元兵士たちの日米野球

今から16年前に放送されたNHK番組の再放送を見て、グッときた。

第二次世界大戦で殺し合いをした日米の元兵士たちが、
60年の時を経て、再び対決する。

ただし今度は、「大好きな野球で」だ。

あの時、10代、20代だった兵士は
80歳のおじいちゃんになっていた。

なぜ、今さら野球で対決するのか?

戦後、平和な国になった日本。
しかし、おじいちゃんたちは複雑な思いを抱えながら生きてきた。

目の当りにした沢山の無残な死、アメリカに対しての憎しみ、
わだかまり…
おじいちゃんたちの戦争は続いていたのだ。

そんな思いに決着をつけたい。

大好きな野球ならば、それができるのではないか…

そして、日米のおじいちゃんたちに変化が起きたのだ。

発案したのは、アメリカの元兵士たちが集まる野球チームだ。

ー 日米の野球対決。選手求む ー
このニュースが日本で報じられると、
たちまち全国から野球好きの元兵士から参加の申し出があった。

その中の一人が、特攻隊員だったという男性。
あと1週間遅ければ出陣していたという。
飛び立ったまま戻らぬ友が大勢いて、
生き延びてしまった自分が申し訳ないという。

大のアメリカ嫌い。アメリカ産の肉も食べなければ、
外国の食料も食べない。

心につっかえたものを抱えながら、戦後60年を生きてきた。

一方、勝者側の元アメリカ兵も苦しんでいた。

当時、真珠湾攻撃の戦艦に乗船していた男性。
日本の奇襲攻撃で隊員80名以上が亡くなった。
あの時の光景は未だに忘れられないという。

決戦の場所は、奇しくも太平洋戦争の開戦地となった「ハワイ」だった。
結果は日本のボロ負け。
アメリカはは圧倒的な強さを見せつけた。

双方の選手に変化が見られたのは試合後のこと。

大のアメリカ嫌いだった元特攻隊員の男性さんが、
アメリカ人選手に歩み寄り硬く握手を交わした。
そして自分が特攻隊だったこと、
アメリカ人を殺そうとしていたことを明かした。
それを聞いたアメリカ人の元兵士は、やさしい笑顔で答えた。
「戦争のことは未だに忘れられないけど、
 今日は試合が出来てよかったね。」

終戦から60年…
元兵士たちの心のつっかかりが、少し溶けたようだった。

初回の放送から16年経ち

この時登場したおじいちゃんたちの大半は、
もう亡くなっているんだろう。
とても貴重な記録だし、
再放送してくれて良かったなと思った。

今回ハッとさせられたのは、
戦争が終わったから、はいシャンシャンじゃないということ。
60年という長い間、ずーと心に傷を負って生活していたんだと思うと、
気の毒でたまらなくなった。
自分の祖父も同じような思いを持っていたのだろうか?
死んでしまったじいちゃんに、聞きたいことが山ほどある。
と同時に、自分は戦争時代に生まれてこなくて本当に幸せだと思った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?