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2018年「京王線の悲劇」

はじまりは
2018年4月、春のこと。
『出会い』と『別れ』の季節とは
よく言ったもので僕にとって
まさに『出会い』の季節だった。
そしてそんな年だった。

その春、僕は大学4回生になった。
年齢は21歳。
早生まれの僕は周りより歳を重ねるのが遅い。
ようやく21歳になった僕は、
働いて3年目のバイト先に新しく入った
3歳下の大学1回生の女の子と『出会った』。
その子も早生まれ。
互いに時給のいい薬局のバイトに惹かれて
働いているだけの遊びたい学生だ。
話す口述なんてこれだけでよかった。

そこから時給が良い仕事を
サボりたい2人は
品出しの準備と題打って
倉庫で雑談をする仲になった。
その時の一言一言に紡がれる言葉に
時給を、分給を、秒給を、
頭で計算しているのか、
いないのか、定かではないが
給料大泥棒と呼ぶに値するほど
話にふけていた。
話すうちにわかったことは
働く動機と早生まれということ以外に
同じ最寄駅ということ。
倉庫での雑談が終わり、
仕事もまぁまぁな加減で終わらせ、
シフトが被るたびにバイトが終わると
立ち話を1〜2時間するようになった。
嫌な顔を見せないのを上手い子だったのか
はたまた本当の笑顔を見せてくれていたのか
僕から見たらとても楽しく
17:00〜22:00まで働いたとは思えないくらい
また仕事中に雑談をしたとは思えないくらい
まるで今日初めて会ったかのように
立ち話に花が咲く。
それが続き
3歳差だからと関係なく
互いがタメ口で話すようになった。

そこから
好きな食べ物が同じ
好きなコンテンツが同じ
嫌いなもの・ことが同じ
人との接し方が同じなど
より深く彼女…その子を知った。
そして雑談と立ち話がきっかけで
鎌倉へ休日に出かけたり、
渋谷でご飯を食べに行ったり
するようになった。
鎌倉へ行く時
最寄駅が同じだが
あえて現地で会おうとのこと。
なぜかと思ったが
待ち合わせ30分前に
あらかじめ行くお店の偵察や
予約を済ませておこうと
気合を入れて着く自分より
さらに前に到着していたその子。
なぜかと思ったら片手に紙袋。
馬に乗り、棒のようなものを持つ男性のロゴ。
「ポロラルフローレン」。
雑談中に話した
僕の誕生日を覚えてくれていて
さらにはプレゼントを用意してくれていた。
「ちょうど半年過ぎちゃったけど…。」
と2019年8月10日土曜日に
汗をよくかく僕にハンドタオルをくれた。
雑談中の話題と自分の特性を
よく見たプレゼントをもらった。
8連勤後の翌日に鎌倉へ来てくれたその子。
いつの間に買ってくれたのかと嬉しくなり、
とても良いスタートとなった鎌倉であった。


ここでコンプライアンスを気にするが
もちろん彼女は飲酒はなく
僕だけは恥ずかしながら飲酒をしている。
「いつか2人とも20歳を超えたら
一緒にお酒を飲みたい」
と言い合うようになっていた。
また早生まれのその子に対して
プレゼントはしっかり後日渡した。


同年、
年末にバイト先の忘年会があり
無事楽しく終わり、
僕とその子は
2人で帰ろうとした最中、
同じ最寄駅のバイトの同僚がもう1人いて、
僕は内心残念がりながらも
合流した同僚と3人で帰ることに。
開口一番にその同僚から衝撃の一言が。

「〇〇ちゃん
5個上の彼との同棲どうなったの?」

と言い放たれた。
僕はさーっと酔い覚め、
一瞬で頭が真っ白に。
仲良くしてたその子も
「ねぇここではその話やめて」
と一瞬でシリアスなムードに。
そのあとは無言が続き
全員同じ京王線の最寄駅に到着し
一言も交わされることなく
軽い会釈を互いに行い解散。
その後、
僕は駅前のコンビニへ足早に直行し
普段飲まない
ストロング缶のロングを2缶買った。
そして僕は夜な夜なお酒を片手に
町を徘徊し、
独り泣いた。

その後、
その子とは2ヶ月ほどバイトが同じになるも
倉庫での雑談と
仕事終わりの立ち話はなくなり、
バイトを辞めて音信不通になった。
他のバイトの人とはバイトを辞めても
連絡を少しだけしていたとのこと。
その子は留学をするためにバイトを辞めて
音信不通になったらしい。
開口一番、
衝撃的な一言を放った
同僚のバイトから聞いた話だ。
同じ最寄駅に住むはずだが
それ以降その子とは
『出会えて』いない。
2018年は人生で初めての
『別れ』との『出会い』の年だった。


“その子”を”彼女”と呼べないのは
付き合う前、告白する前、
それともそんなことさえ
その子には毛頭ないのか、
兎にも角にも
僕は「付き合う」ということを
口に出せなかったことが要因だろう。
周りより大人になるのが遅い
早生まれの男の
最初で最後の恋らしきものの話。
まぁなんというか、
金輪際は…当分は…しばらくは…。
しばらくは…当分は…金輪際は…いいや。

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