの小さなものも
薹が立って花が咲くものもあり

健気に育った作物の周りに
スコップを立て 踏み込み
掘り返しては そっと取り出し
土を払い 集め置く

鋤返すと 急に表に出た土は
瞬く間に色が薄まり 乾いてゆく
ホトケノザの小さな花が見え隠れ
他が無くなると 鮮やかに目に入る

周りの畑でも それぞれに
手入れに勤しむ姿があり
挨拶を交わしつつ
無心に畑を均すうちに
日の光と 土の柔らかさにふれ
私の心もなだらかになってゆく

かつて 庭の隅に馬鈴薯を植えようとしたら
半分にして切り口に灰をつけるのだと父が言い
野ざらしの鍬を 伯父がお手本にと持った途端
あっけなく柄が抜けてしまい 
一同 言葉が出なかった
何代もに亘り 農から遠のいた一家だった

下に隠れた黒い土のおかげで 立派に育ったが
いつか ちゃんとした畑で植えてみたいものだと
当時 子どもながらに思った

元に戻った畑は 別の誰かに引き継がれ
私もまた新たな場所を耕し
その地に馴染んでゆけたらと願う





























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