遠い昔に遊んだ、友人の話

カイト、と私は彼を呼んでいた。
ひとつ下の友人で、なかなか整った顔立ちだったのを覚えている。
このカイトには弟がいて、こちらはルイトと言った。
似た名前で覚えやすい。

小学校3年生の頃だったと思う。
私はカイトやルイト、他にも何人かの女子たちと、よく遊んでいた。
上は5年生、下は1年生の遊び仲間たち。
何がきっかけで知り合ったのかは覚えていない。
遠い昔のことでもあるので、記憶というより「楽しかった」「よく遊んだ」という思いばかりが残っている状態だ。

だんだん遊ばなくなったのは、おのおの塾や習い事へ通うようになったからだと思っていた。
だが今は、それだけでは無かったと解る(この話もいつかしたい)

4年生に上がる頃には、彼らとは疎遠になっていた。
たまに廊下ですれ違っても、特に声を掛け合うことも無い。
友達から他人に戻っていた。


月日が経って小学校6年になり、卒業式を間近に控えた頃。
なんとなくカイトのことが頭に浮かび、無性に顔が見たくなった。
不思議と、カイトと学校で会ったことはなかった。
私の通っていた小学校は奇数学年と偶数学年で棟が別れていたので、ひとつ下のカイトを見掛ける機会が無いのは仕方ないことではある。

卒業式には5年生も出席する。
なら、その練習等で久々に彼の顔を見られるだろう。
時間があれば声を掛けてみようか、だが迷惑じゃないだろうか…。
そんなことを考え、私は5年生と合同の卒業式練習日を心待ちにしていた

そして迎えた練習日、愕然とした。
5年生の席には、カイトの弟であるはずのルイトがいたのだ。


そこで私は突然思い出した、ルイトは私のひとつ下。
何故勘違いしていた?
ではカイトは?
稀に同じ学年に兄弟がいることもあるが、ルイトは早生まれではない。
私はルイトに声を掛けた(この時、ルイトは私を忘れいたのでとても嫌そうに対応された。かなしいはなし)

結論から言うと、カイトという人間は居なかった。
ルイトは一人っ子で、年の近い従兄弟なども居ない。
ルイト自身の名前をカイトと勘違いしていたか、全く別人を兄弟だと勘違いしていたのだろう、ということになった。
だが私の覚えているカイトは、ルイトではない。
カイトとルイトは似ていたが、それは兄弟であると納得できる程度。
全く別の人間だった(はず)
記憶にあるカイトは一体、どこへ消えてしまったのだろう。


なんとなく腑に落ちないまま、カイトのことを忘れられずに居る。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?