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小出さんの思い出 2

「30、8並び」
という言葉があるらしい。
これは、いわゆるサポートミュージシャンが、メジャーどころのバックバンドなどに入って、ライヴ、あるいはツアーの際のワンステージのギャラを指すらしく、30歳で8並び、つまり「88,888円」のレベルに達せれば一人前のサポートミュージシャンとして認められるといったひとつの目安になっているらしいといった受け売り話を小出さんにツアー移動の車中で話したことがあった。

そして、俺が配信でポップスなど邦楽のカバーを歌ってる中で、リスナーさんの横の繋がりで「宝くじ連合軍」と銘打ったグループを作って楽しんでいるという話を併せてした。

「宝くじ連合軍」とは、年に数回発売されるジャンボくじなど、1等○億円といった当たりを引いた場合に限って、常連リスナーさんを温泉にでも招待し、俺のライヴをやるというスローガンに賛意を示している方々で緩く組織している。
それでも得た金は億単位!常連さんを招待しての温泉ライヴなどではビクともしない額ゆえ、それぞれがそれ以外の使い道を勝手気ままに語り合うことを趣旨としている。

「宝くじは夢を買うもの」。そのとおり、買わずして当たる確率はゼロ。しかし、一枚でも買えば、そこにゼロ以外の確率を表す数字が生まれてくる。言い換えれば、一枚でも買った時点で「当たったら」を前提とした夢を語れる権利を得るわけである。

「で、ミッキーの使い道は?」
と小出さん。
「まぁいろいろあるんですが…。ところで小出さんは年間のライヴ本数ってどのくらいですか?」
と尋ねれば、
「そうだなぁ、100前後ってとこかな」
「小出さんのその一年分のライヴ買い取るってことも『当たったらリスト』に入れてるんですけどどうですかね?」
「おぉ!いいね!」
と、とりあえずの契約成立。

その段になれば、俺はとっくに仕事を辞めているはず。なので、俺は小出さんの運転手としてツアーに帯同するとともに、いわゆる「アゴ・アシ・マクラ」
の経費はもちろん全て俺持ち。問題は小出さんのライヴ買取価格。
「小出さん、じゃライヴ一本いくらで買い取らせてもらえますか?」
「ん………、じゃ8並びで!」
で、2人で大笑いしたのだが、
「8並びなら、8,888,888円か…。それに経費を入れても1,000万ちょっとですね!こりゃ契約成立ということで」
と書類のない契約を交わしたわけ🤣
それが一つの「契約」。
そしてもう一つの小出さん絡みの当選金使い道の「夢」を語ったが、こちらに関しては消極的で、明確なOKはなかった。

移動中の話では、小出さんの「昔話」がよく話題になった。
小出さんが高校を卒業して新潟から東京へ出て、それからの音楽活動の話。現役のミュージシャン諸氏はもちろん、「こんな奴もいた」という過去の人物まで盛り込んだ話で、面白おかしいエピソードが満載であった。
それにも増して、小出さんは来日した数多のブルースマンのインタビューを経験しているわけだが、字面になってない部分がたくさんある。むしろ、そっちの方が多いし、ブルースファンにとってはそっちの方が興味深い内容であるに違いない。

そんな「昔話」や「裏話」を聞くたびに、文字にして残すべきだと小出さんに言い続けてきたが、「昔話」に関しては、暴露本にもなりそうで、予測できない反響が出る可能性があるし、「裏話」に至っては、文字に起こせる記録がないものも相当数あり、残っていたとしてもどこにあるやらって状態で、唯一記憶に頼るしかないとのことであった。それに、折しも「BLUES ROLLS ON」発売後というタイミングで、改めて長編モノを執筆するという意欲に結びつかない時期でもあったかと思う。

小出さんが語った「昔話」や「裏話」に関しては、残念ながらガッツリ記憶しているわけではない。だって、またすぐ会って聞ける話だと思ってたからなぁ。

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