経済法入門 競争制限効果・行為類型

お久しぶりです。体調も回復し、〆切がやばい課題も終えました。最近は趣味のスプラトゥーンをやる時間がとれてとても幸せです。

新オカシラシャケのジョー、半端なく強かったですね。とりあえず、金イクラは147納品したので、目標は達成かなという感じです。

話を戻して、今日は競争制限効果と行為類型の総論的な話をさせていただこうと思います。

【市場画定(一定の取引分野)について】という投稿(読んでくださるとありがたいです。)で、競争制限効果を書くという話をしていましたが、制限効果と行為類型はやはり同じところに書いておいた方がよいと思うので、まとめて書きます。


競争制限効果について

1.競争制限効果の3(4)分類について

 少なくとも日本の独禁法上、市場の競争を制限する効果については、以下の3つに区分されています。
 ① 自由競争減殺効果 (①(1) 価格維持効果、①(2)市場閉鎖効果)
 ② 手段の不公正
 ③ 自由競争基盤の侵害(優越的地位の濫用)
 以下ではそれぞれを簡単に述べて行きます。

 ①(1) 価格維持効果

 価格維持効果は端的に言えば、当該市場内で価格を引き下げるという意味での価格競争が消滅し、価格が高止まりしてしまうということを指します。

 例を出せば、国内でブルドーザーに関し、合計100%のシェアを持つA,B,C,Dの4社がブルドーザーの販売価格について合意し、それに従う場合、ブルドーザーの販売価格に関する競争は消滅しますね。
 価格競争が消滅すれば、各事業者がそれ以上の努力をしなくなり、価格競争があれば存在したはずの進歩等がなくなってしまうとも考えられます。

*このように、価格競争が消滅すると一般消費者にとり、ろくなことがありません。我々は安くて質が良いものが欲しいのであって、高価で質が悪いものを欲しいわけではありません。しかし、価格という競争要素の中核部分の競争が消滅すれば、事業者が努力するインセンティブはないわけですから(いくらたばこ税が上がっても一部のたばこが好きな人が吸い続けるように、それしかないのであればそれを価格に関わらず買いますよね?)、なんの成長もない、消費者に利益もない事象が起きてしまいます。

 ①(2) 市場閉鎖効果

 市場閉鎖効果(排除効果)とは、他の事業者の代替的競争手段を奪い、市場から退出させ、または新規参入を困難にするということを指します。
 代替的競争手段を奪われれば、奪われた事業者は市場から出るしかありませんし、新規参入を困難にする場合は、新たな競合相手が存在しづらくなります。このように、既存事業者を市場から追い出し、新規参入を防げば、いずれは一人勝ちし、価格を好き放題コントロールできることになります。
 価格を好き放題コントロールすることが競争法上好ましくないというのを前提にすれば、それに至る蓋然性が経験則上裏付けられる排除もまずいでしょうということです。
 
 例を出すと、Aという半導体製造において80%のシェアを有し、かつ品質もずば抜けている企業が、自身の取引相手たる事業者に対し、A以外の半導体製造メーカーと取引した場合には、その事業者にA社の半導体を供給しないということを通達したとします。
 この場合、A社の取引相手たる事業者はAと取引をするために、他の半導体メーカーとの取引をやめないといけなくなります。そうすると、A社と同様に半導体を製造する事業者は、自身の半導体を買ってくれる人がいなくなるので、収益が出なくなります。そしたら、赤字を垂れ流し続けるわけにもいきませんから、市場から出るしかないんですね。

 こうして競争者をみんな追い出したら、一人ないし仲のいい事業者らでパイをむさぼればいいわけです。まあそんな経済的に不健全なことを競争法が許してもいいはずがなく、という感じですね。

 ② 手段の不公正

 超簡単です、読んで字のごとく、手段が汚いことです。
 嘘ついたり、物理的に妨害したり、いらんゴミ抱き合わせたり、とレパートリーがあります。
 すこし丁寧に説明すると、基本的に、独禁法は、商品の差別化などの能率競争を推奨しています。しかし、この手段の汚い場合は、その能率競争によることなく、市場を考慮することなく、直接他者に対して影響を及ぼすということになります。そこで、規制の必要があるのです。

