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アベンチュリンアチーブの元ネタであるサテュリコンとかいうイカれた小説を知ってくれ

注意:この解説にはBL的な表現、猥褻な表現を含みます


サテュリコンとは

サテュリコンとは紀元後1世紀(60年代前半と言われている)にペトロニウスによって書かれたと推測されている、ネロ期の古代ローマを描いた小説です。
美少年の奴隷をめぐって二人の男性が争ったり南イタリアを放浪する様子を描いた、尖りまくった堕落系日常BLみたいな話の小説で、とにかく奴隷がたくさん出てきます。
(古代ローマではそれくらい奴隷が一般的だったということです)

ペトロニウスによって書かれたと推定される、ネロ期の堕落した古代ローマを描いた小説
現存するのは、14、15、16巻の、3巻の抄録であり、現在には完全な形では残っていない。その中でも比較的分量の残っている「トルマルキオの饗宴」の場面は有名。

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

サテュリコンとアベンチュリンの関係

2.1アチーブメントの
・シビル、何が欲しい?(アベンチュリンストーリー完了時)
・彼女は言った、僕は死ぬと
(ボスアベンチュリン撃破時)
について。

これはT・S・エリオットの「荒地」という詩の、題辞と献辞から取られています。この詩は古典文学からの引用が多用されています。
ゲーム内ではアチーブメント以外にも、2.1アベンチュリン視点クエスト中にクラークフィルムランド内で浮かんでいた文字はこの詩の5部「雷の語ったこと」より引用されていると思われます。

そして、この「荒地」の題辞と献辞の引用元が「サテュリコン」です。

じっさいわしはこの眼でシビュラが瓶の中にぶらさがっとるのを、クーマエで見たよ。子供がギリシア語で彼女に『シビュラよ、何が欲しい』と訊くと、彼女はいつも『死にたいの』と答えていたものさ

岩波文庫『サテュリコン:古代ローマの諷刺小説』

クーマエのシビュラ(十人の女予言者の一人)はアポロンから愛され、長寿を与えられたが、不老は与えられなかったため、老いて蝉のように縮んでしまい、小さな瓶の中に住んでいた。そんな彼女に何が欲しいか聞くと、彼女はいつも「死にたい」と答えた。という一文です。
元ネタでは女性なので、アチーブメントの「彼女は言った、僕は死ぬと」というのは、意図的にアベンチュリンの一人称である「僕」と翻訳されていることがわかります。

これは、サテュリコンの「トルマルキオの宴会」48節の文章です。
トルマルキオというのは人物の名前で、派手好きで成金の解放奴隷です。
(ネロ期の古代ローマでは奴隷身分だった者が解放され巨万の富を得て台頭するという例が多く見られました)

彼は決して賢くなく、どちらかと言うと滑稽なキャラクターとして描かれています。

彼(トルマルキオ)は洗練された人物としてではなく、派手な装いで登場すればその悪趣味を賓客にくすくすと笑われ、教養人を装って古典の知識を披露すれば間違いを露呈してばかりである

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

そのモチーフに古代ローマ・古代ギリシャ要素が多いレイシオから見れば、奴隷であるアベンチュリンが派手な格好をしているのは悪趣味でしかなく、「派手な格好はやめろと何度も言っている」のは彼が周りからどう見られるかを心配しての忠告かもしれません。

ちなみに、トルマルキオというのは「3度祝福された人」という意味の名前ですが、内部のキャラクター性があまりにもアベンチュリン(カカワーシャ)からかけ離れているのであくまで表面的なモチーフだと思われます。サテュリコンにはアベンチュリンのモチーフになっていそうなものが各所に散らばっているので、たくさんの人物から少しずつ参考にしているのかもしれません。


ここからは、実際に大まかなあらすじを簡単に紹介していきます。わかりやすいようかなり凝縮してまとめていますがだいたいこんな感じです。

※男と男が年齢関係なくあらゆるシーンでまぐわいまくっています。わかりやすさを優先してBL的な例え方をしている箇所があります。
※サテュリコンは原典が完全な状態ではないため、ところどころ描写が飛び飛びになります。
※なるべく軽く書くだけに留めていますが奴隷に関する胸糞の悪い描写が所々あります。苦手な方は絶対に読まないでください。

