今だからこそ見てみたい出雲霞のような「物語」

出雲霞という物語

出雲霞というキャラクターであり、出雲霞という物語であった彼女。いわゆる劇場型配信と呼ばれる形態で配信を行い、双方向のやり取りで自らというコンテンツのあり方が変わり、終わりが変わる。SF組、おなえどし組といった人達との間で物語を作り出し、二次創作でも多く使われる2434systemという世界を用意する。あれが唯の設定に終わらず、舞台装置として機能していたというのは最近大手からV界隈に入った人には想像出来ないかもしれない。

商業化に成功したVであれほど美しい終わりはなかなか見られない。出雲霞というキャラクターのまま、出雲霞プロジェクトというストーリーを終わらせる。スタート時点で2年契約であり終わりまでの絵図が見え易かったいうのもあるだろうが、「中の人の都合」ではなくちゃんと「出雲霞の物語」が終わったと感じられたのはあの物語を楽しんだ者として嬉しいこと。イカスミちゃん個人の設定に関してはしーちゃんが好きでした。あの設定もいいよなあ…


V界隈のマンネリ感

現状のV界隈はマンネリ化が凄まじい。個々の設定という目線では幅広いが、(特に商業クラスのVの)実際にやっている内容は本当に一通りと言っても良いほどに広さがない。
終わりのない日々の配信によって否応にも人間性は出る。日々生活するため、安定したお金を稼ぐために惰性で続け、その終わり際も「生身の人間の都合」を感じさせる。どのような設定を持とうと結局ストリーマーとやることは変わらない。飽きやすい質の私は、このままでは自分はVを見なくなるだろうなと思い始めている。


「アイドル性」

ここで言う「アイドル性」とは所謂アイドルではなく、個人に価値をつけ自分をコンテンツ化すること。要はこの内容が面白そうだから見に行こうではなくこの人だから見に行こうとなること。
今のV人気はアイドル的なものがほとんど。それを最大限活用して大きくなったホロライブは言うまでもなく、個人的に大手で最もコンテンツ毎にそれぞれの魅力を持つと感じる月ノ美兎すらその人気の9割はアイドル的なもの由来だろう。(まあ彼女は初期から一流のバーチャルアイドルが夢と語っているのでこちらの受け取り方はともかく本人の思想としては元から個人をコンテンツ化することによる収入の安定化を目指していたのかもしれないが)
というか世の中のほとんどのコンテンツが、特にYouTuberなんて99.9%そう。大量の情報に溢れるネット社会ではまず情報を絞るためのフィルターが必要不可欠だ。その点アイドル化というのは非常にわかり易く「見てもらう」為の楔となるし職業として成立させるには必須のものなのかもしれない。
蛇足だが、そこから遠いなと思うのがホモサピさん。直近の騒動が微妙にノイズだが、その際も「それはそれとして動画は見たい」というコメントの割合がかなり多くて驚いた。ホモサピという個人をコンテンツにするのでなく、彼の動画をコンテンツ化出来ているのは素直に凄い。

アイドル的人気でなく、作品の魅力を

アニメでもその作品がアイドル的人気を持つことは多い。まどマギ、エヴァ、ガンダム…それ自体がコンテンツ化した作品は数多い。それでもアニメファンが真に望むのはその作品の続編、つまりは新たな「終わり」だ。終わりが見えるからこそコンテンツへの盲目的愛ではなくその内容に、その消え様に目が集まる。それは物語という作品への愛だ。Vtuberの世界にもそういう作品と呼べる形態のものがまた出てきてもいいと思う。


実際の企画内容を考えてみよう

半年~1年、長くて2年という終わりを先に設け発表する。週1.2回、30分くらいの配信。例えばAIが主人公だったら普段の仕事場の雰囲気の回や休みの時に外部にハッキングして情報収集(という名の視聴者とお喋り)する、シリアス回は3dでなんか動く、最終回で伏線回収…みたいなね。アニメで表現しにくい非定型なキャラが輪郭を持って、視聴者と対話できるのは面白そう、転スラの大賢者みたいな。逆に人形だと仮にアンドロイドでもそれアニメで良くね?になりそうだけども。
やっぱ集客が問題だなこれ。既存のVファンよりはアニメファンのが刺さりそう。あと思ったよりアニメに寄っちゃった。まともな企画考えるってのは難しい。


やってくれるとしたら、どこ?

