イカ室たぎった【毎週ショートショートnote裏お題】

「そろそろ仕事してくれねぇかなぁあ？」

跳ね上がる元気なイカで、水槽の中が沸騰しているかのように見える。

「ああ、悪かったよ」

スマホゲーム、イカ室を閉じて目を上げると、西川も漫画を読んでいる最中だった。

お前…

取り立て屋の西川兄妹、その兄の方。夜の世界が生業でも、痘痕面が原因でホストは無理。しかし、ほとんどの取り立てが”お願いする”だけで終わるのも、その強面のなせる業だった。

だが、横に積まれたコッテコテの少女漫画は何なんだ？しかも、ここは男性専用のサウナの休憩室。何故そんなものが置いてある？

「やっぱり頼んでみるもんだよなぁ。お前も読んでみろよ」

まさか、俺に読ませるためにリクエストしたのか？

漫画本を一冊受け取ると、そこには数枚の一万円札が挟まっている。

「この間は、ありがとうなあ。ああいう場所は、苦手で仕方ねぇんだ」

言葉から察するに、ホストクラブの件の報酬だろう。

「で、次の依頼は？」

そして、今日の仕事が始まっていった。

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(410字）

たらはかに（田原にか）さまの企画への参加作品です。「たぎる」には「沸騰する」という意味があるらしいです。

この作品が気になった方は、こちらのマガジンもご覧ください。

410字の群像劇｜照田八月｜note