主な登場人物

  • エンコルピウス この物語の語り手。スパルタ人の元剣闘士で、試合場をだまし円形劇場の柵から逃げのびた逃亡奴隷。

  • ギトン 美しくて優しい、勇敢な少年奴隷。16歳。母から大人になるなと言われ、奴隷屯所(奴隷が休息する地下室で倫理はないに等しい)で女の役をしていた。

  • アスキュルトス 少年時代に高く売られ、少女のように扱われていた。姦淫によって自由の身となった。

  • エウモルプス みすぼらしい姿をした詩人。途中からエンコルピウスらの旅に同行する。

第一部

第一部では、エンコルピウスが柱廊で雄弁術の先生であるアガメムノンに演説や詩を披露したりされたりするところから始まります。
すっかり夢中になっていたエンコルピウスは途中で友人のアスキュルトスがいないことに気づき、二人が滞在する宿屋に帰ろうとしますが、道がわからず狡猾な老婆にだまされ、淫売窟に連れて来られてしまいます。
淫売窟には何故かアスキュルトスがおり、聞けば彼も男に無理矢理ここに連れて来られてしまったが、腕力で抜け出してきたとのこと。
エンコルピウスとアスキュルトスは協力して淫売窟から脱出します。

二人はその後、ギトンという少年と三人で話し合います。
彼はエンコルピウスが寵愛する美しい少年奴隷で、彼のことを「弟」と呼んでいます。(※古代ローマではお気に入りの奴隷を義理の弟妹に例えて言うのかもしれません。アスキュルトスも「自分の弟を見つける……」と発言していたので)
ギトンは泣きながら「アスキュルトスに『お前がルクレティアなら俺はお前のタルキニウスになるぜ(※ルクレティアはコラティヌスの妻で、タルキニウスという男に犯されて自殺した)』と言われて犯されかけた」とエンコルピウスに言い、それを聞いたエンコルピウスはアスキュルトスを、「汚れた男娼が!」と言いながらぶん殴りました。

アスキュルトスはそれに対して「前は俺がお気に入りだったくせに!」と言いながら暴れました。
二人は「さっき先生の演説から逃げたくせに!」「それは腹が空いて死にそうだったからだ!お前はご馳走が食べたかったから詩に喝采を贈ったんだ!卑しい奴め!」とか言いながら騒ぎ、最終的に「俺達もう一緒にやっていけないよ。宿も別にしよう。とりあえず今日は晩餐に呼ばれてるからそれは行こう」となりました。
これは実際エンコルピウスの思い通りで、ギトンとイチャイチャするためにアスキュルトスの嫉妬から逃れたかったのです。

エンコルピウスはアスキュルトスと別れたあと、ギトンと宿に帰ってベッドの上で裸で抱きしめ合ってキスなどをめちゃくちゃしまくりました。
しかし途中でアスキュルトスが乱入して蒲団を剥ぎ、エンコルピウスを罵りながら彼を鞭打ちはじめました。

その後色々ありエンコルピウスとアスキュルトスとギトンは盗みをしたり盗みをされたり媚薬を飲まされたり男色者にキスされたり晩餐会で酒びたしになったりまた男色者にキスされて犯されかけたりしました。
このときエンコルピウスは矛先をアスキュルトスに向けさせ男色者の下から逃れ、それを見たギトンは横で腹を抱えて笑ってたりしていました。

この間ギトンはかたわらに立って、腹を抱えて笑いころげていた。するとクヮルティッラはかれに気がついて、あの子は何者かとひどく好奇心をそそられてぼくにたずねた。あれはぼくの弟ですと答えたとき、「それではなぜ私に接吻してくれないの?」といった。そしてそばに呼んで唇を押しつけた。間もなく彼女はかれの衣服の下に手を差し込んで、まだ発育し切っていないかれの陽物をいじりまわした。
「これは明日になれば私たちの逸楽をすばらしく刺激する前菜として役立ちそうね。でも今日は逸品〔逸品asellusはローマの美食家が賞翫した鱈の類であるが、同時に俗語で(驢馬のように大きな陽物を持った男)を指す〕のあとですから並みの料理など食べないわ」

