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秋刀魚食わせろ!

毎年、戻り鰹から秋刀魚の時期、秋田のポン友と連れ立って気仙沼のポン友を訪ねるプチ旅を決行している。今年も8月に予定していたが、折りからの第7波のあおりで中止したのでした。

以下はまだコロナ騒動前、お隣の国発祥の「オルレ」なるトレッキングがプチっと流行を見せた頃のお話。
時期はもちろん秋刀魚恋しきこの時期でありました………。


秋田のポン友に途中で拾ってもらう形で合流して、道中、昼は何を食うかと協議の結果、夜も海鮮だろうが、連チャンでも文句なし!ということで、マグロで名を馳せるお店に入り、マグロ丼を堪能!

その後、この日のホスト役である気仙沼のポン友と合流した。早速ながらホスト役は、
「オルレと言ってな、韓国で流行のちょいとしたトレッキングがあるのだが、最近、海沿いにそんなコースができたんだ」
と言い終わる前には車を走らせる。連れていかれたところは、船越英一郎が最後の謎解きをし「犯人はお前だ!」といった場面が想起されるような場所。風光明媚ではあるが、当日は時折雨も降り、風は強く、肌寒い。秋田のポン友も俺も引き気味であったが、そんなの御構い無し!サッサと降りろと言わんばかりに車のエンジンを切る。降りれば後は黙々と行軍…。景色を楽しむわけでもなく、「遠方に見えるのは岩手の三陸海岸だ」などの説明も一切なし。ただただ、息を切らし、ヒザにリン酸を溜めただけであった。
「じゃ夕方ホテルに迎えに行くから」
とホテルに捨て置かれ、チェックインして、夕方まで一休み。

さて、約束の時間に迎えに来て行った先は何やら新し目のお店。老舗感、あるいは地元民がこぞって行くような活気ある居酒屋を想定していたが全く違う。

席に着き、秋田のポン友とメニューを眺めてたら変な空気に。なぜなら、想定していた「秋刀魚刺身」やら「鰹のたたき」などの文字が全く見当たらない。代わりに「ヒレカツ定食 単品でも承ります」の文言。恐る恐る、気仙沼のポン友に、
「ここはトンカツ屋か」
と尋ねる。
「ここのトンカツは絶品だ!」
と。
秋田のポン友と目が合い、意を決したように言う。
「お前な、気仙沼に来るっていうのは、新鮮な海鮮を当然の如く食えるという前提でくんだべや。サンマもカツオもなくて、トンカツなんかどこでも食えるだろが」
これに対する気仙沼のポン友、
「バカヤロ!俺ら気仙沼市民は毎日毎日海鮮で飽き飽きしてる!こんな時くらいトンカツ食わせろ!」
この空気を読んだ同席していた新参者の気仙沼の友人が、
「あ、あの、今、気仙沼でここのお店に行った!なんて言ったら、おーーー!って言われるようなお店ですよ」
とフォローになっているようないないような言葉で立った腹は横になり、トンカツだって嫌いじゃないし、茶色一色の食卓にだって歓びを感じる性ゆえ、あとは気持ちよく確かにグレードの高いトンカツに串カツを堪能したのでした。

それでも諦めきれない海鮮。トンカツ屋を引き上げるの段になり、次は海鮮の食えるとこに!と要望をはっきり伝え、新参者の友人がスマホを開くがあいにくこの日は日曜で定休日のところが多く、結局海鮮処は見つからず。焦る新参者の友人は、
「気仙沼で飲んだ〆はあそこしかない!」
と強烈におススメしてくれたのがとある喫茶店。

「さっきのトンカツ屋行って、この喫茶店で締めたなんて言ったら、今じゃ気仙沼のトレンドです!市民に羨望の眼差しで見られますよ!」
とは、せっかく横になった腹がまた斜めになったのを諌めようとした友人の言。しかし、最後の喫茶店に入って腹はすっかり横になる。昭和チックな雰囲気で、パフェとギョーザを同時に食せるという振り幅の大きさにすっかり気分を良くして気仙沼の夜を締めた。

まぁ念願のサンマやらカツオにはたどり着けなかったが、久々に顔を合わす旧友の元気を確認した上、相変わらずのマイペース、ある意味軸のブレない生き方を貫いていることを体感し、この生き方こそ、軸のブレないものづくりの根幹になっているのだろうと、300キロで過ぎて行く車窓の風景を眺めながら納得もした小旅であった。

この軸のブレないものづくりの主は杜氏。左党の方々!気仙沼の銘酒「蒼天伝」を一度試してみてください!

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