*なお、司法試験上あまり重要ではありません。
 というのも、先ほどまでは「市場」における価格競争の消滅、または「市場」から他の事業者を退出させることを問題としていましたが、これは手段が汚ければそれでいいからです。要は市場画定が不要になり、司法試験委員がききたいことをろくに聞けなくなるんですよね。あと、実務的にも市場画定ないし行為の該当性が問題になる場合がほとんどで、手段の不公正で争うようなことはあまりないかと思います。

 ③自由競争基盤の侵害

 優越的地位にある事業者が自身の優越的地位に基いて相手方を搾取することを言います。
 公正取引委員会の一部の整理では、間接競争阻害説(要は優越やっていない事業者は適正価格で販売しているが、優越をやっている事業者は優越をやっているが故の価格で売り出したりと優越をやっていない事業者に比べて有利な地位に立ち、間接的に競争が阻害されているということです。)が採用されているようにも思えますが、とりあえず、搾取はダメ!ということにしておいてください。
*ちなみにこれも個人的には司法試験的にはあまり関係ないし、実務上でもこの効果の発生については、行為により発生している限りは誰も問題にしないかと思います。行為の存否について争う方が2億%の実益があります。優越的地位の濫用はクソほど優越的地位の存在の立証が難しく、問題作成も大変でしょうから出ないと踏んでいます。出る年にあたる受験生が存在しないことを心の底から祈っています。

2.競争制限効果の程度に関する2分類

 日本の独禁法では、競争の制限に関する文言として2つ存在しています。
 ①「公正な競争を阻害するおそれ」(「公正競争阻害性」)
 ②「競争を実質的に制限すること」
 自由競争減殺におけるこの2つは現在は萌芽理論に基づいて説明がされています。超簡単に言うと、公正競争阻害性の発展形が競争の実質的制限であるということです。
 公正競争阻害性の発生の目安は市場シェア20%ですが、競争の実質的制限は50%からが勝負です。(50%付近だと結構審査がシビアで70%超えたらもう競争の実質的制限しか考えなくていいです。しかし、試験においては排除型私的独占の文脈ではもととなる行為が不公正な取引方法に該当する場合はその検討はしておくべきでしょう。)
 競争の実質的制限とは、事業者または事業者らが、その意思である程度自由に価格・品質・数量等の諸条件を左右することが出来る状態たる市場支配力を形成・維持・強化することを言います。

 ここからは裏取りのない私見になりますが、競争の実質的制限においては、手段の不公正と自由競争基盤の侵害を考える必要はないと思っています。それは、「競争を実質的に制限する」ことは、「一定の取引分野」においてなされる必要があり、市場を観念しないといけない自由競争減殺効果において問題になるという整理が素直だからです。市場を観念しなくてもいい行為については、不公正な取引方法で取るというのが素直でしょう。

4つの行為類型

 独禁法を学ばれたみなさんなら、日本の競争法上、以下の4つの行為類型が禁止対象となっているということはよくお分かりだと思います。
 ① 不当な取引制限
 ② 私的独占
 ③ 不公正な取引方法
 ④ 企業結合
 あとは、事業者団体による行為がありますが、これは割愛します。
 以下では、①から④までを総論的に見ていきます。

