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「性同一性障害特例法を守る会」設立趣意

2023年(令和5年)7月10日

性同一性障害特例法を守る会

「性同一性障害特例法を守る会」の設立趣意は、次の通りです。

  1.  私たちは、性同一性障害の当事者の集まりであり、積極的に私たちの声を広く政治に反映させます。
     2023年6月16日「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」(以下「LGBT理解増進法」という。)が成立しました。2021年の超党派合意案で懸念されていた、女性の安全や行き過ぎた差別糾弾・学校教育に対する民間団体の不当な介入などの問題に対して、一定の歯止めがかかった法律であることを、私たちは肯定的に評価する一方で、この法律を元にしてLGBT当事者の利害と、社会全体の利害とのバランスをとった理解増進のため、積極的に性同一性障害当事者の声を政治に反映することを目的として設立します。

  2.  私たちは、「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」(以下「特例法」という。)を守っていくことを目的とします。
    2023年6月16日成立したLGBT理解増進法の審議の中で「性自認」「性同一性」「ジェンダーアイデンティティ」と、私たち性同一性障害当事者にとって「自分たちの定義」にあたるような概念について、さまざまな議論がなされ、結局英語そのままの「ジェンダーアイデンティティ」が法律に採用されることになりました。
     私たちは自らを定義するのに使うのは「性同一性」という医学の用語であり、けして他の諸アイデンティティと並列するような「アイデンティティ」の概念、「自分が主観的に自分の性別をどう捉えているか」といった誤解を招きかねない「性自認」という言葉ではありません。
     それゆえ「性別を自己決定できる」いわゆる「セルフID」は私たちの要求ではなく、医学的な根拠と社会的な合意に基づいた特例法での立場を守っていくことを、当会の目的とします。

  3.  私たちは、特例法と手術要件を守り、いわゆる「セルフID」に断固反対する立場を表明します。
     この理解増進法の議論の中で、特例法を廃止して厳格な診断の上で性別適合手術をしても法的性別を変更する道を閉ざすべきだという主張が、一部から強くでました。逆に、従来から、多くの団体と幾つかの政党が、特例法の手術要件の廃止を掲げ、性自認で法的性別を変更できるようにすべきと主張しています。
     私たちは、「性同一性障害」という自らのアイデンティティと、手術というエビデンスによって社会との協調を図っていく立場から、特例法の廃止にも手術要件の廃止にも強く反対します。
     性別適合手術(SRS)と特例法の手術要件は、私たちが望んで戦い取った権利です。けして人権侵害でも過酷な断種手術でもありません。私たちが手術を受け、それによって社会と協調して生きていくために、特例法と手術要件を守り、手術要件を廃止して医師の診断のみ、あるいは一方的な宣言によって性別を変更することを容認する「セルフID」に断固反対する立場を、私たちは表明します。

  4.  私たちは、未成年者への性別移行医療については、反対します。
    青少年は、自らのアイデンティティに強く悩み模索する時期であり、身体の急激な変化やジェンダー規範の押し付けから逃れるため、性別移行が問題の解決方法だとの思い込むことがあります。私たちは、青少年に対し、グルーミングや特定のジェンダー思想に基づいた誘導をしないこと、責任ある立場の人が対応することを望みます。
    青少年が「性別違和」を訴えるケースであっても、医療者・保護者・教育関係者・民間団体が安易に性別移行医療を勧めることについては懸念を表明します。不可逆な医療的措置を取られるべきではありませんし、身体に影響の出る医療は最小限に留めるべきです。安易な性別移行よりも心理的なサポートの方が、青少年にとって必要なことであると考えます。

  5.  私たちは、性同一性障害に対する「脱病理化」という主張に対しても、強い懸念を表明します。
     私たちが求めるのは「よりよい医療」であり、性同一性障害当事者を、医療を求めない「トランスジェンダー」と同一視することではありません。「脱病理化」によって、今まで私たちが獲得してきた医療サービスが後退する懸念、「美容手術化」による商業主義、性ホルモン療法の健康保険適用を求めて「混合診療」状態での性別適合手術への健保適用がなされづらい矛盾の解消が難しくなるなど、問題が多くあります。
     また、ともすればガイドラインから逸脱した診断や医療が横行する現状を、当事者の立場から強く批判し、ガイドラインの遵守とともに、私たちが性別移行の医療に後悔することがないように、診断の厳格化とカウンセリングの充実、さらには治療の中止や脱トランスに対しても見放すことのない、当事者任せではない医療者の社会的責任を重視した医療を要求します。
     それを通じ、本当の意味での当事者の全体的な福利を重視したガイドラインの改善と、安全で標準的な医療体制の確立を要求します。これなしには、性同一性障害医療への社会的信用を得ること、社会的責任を果たすことができないものと、私たちは考えます。

  6.  私たちは、女性と子どもの安心安全を尊重します。
    女性スペースの安心安全という問題について、理解増進法の審議を通じて不安と懸念の声が強く寄せられました。このことについて、私たちは積極的に発言をしていきます。またLGBT理解増進法を拡大解釈して女性スペースを侵害する行為には強く反対し、女性との間での協調を図ります。
     私たち性同一性障害当事者の立場は、最終的には性別適合手術と特例法に基づいて、戸籍の性別を書き換えて社会に適応していこうとするものです。女性たちとの関係について、医療を求めない「トランスジェンダー」と同じ立場に立つものでもありません。移行中の性同一性障害当事者の立場など、配慮すべき問題はありますが、女性の権利をまず第一に尊重し、それと共存する社会を目指します。
     女性スペースは女性が性的暴力から逃れるための、女性にとって必要不可欠な場です。女性スペースを守りたい女性たちとも協働しつつ、私たちが社会に受け入れられるために活動します。

  7.  私たちは、上記の目的を実現するために、LGBT理解増進法や条例に基づく「理解増進」等の活動に、積極的に参加していきます。これを通じて、性同一性障害当事者の本当の姿と、本当の利害を国民すべてに対し「真の理解増進」を進めていきます。

以上


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