まず端から商業化を目指すとしたら知名度を確保するために広告費やらメディアミックス展開やらはいる。
スクエニ…資金は大丈夫だろうけどダイ大やらのメディアミックス展開の雑さ、古い体制…無理ですわ。そもそもベンチャーが開拓して商業化した所に来る大手は基本的に開拓者ではなくその方向性のまま市場の拡大・システムの効率化をする企業。そこに新しい試みを期待するのは間違ってるか。

バンナム…過去のV事業展開の際の斜め下の方向性、この間発表したV事務所のダメそうな匂い。ここも体制的にはスクエニと大差無さそうだしダメか。

サイゲ…個人的になんか期待出来そう。比較的ベンチャー気質だしプリコネみたく後にプロトタイプとなるシステム作れるしウマ娘みたく必要量までつぎ込める資金あるし当たる時節を見る目も運もある。内製じゃないとはいえアニメ化も出来てる。今のソシャゲ飽和を見てコンシューマーに移る判断の早さも持つ。ウマ娘プリグラで3dモデルとモーションキャプチャの技術もある…マジでやってくれんか。

v事務所
ホロ…論外。アイドル化を推し進めた急先鋒に何を期待するのか。

にじ…男性のアイドル化に動く現状かなり厳しいか。でも(運営が主導したわけでもないとはいえ)出雲霞という実績があるし、伸びなくても切り捨てない方向性ならワンチャンあるか?
ノルニスとか見てると変に新たなことアピールする方面のプロモすると集客が怪しいんだよなあ。サロメ嬢は運営の功績ではないし。

その他…神椿がワンチャン。初期から割と独自路線だしクリエイターを育てる方針ならひとつの「作品」を作り上げるという意味でやってくれんか。今の方向性も必要以上に中の人性を出さない(態々長時間配信チャンネルを分ける、無料ライブはアーカイブ制限をつける、曲だけに留まらない表現が出来るクリエイターを使う、など)とかやってるし個別に表現させたいものを際立たせる為の具体的行動をしてる。実際にやるとなったらかなり期待出来そう。上述の企画案に結構近いスタンスだし。
他事務所は資金もなければ方向性も違う。資金だけなら上が出すかもしれんがそれ結局古い体制の会社が発言権持つってことだわ。


「終わり」は必ずしも必要か?
〜キズナアイの存在〜

絵画などの特殊な芸術分野を除き、基本作品には終わりがある。が、vというキャラクティックな部分では例えばAiを題材にすれば、半永久的にコンテンツを提供してもキャラは守り、作品と言えるかも知らん。アイちゃんみたいに。まあ彼女に関しても中の人で色々あったし今はスリープという形で終わりを迎えているが、あの形なら永遠も有り得ただろうという話だ。それでも後半は集客が取れていなかったから商業化するならある程度期限決めて終わりを分かりやすく示すことでマンネリ化がありえないことを示す必要があると思うけど。彼女は最後まで白い世界の住人であることを崩すことはなかった。3dを使い放題だったからこその世界観の維持という面は多分にあろうが。個人的な事だがだからこそラストライブの大勢のゲストは心に来た。誰もいない白い世界から始まった彼女が…とね。
アイちゃんがアイドル化の波に乗れなかっただけ、結局作品とか綺麗事言ってもキャラクター性しか見てない、生身の人間が嫌いなだけ。そんな批判はごもっとも。それでも彼女の様な在り方を最後まで望んだ人はいるし、二次元でくらいそこに浸らせてくれてもいいじゃないか、と私は思う。
私は結局、今の画一化した閉塞感のある界隈を変えて欲しいだけ。
ぐんぴぃやFラン大学就職チャンネルのように、毎回のコンテンツで集客するのでもいい。ただそれを商業化する=続けるのはクソほど難しいだろうから、単回の企画よりはひとりのVに一つの作品、という形で何かを作って欲しいと思う。

もちろん今の形も好きだし、その活動の中で推してるVもいる。だがアイちゃんのような電脳世界を思わせる白い空間から何かを作り出してくれる人を、出雲霞のような「出雲霞」を現してくれる人を見てみたい。
バーチャルの意味をもう一度示して、取り戻してくれる人を待ってる。

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