夜から朝へ変わる時間が好きだった。

一時期、早朝散歩をしていた。
そもそもの切っ掛けは、好きなバンドの、とある一曲。
歌詞に登場する道に、たまたま一字違いの道が近くにあったから。そんな単純な理由である。
本当はその曲を書いておすすめしたいのだが、身バレに繋がりそうなので諦めた。
(もし某SNSの方で気になる方がいらっしゃったら喜んで宣伝に行きます)

朝は4時に起き、のそのそと着替えてから、小さなバッグに財布とスマホを入れて、家を出る。
祖父母の部屋に電気がついていて、起きているなぁと思いながら玄関を締め、ウォークマンを再生しつつ歩いた。
もちろん最初に再生するのは、例の曲。
途中で缶コーヒーを一つ買い(これも歌詞にある)、苦手なそれで手のひらを温めつつ、のんびりと歩く。
最初は曲の再現(とはいっても、その道は歌詞に出てくる道ではないし、バイクにも乗っていないのだが)を楽しんでいたのだが、いつの間にか目的が変わっていった。

私の住んでいた地域は海が近い。散歩時にも殆ど、海のそばを選んで歩いた。潮の香を浴びるのが好きだったからだ。
これは幼少期から、夏休みのたびに母方の実家で過ごした影響が強いかもしれない。
そこでは毎朝、祖父のトラックに揺られて港を見に行っていたから。


この海を見ることが、いつしか目的になって朝の散歩を続けていた。
夜から朝の、刻一刻と変化していく風景がどうしようもないほど美しく、涙を堪えながら写真を撮った朝もある。美しいものとはこんなにも、人の心を掻き乱すのか、と。


何かと朝は忙しく、今は朝の散歩どころではないが。
たまには海の近くに泊まりで出掛け、早朝の散歩を楽しみたいと、これを書きながら考えている。

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