古代ローマでは大きい陰茎は下品だと考えられていたようですが、やはりこういった場では重宝されていたみたいです。
第三部の内容ですが、大衆浴場にて「重そうでしかも大きな陰茎を持った男の周りで大勢の人が手を叩きながらひどくおそるおそる驚嘆していた」「その男自身のほうが陰茎の付属物のように思えた」「すばらしい授かりもの」など書かれていました。
古代ローマくらい性に開放的だと下品なほうがデフォルトすぎて彫刻になるような公の場でくらい上品な陰茎を拝みたかったのかもしれません。

その後ギトンとパンニュキスという幼い女の子(どうみても七歳以上でない)がその場のノリでまぐわうことになり、エンコルピウスは婚礼部屋の閾の前で寝取られの気分を味わいかけるものの覗いてみたらいい感じにキスだけで誤魔化そうと頑張っていたので安心して寝ました。

第二部「トルマルキオの宴会」

第二部「トルマルキオの宴会」では、エンコルピウスらがトルマルキオの開いた饗宴にもてなされる様子が描かれています。
トルマルキオは解放奴隷ですが、人々が想像する「悪い商人」そのもので、庭でトイレを宦官に手伝わせ、その後少年の髪で手を拭いたり、健康を祝してぶどう酒を食卓の上に全部こぼしたりしていました。
エンコルピウスらはそんなトルマルキオに驚きながら長い列に並び、アガメムノン先生とともに屋敷の入口までたどり着きます。
入口の門柱には「主人の命令なしに戸外に出る奴隷は百の笞刑に処す」とあったり(のちに、「笞刑」で裸にされた奴隷が出てきます。彼はエンコルピウスらに懇願し、主人であるトルマルキオに罪を赦してもらうことができました)、とにかくトルマルキオを称える壁画があったりと、彼の性格がうかがえました。

かれ(トルマルキオ)の左手の小指には薄く鍍金した大きな指輪がはまっていた。そしてさらにつぎの指の最後の関節には、まったく純金とも見える少し小さな指輪をはめていた。しかし事実はまるで星のような鋼鉄を結合したものであった。これだけの富の発揮にも満足せずに露出した右の腕には黄金の腕輪が飾られ、またギラギラする黄金で留めた象牙の飾り輪がからみついていた。

食事の場になって、彼は直前までゲームをしていたようで、客に西洋基盤(……と書かれているが、「黒と白の棋子の代わりに金と銀の貨幣を使った」とあるので、おそらくチェス)と水晶のサイコロを見せびらかしていました。そのときの食事には、孔雀の卵(肉も卵も美味のため高価)や蜜酒などが振る舞われました。(正直この話はずっと食事をしているのですが)
その後、石膏で栓をしたガラス瓶に入ったぶどう酒(オピミウス収穫のファレルナぶどう酒百年経過)が運び込まれますが、これは事実存在しない酒で、トルマルキオやその客たちの無知さを表していました。

エンコルピウスはその後お腹いっぱいでご飯を食べられなくなったので、隣の席の人にトルマルキオの妻であるフォルトゥナタ(卑しい生まれの女と書かれている)の話を聞いたり、他の金持ちの解放奴隷の話を聞いたりします。そうこうしているうちに、トルマルキオが占星学の話をし始めます。

かくして世界は磨臼のごとく回転し、つねになんらかの不幸をもたらして人間の生と死とを惹き起こすのです。諸君は皿の中央に緑の芝生を見たでしょう。そして芝生の上に蜜蜂の巣を見ました。これは理由なくしてやったことではありません。母なる大地は卵のように丸くなった世界の中央に横たわり、すべての幸福は彼女のなかに蜜蜂の巣におけるがごとく含まれているのです

