見出し画像

ショートショート

「階段」
一段ずつ階段を上がるごとに。我が家が近づくごとに。
家庭的な匂いがする。例えばカレーとか・・。
周囲のざわめき、窓から聞こえるようなTVの音声。子供の遊ぶ声。
このアパートは私しか住んでない。家賃1000円なのに。
上記の声はもう慣れた。けど。
私は長くないんだろう。違和感を持ってしまった。気付いた事に気付かれた。

「赤ちゃん」
子供の頃、近所で赤ちゃんの泣き声がよく聞こえた
「赤ちゃんの泣き声が聞こえるよ」と言うと、母親は「あれは猫の声よ」と言って私を早く寝るように促した。父は何も言わずに黙って酒を飲みながらTVを見ていた。寝床に入る私。
すると、一斉に赤ちゃんの泣き声は止んで私はぐっすり寝れた。
実家に帰った際に聞いてみたけど、父母はわざとらしく「知らない」って、言って首を傾けた。

「古本屋」
〇駅の〇通りを右に。直進すると左手に某有名チェーン店が見えるので、そこの裏路地へ。もう読めないほど色あせた看板があるのでわかりやすい。
裏路地を50M直進。間違えないでください。50Mです。そこで立ち止まってください。
すると、建物全体が植物に囲まれた古本屋が出てきます。
そこに入ると、良い感じに古ぼけた本棚ぎっしりの本。平積みされてる本。イメージ通りの店内ですが、客は自分だけ。あとは店主。店主に名前を言うと、店内の席に通されてお茶を出される。少しくつろいでいると店主が一冊の文庫本を持ってくる。その文庫本もタイトルは「○○○○の人生」
○○○○はあなたの名前です。その本にはあなたの過去、現在、未来。全てがあり回避するべき事、その方法も。本当に全て記載されており読み進めていくと自身の生涯を理解し、受け入れることができます。
すると、とあるページで手が止まります。それは「あとがき」前の1ページです。
そこには「ここまで読んだ記憶を残せば、あとがきにすすめます。ここまで読んだ記憶を消せばあとがきは読めません。どうしますか?」とあります。
タイミング良く店主が笑顔で聞いてきます。
「お茶は要りますか?」
ここが引き返せる最後のタイミングです。どちらを選んでも構いませんが、どちらかを選択すると不幸になります。

あなたはどちらを選ぶ?




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?