ホルモン療法の保険適用について

SRS・戸籍変更後のMtFに対して「卵巣欠損」として、ホルモン補充に保険適用がなされることはどうなのかという声があります。

確かに戸籍を変更すれば女性ですので、人工とはいえ膣のトラブルなどは婦人科で女性の疾患として処理され、保険の対象となります。

ただ、ホルモン領域に関して疾患名を「卵巣欠損」とすることについては、医療関係者や厚労省の間でも、 統一見解がなく、現状グレーゾーンとなっています。
何故ならば、医師がレセプトを申請する際に、元々の性別が男性であったことがわかってしまうので、元々卵巣がないのに卵巣欠損という疾患名に当てはめてよいのかという話になるからです。

しかし現状、戸籍変更を終えた当事者が、医師の管理下で安全にホルモン補充を受けるためには、この方法をとるしかない場合が多く、やむを得ないといわざるをえません。

これにはGIDの医療制度が、SRS後のケアについて全くカバーできておらず、自己責任となっているところに最大の問題があります。

そもそも一般の女性は、年齢とともに体内のホルモン分泌量が減っていきますが、戸籍変更まで終えたMtFは、体内のホルモン値を人工的にコントロールしなければいけません。
しかし、そのための明確なガイドラインは存在しておらず、医師の裁量に任せられています。

また、医師を介さずに、個人でホルモン補充を行う者もおり、その場合は完全に「自己責任」として扱われます。

GIDの治療としてもホルモン療法は保険適用の対象外であり、実現を望む声は多いものの、高いハードルがあり、なかなか実現に至っていません。

その理由は、やはり投与量などについて医師の裁量に任せられる点が多いためで、生物学的にも戸籍上でも男性である人に、女性ホルモンを投与する場合の治療効果などについて、明確な基準が定まっていないことにあります。

患者の絶対数も少なく、サンプルの抽出なども不完全であり、残念ながらこの先も保険適用には困難を極めることが予想されています。

全てのGID当事者にとって、ホルモン療法の保険適用は、悲願であり、これが実現することで、SRSと合わせて保険での治療ができ、国内のGID医療の発展にもつながり、戸籍変更後のケアについてもなんらかのガイドラインなどが作られることが期待されます。

ホルモン療法の保険適用は当事者の健康に関わる重要な課題であり、一刻も早い解決が望まれます。




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