『一人二役』著:江戸川乱歩

暇を持て余した人の話です。
江戸川乱歩作品はドロッとしたところがありますが、
この作品はドロッと要素は少なかったです。

しかし、江戸川乱歩の一癖ある人間模様を見れるので、
ドロドロした内容が好きではないけど、
江戸川乱歩読みたいみたいな人は好きかもしれません。

ネタバレを含みますので、ご注意ください。

人間、退屈すると、何を始めるか知れたものではないね。

語り手である僕が、知人Tという男について話すというのが大まかな内容です。
知人Tというのは遊民であり、時間を持て余していたそうです。

ところで、不幸なことに、この男、細君があった。
そうした種類の人間に、宿の妻という奴は、いや笑いごとじゃない。
正まさに不幸と言うべきだよ。いや、まったく。

この男が不幸だったことは、嫁がいたということです。
夫婦関係は悪くはないのですが、暇を持て余していたこともあり、夫は女性関係が激しかったというのです。

そこで、一種の興として、別の男のフリをして、妻の布団に入るということを思いついたのです。

最初は遊びのはずが、妻はその男に惹かれるようになり、
自分自身の架空の人物に嫉妬するようになります。
その思いを抱きながら、夫はどのような選択をするのか、
というのがあらすじになります。

この作品で好きなのは、
僕が読んでいる人に向かってしゃべっている文章ということです。
例えば、

え、お前がそのアリバイを勤めたのかって、いや、違う違う。

語りかけてくる感じが個人的には好きでした。
もし、江戸川乱歩が生きていて、話をしたら、こんな感じで話しかけてくるのかなぁと思っていたりします。
あと、僕話し方上手いなぁと思いました。
知識不足なら申し訳ないのですが、僕の素性は明かされていないので、
どんな人なんだろうとは思います。

文章の途中にこのような文章がでてきます。

ところで、お話はまだ少しあるんだよ。

これも、一緒に友人とかと談議している感じになります。

小説の見せ方、とても勉強になりました。

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