こういったトルマルキオの教養人ぶった話はかなり続きました。
そのうちのひとつが、クーマエのシビュラの話です。

「親愛なるアガメムノンよ、ヘルクレスの十二の偉業やウリクセスの話やどのようにしてキュクロプスが拇指で火箸を曲げたか〔この一節はトルマルキオのキュクロブスとキルケーとを混同したウリクセスの冒険談に関する支離滅裂な記憶〕という話を覚えていますか。私は子供のときにホメロスのなかでこれらの話を読んだものでした。私は自分自身の目で確かにシビュラが、クーマエのかめのなかに吊るされているのを見たことがあります。そして少年たちがギリシア語で彼女に『シビュラよ、おまえはどうしたいのか?』と呼びかけると『私は死にたい』と彼女もギリシア語で答えるのがつねでした」

その後も天井から手土産が降ってきたり、ご飯を食べたり、犬が喧嘩して色々大変なことになったり、またご飯を食べたり、突然人妻の百合が始まったりして時間が過ぎました。
しばらくしてトルマルキオは自分が死んだときの話をしながら自分で泣いたあと今だけでも楽しさを味わうため風呂にでも入ろうと言い出したため、エンコルピウスとアスキュルトスとギトンはどさくさまぎれに逃げ出そうとしました。(※古代ローマでは入浴は食事の前にするので、風呂に入ればまた食事をするということになる)

入口まで戻ってきた三人ですが、入口にいた犬に吠えられてアスキュルトスが溜池のなかに落ちてしまいます。助けようとしたエンコルピウスもびしょびしょになってしまい、結局風呂に入ることになります。そしてここでもトルマルキオの自慢話を聞かされることになります。
そしてまた食事をとったり、トルマルキオがきれいな少年奴隷に結構長めのキスをしはじめたり、それを見たフォルトゥナタ(トルマルキオの妻)が彼を罵り始めたり、それを受けたトルマルキオが奴隷だったお前を買い取って対等な人間にしてやったのは私だが?と逆ギレしはじめたり、最終的にキスしたのは少年奴隷が美しかったからじゃなくて賢いからだと言い訳したりしていました。

誰もが酩酊と過食で吐きそうになっていたころ、トルマルキオはラッパ吹きを呼び寄せ、自分が死んだときを想定した曲を吹けといい、ラッパ吹きは葬式の曲を演奏しだしましたが、その音があまりにも大きかったため、火事だと勘違いした夜警が屋敷に飛び込んできました。
その騒ぎのなか、エンコルピウスたち三人はアガメムノンにことわって、すばやく逃げ出しました。

第三部

エンコルピウス、アスキュルトス、ギトンの三人はトルマルキオの宴会から抜け出して宿に戻ると、酔っ払っていたこともありすぐに寝台に入ります。
このときエンコルピウスはギトンを抱いて寝ていたのですが、酔っ払って両手が震えており、そのすきをついたアスキュルトスが意地悪でギトンを自分の寝台に移してしまいます。
エンコルピウスは目をさまし、隣にギトンがいないことに気づくと怒りのあまり二人まとめて剣を突き刺してこのまま永眠させてやろうかと思いつつ、二人を叩き起こしてアスキュルトスに今すぐ出ていけと忠告をします。

アスキュルトスはこれに反抗せず、エンコルピウスとアスキュルトスの金を分割していき、最後にギトンをも分け合おうとします。
エンコルピウスは最初これを冗談だと思いましたが、アスキュルトスが剣を抜いて「この剣を使っても自分の分け前は切り取らなければいけない」と言い出したので、エンコルピウスも同じように剣を抜きました。
これを見ていたギトンが、二人で戦うくらいなら僕を突き刺してくれと喉元を晒したので、エンコルピウスとアスキュルトスは剣をおさめました。

アスキュルトスは、ギトンがどちらのものになるかはギトンに決めさせようと言い出し、自信があったエンコルピウスは喜んで承諾しました。
ギトンは躊躇するそぶりもみせずアスキュルトスを選び、二人は出ていってしまい、エンコルピウスはギトンがアスキュルトスを選んだことと、少し前までは愛し合っていた友人であるアスキュルトスが普通に見知らぬ土地で自分を一人置いて出ていってしまったことがショックすぎて3日くらい引きこもりました。

