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思い出せるもの

一日の中で夕方が一番好きだ。
昔、友人の弟を駅まで迎えに行ったのも夕方だった。
修学旅行から帰る彼を、忙しい家族は誰も迎えに行けないとのことでわたしが迎えに行った。
オレンジの陽に滲む街並みと少し埃っぽいロータリーの雑踏。
人混みの中からわたしを見つけて、手を振る弟。
その瞬間は友人の弟ではなく、わたしの弟だった。
まだあどけなさの残る彼の笑顔を今でもたまに思い出す。
遠くていとおしい、記憶の一片。

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