存在

私が私として 
生きているということ
その証を立てるのが
かくも 難しいとは

電話やメールをためらい
お互いに切実に会いたくても
約束ができないもどかしさ

これまで何とも思わずにいた
当たり前の日常の便利さと
そこで味わった窮屈な思いと
天秤にかけてみれば
今だけの辛抱に違いない

人生の残り時間は
誰にも分からない

朝に道を聞かば 夕に…
との言葉がようやく腑に落ちたのは
たしか1年半前のこと

人生を潔く生き抜くために
心に大切に持っておくべきことを
教えてくださった方々との出会い

ごく最近 ようやく掛けた電話で
ほんの束の間お話をした

そこで聞いたある作家のお名前から
新刊本に力強いサインをいただいたこと
熱のこもったお話ぶりを思い出し
居合わせたら 聞けたであろうお話を
想像し 作品を続けて読んでみた

壮大な物語を読み進めるうち
誰しも 多かれ少なかれ
小説ほどの幅ではなくても
狭い世界と広い世間とを
現実にも心の中でも
行き来していると
気付かされる

その人を その人らしくしているもの
それはきっと
感性 言葉 声 筆跡 ふとした仕草

名前や姿が変わっても 
会いたい人にはきっと
気付いてもらえる
自分の芯さえ
持ち続けていたら

本のおかげで
前向きになれた
感謝をこめて
今朝も日めくりの言葉を
かみしめる





















声や筆跡は 正直だ
感情や居場所が分からぬよう
電話や手紙を避け








不器用な人は 2つの人生を
同時に生きることはできない


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