いろいろ考えたあと、エンコルピウスは彼らに復讐をすることにしましたが、剣に手をかけて柱廊を歩き回っていたところを兵士に呼び止められ武器を奪われてしまい、宿に戻り一周回って頭が冷えたエンコルピウスは、絵画を見に陳列館に入り、恋は神でさえ傷つけるんだ……とナイーブになっていました。

そんな折、陳列館でみすぼらしい姿をした詩人であるエウモルプスと出会い、彼は財務官の部下の有給官吏としてペルガモンに赴任したときのことを語ります。

部屋がりっぱであったばかりでなく、主人の息子が美少年だったので、私にはこの住居が居心地よかった。私は家の主人から色魔であると疑われないように、つぎのような方法を工夫した。すなわち食卓での会話が美少年たちの弊風に言及するたびに、熱心に憤激して、私の耳を犯す淫らな言葉にはいかめしい苛酷な態度を示してみせたので、とくに母親からは哲学者の一人と見なされるようになったほどであった。

えっちな話をすると怒ったりよくない顔をするというのが古代ローマの哲学者のステレオタイプだったみたいですね。

……たまたま学校が祭日で早く終わり、陽気に騒ぎ回って、寝室に引きとるには大儀すぎて、食堂でわれわれがいっしょに寝たことがあった。真夜中ごろ、私は少年が目をさましたのに気づいた。そこでひどくおどおどした声でこういったお祈りをささやいたものだ。
『恋の女神さま、もしこの少年に気づかれぬように接吻することがかないましたなら、明日この子に一番(ひとつがい)の鳩を贈ります』
このほうびが貰えるときくと、かれはいびきをかきはじめた。そこで眠ったふりをしているかれに近づいて、急いでいくつかの接吻を盗みとってしまった。

古代ローマ・ギリシャの同性愛(とくに少年愛をさす)においての求愛行動として、年長者側(いわゆる攻め)が年少者側(いわゆる受け)に「鳥を贈る」というものがあります。これは、将来的に国家の運営を担うため社会的に保護されている自由身分の少年を暴行することが許されておらず、年長者側が贈り物や言葉で口説き落とさなければいけなかったためです。(贈られる鳥の種はさまざまでしたが、特に闘鶏が好まれていたようです。また、兎などの小動物も贈られていたようです)

エウモルプスは、キスで抵抗されなかったことを受けて、「もし感づかれずに体をいじりまわせたら今度は一番(ひとつがい)の闘鶏を贈ります」と言い、それを聞いた少年は自ら体をこすりつけてきました。
次の日も、もし気づかれずに交わることができたらアストゥリア馬を贈るとささやき、少年の体を好き勝手しましたが、さすがに馬は気前が良すぎて疑われないかと心配したエウモルプスは、約束を破ってしまいます。

しばらくした夜の日、少年の父親が寝たのを見計らい、エウモルプスは少年に許しを請いますが、怒った少年は「お休み。さもないとお父さんにいいつけますよ」と突き放します。しかし少年は行為をいやがっていたのではなく、エウモルプスが自分をだましたため、学友にあらぬ自慢をして面目をなくしてしまったことに対して怒っており、色々あって仲直りをした二人はその後何度も行為に耽ります。
少年はだんだんと成熟していき、1回2回では足りなくなり、最終的には眠る
エウモルプスを叩き起こして行為をねだるようになりました。
それについていけなくなったエウモルプスは、以前少年が自分に言ったことばをそのまま返したのです。「お休み。さもないとお父さんにいいつけますよ」……


