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収支計算書と活動計算書の違い Part1

NPO法人には、会計基準があります。
経理に慣れていない事務局にとって、この会計基準に則った経理処理は、わかりにくいものです。

今回から、シリーズで、NPO法人会計に取り入れている財務諸表の考え方をお伝えしていきます。

今日は、普段見慣れているPTAや自治会などで取り入れている「収支計算書」と、NPO法人会計の「活動計算書」の違いについて、解説します。

収支と活動

まずどちらも、同じ計算書です。
金銭の動きによって、生まれたものを、記録したものです。
でも、ひとつは、純粋なお金の動きであり、もう一つは、どれだけ儲けたかを記録しています。
収支と活動は、似ているようで違う切り口で、集計しているのです。

収支計算書

こちらは、純粋に財布に入ってきたお金と、支払で出ていったお金を集計したものです。
一番わかり易いのが、「お小遣い帳」でしょうか。
かっこいい言い方をすれば、「キャッシュフロー計算書」とも言われています。

入ってきたお金=収入
出ていくお金=支出
残ったお金(来期の運転資金)=収支差額

たったこれだけです。

収支計算書となると、こんな形になります。


収支計算書の見本

経理や会計の知識がなくても、誰もが馴染みのある計算書です。
よって、経理事務が充実していない団体では、よく取り入れている形式になります。

活動計算書

次は、活動計算書です。
収支計算書と同じ収入と支出の場合、次のようになります。

活動計算書

とたんに、数字や文字が細かくなりました。

実は、経費の見方が活動計算書のほうが、細かくなります。
理由については、次のとおりです。

  • 支出の種類を、目的ごとに区別するため

  • 公益法人や学校法人といった、公益性の高い法人が取り入れている会計基準によせているため

この2つによって、支出の色分けをするために、分けています。
ゆえに、数字が細かくなっているのです。

活動計算書の支出が細かいわけ

なぜ、支出を細かく分けているのでしょうか。

これには、わけがあります。
活動計算書とは、そもそも、「損益計算書」の考え方で作られているのです。

いくらキャッシュが残っているか?で集計された収支計算書とちがい、
活動計算書は、
「その事業を行って、どれだけ利益が出ているのか」
という視点で、集計されているのです。

この「事業」が曲者です。
NPO法人には、「非営利活動事業」と「その他活動事業」に分けられます。
事業がひとつしかないのであれば、区分する必要はありません。
でも、複数事業を展開している場合、それは、事業ごとに、活動計算書を分ける必要があるのです。

この「事業」を横の糸、「活動計算書」を縦の糸に捉えると、
財務諸表は、一枚の布のように集計されています。

これによって、なにが見えるかというと、
行っている事業が、適正なものかどうか、ということなのです。

例えば、収入ないのに、一生懸命事業を善意の気持ちで行っていたとします。
一見、心がきれいな団体に見えますが、事業を継続させることを考えると、それは、非常に不健全であるわけです。

収支計算書では、それが見えにくくなります。
でも、損益ベースで集計された活動計算書となれば、どのような支出がなされていたかを、一目わかるのです。

つまり、その事業運営が安定し、社会にも求められていたら、活動計算書上では、利益または、少しの利益が残っているはずです。

しかし、事業として継続が難しいと判断される場合、事業別の損益を見て、赤字であるケースが往々にしてあります。

活動計算書は誰が見るのか

このように、団体の事業運営の判断を、役員が下す際、活動計算書のほうが、判断材料がたくさんあるということです。

実は、この判断する人ですが、団体の役員だけではないのです。
所轄官庁である役所も、監督する立場として、財務諸表をcheckしています。

以前は、役所である公会計も、収支計算書が作られた時代がありました。
でも、今では、どの法人格の会計基準には、損益の考え方が導入されています。

収支計算書では、「ちゃんと集めたお金を、いくら使って、いくらお金があるの?」の考え方でした。

でも、今は、「その事業、ちゃんと運営している?」という視点に変わってきています。

昔は、お金はすべて、金庫や銀行口座にあった時代です。
でも、今は、いろんな形の資産があって、資産ごとの集計(貸借対照表)も必要になってきています。

お金については、貸借対照表で。
事業については、活動計算書で利益が残っているか。

この考え方になって、今に至ります。

今後は、数回にわけて、この「NPO法人会計基準」について、帳票ごとに解説してまいります。


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