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「二人目は?」のワードに、毎度地獄に叩き落とされていたころのはなし

我が家の娘はひとりっ子。正しくは『選択ひとりっ子』だ。
家族三人+犬で、ほそぼそと幸せにくらしている。

世のママたちはご存じだろうが、子供が二、三歳になると、徐々に第二子を妊娠するママが増えてくる。そこで飛び交うワードがこれ。

「二人目は?」

このワード、当時のわたしはピッコロの究極奥義、魔貫光殺法並みの威力に感じていた。(古い)
質問をした側は「もう梅雨入った~?」くらいのテンションなのに。
この記事を、いつどこから飛んでくるかわからない「二人目は?」にビクつくすべての女性たちに捧げます。愛をこめて。


わたしの気持ち(2人目はいらない)

出産して間もないわたしは、『娘が成長すれば、自分も二人目が欲しくなる時がくるだろう』と思っていた。しかし、娘が三歳をすぎても、その時はこなかった。当時の私は、子供が大きくなったら娘と2人でスペインとか行きたいなぁ~。よし、お金稼ごうっと!こんな雰囲気だった。

今思えば、「二人目は?」と聞かれたら、上記のことをそのまま伝えて "ちょっと不思議なママ" 認定を受ければ、これ以上聞かれずに済む解決策だとわかる。波風を立てないための、のらりくらりの返答は、ある一部の人たちの好奇心に火をともす。しまいには、『兄弟は絶対にいたほうがいい』『産めばなんとかなるよ』『まだ若いんだし』談義に花を咲かせてしまう結果になる。

わたしの気持ち (2人目ほしいかも)

はじめは「そっすかー」と、アホな新人ばりに聞き流していたのに、保育園のクラスや習い事で、いよいよひとりっ子が少なくなってくると、気持ちに変化が出てきた。
ひとりっ子育ちによる弊害をネットで調べたり、LINEのひとりっ子の親が集うオープンチャットに入り浸った。娘がわがままを言うと『ひとりっ子だから…?』と結びつけ、同じひとりっ子だと思っていた子に兄弟がいるとわかると、激しく落ち込むという奇行を繰りかえした。

もう一人、子供を育てたい?
わたしが『二児のママ』って思われたいだけ?


さぁ。暗黒時代の幕開けだ!!

保育園のパパさんの一言ではじけた

娘が4歳になった頃。公園で娘をブランコにのせていると、隣に娘と同じくらいの年齢の男の子と、父親らしきふくよかな男がやってきた。コロナ禍で知らなかったが、保育園で同じクラスらしい。その父親はわたしに頭を下げると、開口一番にこう言った。
「あれ?ご兄弟は?」
初対面でそれかよと思いつつ、ひとりっ子の旨を伝えると、その男はパグのように眉間にしわを寄せて
「え、ひとり?あー、なんかすみません。」
と、目をそらした。
どなた様か、そのときのわたしの能面ヅラを写真に収めている方はいませんでしょうか。絶対笑える。今までわたしのまわりをWi-Fiのごとく張り巡らされていた『ひとりっ子ってかわいそう』を、初対面で出産の痛みも味わったことのないデブおやじに(ごめんなさいごめんなさい)さらりと言葉にされたのだ。その日の夜、緊急家族会議をひらいた。

人工授精6回失敗

子をつくる行いからほぼ卒業していた私達夫婦は、潔く医療の力をお借りすることに合致した。
二度とごめんだと思っていたつわりや寝不足、父親としては30点の旦那、夫婦そろって兄弟とは絶縁状態、娘とのスペイン旅行は予算の関係で熱海に変更、完全ワンオペ育児…。そんな不安という素材たちに漬け物石をのせ、近所の有名な産科に行った。
しかし、そこでの検査でAMHという値が異常に低いということが分かった。卵子の数が少なくなってきてるということらしい。また、甲状腺の数値もだいぶ悪く、流産しやすいということだった。

先生からは、すぐに体外授精に進んだほうがよいと言われたが、まずは…ということで、甲状腺の薬をのみつつ人工授精を始めた。
しかし、6回やってもダメだった。それでも体外授精に進まなかったのは、わたしは新たに子どもを育てたいのではなく、今いる娘に良い影響をもたらすであろう存在がほしいだけと、気づきはじめていたからだと思う。

こんな状態でも「そろそろ二人目できた~?」の矢を飛ばす輩がいる。ちなみにそういう人は、彼氏のいない子に「はやく結婚したほうがいいよ~」DINKSの夫婦に「子供つくりなよ~」と言う率めっちゃ高い。

諦めがついたきっかけは、まさかの『占い』と『犬』


それから半年、ひとりっ子の母としてのふんぎりもつかず、妊活もせずモヤモヤしていた。すると、「新大久保にすごい当たる占い師がいるから、気分転換に行こう」と友達が誘ってくれた。
その占い師がすごかった。
わたしの過去の流産や子供の教育への考え方、片方の先祖の墓参りをおざなりにしていること、何か紙に向かって創作していること(当時絵本をかいていた)などを、ピタリと言い当てたのだ。
その占い師に「2021年があけると二人目がほしいという気持ちがスーっと消えて、やりたいことに打ち込める身軽さ、金銭的な余裕に優越感すら感じるようになる」と言われた。
そして2022年。本当に濃霧が晴れていくように、目の前がクリアになった。優越感までは感じないが、二児の母を見てもドロドロした感情が一切わいてこない。 "ふふ。おたくら微笑ましいではあーりませんか!!" といった具合だ。

また、体外授精をするかもと用意していた貯蓄の一部で、娘の欲しがっていたワンコを飼った。愛犬家はみんな同じこと思っていると思うが、この世で一番かわいい犬だと思っている。ぜひ、これを機会にまぶたに焼き付けていただきたい。


青か8だよ

「なんで結婚しないの?」もそうだが、「子供つくらないの?」などの質問は、十人十色の背景がありすぎて、漠然とした質問だと思う。もし今、我が家に赤ちゃんがやってきたら楽しいと思う。でもそれは、"ハワイに移住したら絶対楽しい"  に近い。『なんとかなるよ』は、産む選択に一ミリの後悔がない人限定の言葉である。わたしにその自信はない。

それはこの世に存在しない我が子への、わたしなりの愛だ。

ひとりっ子、かわいそうと思うも子供への愛。
ひとりっ子、大切に育てようも子供への愛。



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