そういった話を聞いた後、色々あってエウモルプスと公衆浴場に行くことになったエンコルピウスはそこでギトンと再会します。ギトンはエンコルピウスに助けを求めます。エンコルピウスはギトンを連れていそいで宿に帰ります。
宿に戻ったエンコルピウスは、裏切られたといえギトンのことを愛しているので、ギトンがあのときアスキュルトスを選んだのはより強いほうの人に難を避けたのだと認めたことを受け、ギトンのことを許します。
その後、エウモルプスとギトンとエンコルピウスの三人で食事をしていると、やがて宿にアスキュルトスがやってきて、ギトンが失踪したという知らせを報酬金つきで布告します。このとき、エウモルプスは色々やらかしてエンコルピウスがブチギレて追い出したので部屋にはギトンとエンコルピウスしかいません。

アスキュルトスが順番にエンコルピウスの部屋まで来ると、エンコルピウスは身を投げ出してギトンに会わせてほしいと偽りの懇願を信じ込ませようとします。また、自分を殺しに来たのだろうと言い、首を差し出します。
しかしアスキュルトスはギトン以外に何も求めず、命に関わる喧嘩をしたあとでさえ今もなお愛情を抱いているエンコルピウスの死はもってのほかだと言います。アスキュルトス御一行は部屋にかくれたギトンを見つけ出すことができず、宿から出ていきます。

そのとき、怒り心頭のエウモルプスが部屋に飛び込んできて、今の奴にお前がギトンを盗んだことを密告してやると言い、それを聞いたエンコルピウスはエウモルプスの足元でやめてくれと嘆願しました。
エンコルピウスはギトンがまだ隠れたままでいることを利用し、エウモルプスにもウソをつこうとしますが、ギトンがくしゃみをしてしまったため居所がばれてしまいます。

しかしギトンがみすぼらしい姿のエウモルプスに甲斐甲斐しく傷の手当や衣服の交換をすると、すっかり態度が軟化し、事なきを得ます。
そして色々あり、エウモルプスが以前から行こうと思っていた航海に同行し、旅に出ることになります。


結論からいえば、この航海の船長はタレントゥムのリカスという男で、エンコルピウスの元主人でした。焦りに焦ったエンコルピウスとギトンは、エウモルプスに頼み頭と眉毛を剃り上げ、烙印で罰せられた奴隷に見えるように額に文字を書いてもらいます。
しかし結局リカスにばれてしまい、(見た目が変わっていたが、陰茎のかたちで見抜かれた)エウモルプスがある程度かばってくれますが、収集がつかなくなり、エンコルピウスはギトンを守るため実力行使に出ます。船の上での大勢の乱闘は、リカスとエウモルプスの間で条約が交わされるまで続きました。

しばらくして、船を嵐が襲います。
ギトンとエンコルピウスは死を覚悟しますが、漁師に助けられ、エウモルプスとともに一命をとりとめます。リカスは死にます。

このあとも色々ありエンコルピウスがEDになったり食人の話が出てきたりしますが、長すぎるので割愛します。


おわり

サテュリコンはあくまでアベンチュリンのアチーブメントの元ネタであってそれ以上でもそれ以下でもないのですが、(登場人物がほぼ奴隷であるからかもしれませんが)アベンチュリンを想起させるような描写や内容が多々あり、とても面白いです。

「神と人間の友人であったソクラテスはけっして店先をのぞき込んだこともなければ、大勢の群衆の上に自分の視線をとめることをしなかったと自慢するのがつねであった。であるから不斷に知恵と会話を交えることよりも幸福なことはないのだ」

アベンチュリンのアチーブメントの元ネタではありますが、古代ローマの資料としてはこれ以上ないものなので、そのモチーフに古代ローマ・ギリシャの多いレイシオの描写にしても参考になると思います。哲学のお話も多々出てきており、いかに古代ローマが哲学と所以のある地であったかがわかります。
ただレイシオはモチーフがそうであったとしても、中身(というより倫理的には)令和の世までアップデートされている男なので超退廃的な古代ローマの同衾事情は使えないかもしれませんが……。

あと、急にレイチュリの話をするのですが攻めが受けに鳥を贈る文化あるのやばいです
処方箋に梟ついてるし

めちゃくちゃ面白い小説なので気になったらぜひ翻訳版を買ってみてください。