①不当な取引制限について

 不当な取引制限(2条6項)は、共同行為とも呼ばれます。
 互いに競争関係にある事業者らが、「共同して」、競争制限的な行為を行うことを禁止しています。
 ここでいう「共同して」とは意思連絡を指し、互いに競争関係にある事業者らが、意思を通じて競争制限的な行為をしてはいけないという規制になります。
 カルテルや談合が代表例ですが、互いに競争関係にある事業者らが意思連絡をして価格・品質・数量等の競争の根幹ともいえる領域をコントロールすると、価格競争が破滅してしまうというおそれが歴史的に高いという経験則から導かれている行為類型です。
 ちなみに、競争制限効果が発生しているかは別として、情報交換や共同研究開発、部品の相互供給でも「共同して」と判断されることが多いです。
 *企業法務をやられる方、担当の企業の関係者が競合他社との会合に出たという話を聞いたら、なるべく早く内容を確認する、さもないとやばいかもというくらいの認識でいてください。
 (地方の建設業者とかを顧問に持つ場合は本当に気を付けてください。談合の売り上げの10%という課徴金は地方の建設業者にとって(というか全事業者にとって)重大なダメージです。)
 

②私的独占

 私的独占は、「単独で」競争の実質的制限をもたらす行為を規制するものです。
 独禁法上では、「支配」(他の事業者の意思決定を制約すること)、「排除」(他の事業者を市場から退出させること)による私的独占が2条5項に規定されています。
 「排除」に基づく私的独占(これを以下「排除型私的独占」と言います。)は、不公正な取引方法の一部が競争の実質的制限にまで至った時に捕捉することができ、それを前提として、排除型私的独占ガイドラインが作成されていると思います。
 なので、排除型私的独占ガイドラインを読まれるときは、不公正な取引方法の発展形だと思って、不公正な取引方法も、排除型私的独占も勉強するとう意識で読まれてください。
 

③不公正な取引方法

 不公正な取引方法は、競争制限的な行為を禁止しています。
 細かく行為類型が定まっていることが最大の特徴ですが、一部は、排除型私的独占で述べたように、競争の実質的制限の程度に至れば①または②の行為として捕捉されます。

④ 企業結合

 企業結合は、字のごとくですね(笑)。
 企業同士が結合する場合に「競争が実質的に制限されることとなる」場合には、事前に止めるという感じです。
 競争者どうしが結合する水平型、取引相手と結合する垂直型、水平型でも垂直型でもない混合型が存在しています。
 水平型は、基本的にまっくろくろすけ(事前審査通らない)ですから、実務的には垂直型ないし、シナジーが見づらい混合型の企業結合が多いかと思います。ソフトバンクの孫さんがいつぞやの企業買収で独禁法上問題になりづらいところを買っているとメディアの前で発言したことがありましたね、現場頭抱えてそう。
 

まとめ

 以下で、競争制限効果と行為(企業結合を除く)の対応をまとめておきました。よろしければ参照されてください。

自由競争減殺(価格維持)
不当な取引制限(2条6項)、支配型私的独占(2条5項)、再販売価格の拘束(2条9項4号)、拘束条件付取引(一般指定12項)

自由競争減殺(他者排除)
不当な取引制限(2条6項)(共同ボイコット)、排除型私的独占(2条5項)、取引拒絶(2条9項1号、一般指定1項、2項)、差別対価・取り扱い(2条9項2号、一般指定3項、4項)、不当廉売(2条9項3号、一般指定6項)、不当高価購入(一般指定7項)抱き合わせ販売(一般指定10項)、排他条件付取引(一般指定11項)、拘束条件付取引(一般指定12項)、取引妨害(一般指定14項)

手段の不公正
抱き合わせ販売、欺瞞的顧客誘引、不当な利益による顧客誘引、(役員選任の不当干渉)

自由競争基盤の侵害
優越的地位の濫用

 次は、企業結合についてガイドラインを敷衍しながら、少し詳しく書いていければと思っています。
 しかし、noteで経済法と調べたら一桁合格者(何年かは知りませんが)の論証集が2千円で売られていたのを見て、論証集、需要あるかも!と思ったので、場合によっては論証集を書くかもしれません。
 私は市場支配力がございませんので、不当廉売でもなんでもやり放題ですから、積極的に価格競争したいと思います、(楽天モバイルみたいにね)。

 ここまで、長文、乱文を読んでいただきありがとうございました!
 
 また次の投稿も読んでいただけると幸いです。
 

 

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