『家族ダンジョン』第29話 第二十七階層 揺れる
夏季休暇を利用した異国への家族旅行に似ている。ふんわりとした雰囲気は次の階で一変した。
通路は、たったの一本。それ以外に道はない。その床が進行方向とは逆に高速で動いている。視界の限界を超えていて奥は薄暗かった。
冨子が弱々しい笑みを浮かべる。
「これは私だと厳しいかもー」
「俺様の背中に乗せてやってもいいぞ」
ハムが冨子に向かって背中を傾けた。
「やめた方がいいと思うんだけど」
「えー、どうしてよー。海や砂漠でハムちゃんは大活躍したよー」
冨子は茜に向かって不満を零