ローグライクハーフリプレイ『黄昏の騎士』その1


AIイラストくんで作成


このリプレイは、FT書房から出版されている1人用TRPG『ローグライクハーフ』の基本ルールの1stシナリオ『黄昏の騎士』のリプレイです。


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「ローグライクハーフ」を遊ぶにあたって(ライセンス表記その他)
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 「ローグライクハーフ」はルールを確認した後に遊ぶゲームです。新ジャンルではありますが、区分するなら「1人用TRPG」にもっとも近いといえます。ルールは下記アドレスで確認することができます(無料)。

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https://ftbooks.xyz/ftnews/article/RLH-100.jpg

https://ftbooks.xyz/ftnews/gamebook/RogueLikeHalf_BasicRuleSet.txt

 PDF版は下記アドレスで入手可能です(要BOOTH会員登録)。

https://ftbooks.booth.pm/items/4671946

 また、紙の書籍でのルールを入手したい場合には、こちらから購入が可能です。紙の書籍には1stシナリオ『黄昏の騎士』が収録されています。

https://ftbooks.booth.pm/items/4671945

キャラクター

主人公 怪力ゴディ ヒューマン
技術1  生命点8  筋力点6  従者点7
装備品 打撃両手武器(モール) 板金鎧
食料2つ 金貨3枚

成り上がる為に冒険者をしている巨軀の若者。

従者
剣士アンドレ 故郷に病気の妹がいるらしい。
兵士バット ゴディの友人。
兵士カッシ 同じくゴディの友人。
兵士ドラス 同じくゴディの友人。
兵士エルダ 同じくゴディの友人。しっかり者。
ランタン持ちフェズ 同じくゴディの友人。子供の頃の冒険者ごっこからのランタン持ち。
荷物持ちゴーザ 同じく……。お婆さんがまじない師だったらしい。

1.ハイホロウの村へ

冬が終わりを告げ、ボートス地方にも春が訪れた。
大陸中の旅人が街道を歩いていることだろう。

ゴディといえば、訪れている聖フランチェスコの町を物珍しそうにあちこち眺めていた。

「お、あれはなんだ?」

「おっと、お客さん立ち上がっちゃ危ないですぜ」  

水上都市のフランチェスコの交通手段である運河に浮かぶゴンドラの上で、立ち上がろうとしたゴディを船頭が窘めた。

「危なかないさ。オイラは怪力ゴディだからな」

そう言ったゴディは、グラリと揺れたゴンドラから運河に頭から落ちた。

「ゴディ!」

別のゴンドラに揺られていた仲間が慌てて運河に飛び込んでゴディを運河から引き上げた。

ゴディは泳げないのだ。

仲間が何人かして体格の良すぎる、というより巨体のゴディを運河から引き上げると、ゴディはくしゃみをひとつして、「春とはいえまだ冷たいや」と呑気に笑った。

ゴンドラを途中で強制的に降りることになったゴディと仲間は、仕方なく穀物スコップ大通りを歩き出した。

ゴディが運河に落ちる様子を見ていた子ども達がはやしたてるが、ゴディは意に介さない。

「オイラもこの町で有名になったもんだな」

「ゴディ、それは違うな」

仲間の剣士アンドレが勘違いを指摘するがゴディは聞いていない。

ゴディはもう一つくしゃみをすると、目を開けた瞬間に目に留まった〈パンと赤ワイン亭〉のドアを開けた。

観光都市にふさわしく、中は様々な人種で溢れている。大陸中から集まったかと思うほど肌の色が様々な人間はもちろん、ドワーフやエルフやコビットに混じって、珍しい鳥人や獣人の姿も見える。

ゴディは空いた席に座ると、ウェイターに食べ物と飲み物を頼んだ。

「あのテーブルにいるやつが飲んでいるのをくれ。それと、あっちのテーブルのやつが食べているのを」

ゴディの前に店自慢のワインと骨付き肉と黒いパンが置かれた。

「アナドラ、これはなんていう飲みものだ?」

ゴディは初めてのワインに目を白黒させた。

「俺の名前はアンドレだ。これはワインだ、知らんのか?」

アンドレはワインを飲んで、「うん。これはうまい」と唸った。

「ワイン?……うまいな!」

ゴディはワインをガブガブ飲み、骨付き肉と黒いパンを貪り食う。

元々酒に強い質なのか、初めてのワインでもゴディは酔わない。

仲間のバット、カッシ、ドラスもゴディに負けないほど飲み食いしているが、エルダが水を差した。

「あんたたち!はしたないよ!綺麗に食べな」

「へーい」

三人は静かになった。エルダは満足気にワインをチビリと飲んだ。

「こんな贅沢できるなんてね。ゴディに付いてきてホントに良かった」

ゴディに出会うまでは生まれ故郷から出たことがなかった者の言葉だった。

「いや、全く」

ランタン持ちのフェズと荷物持ちのゴーザが頷く。

「そうだろそうだろ。オイラはいいヤツだからな」

ゴディはご満悦だった。

贅沢に浸っていると、店のドアが大きく開かれ、「謹聴!謹聴!皆謹んで聴くように!」と派手な服の公示人が入ってきた。

「なんだあのうるさいヤツは?」

ゴディはテーブルに立てかけた両手で扱うメイス、モールに手をかけた。

アンドレがその手を制する。

「公示人だ。何かお触れが……大事な話をしにきたんだ」

「へえ。物知りだなアナベルは」

「俺の名前はアンドレだ」

公示人の話はゴディにはよくわからなかった。装飾された長い話にゴディは飽き飽きしていた。

「なあ、アニスト、なんの話なんだ?」

「アンドレだ。そうだな。要はハイホロウという村に危険が迫っているから、村に行く冒険者を募っているって話だ」

ゴディはスクッと席を立つと、真っ直ぐ公示人の所に行った。

「オイラは怪力ゴディだ。そのナントカ村を救ってやる」

公示人はゴディを頭から爪先までじっくり眺めると、ハイホロウ村への行き方を教えた。

こうして、ゴディとその仲間はハイホロウ村の危機を救う冒険に出ることになった。

2.ハイホロウ村の危機

ハイホロウの村へは聖フランチェスコから歩いて数時間で到着した。

市からこんな近い距離で危機的状況があるとは思えなかったが、村長と話し合いをするとその状況が見えてきた。

村にほど近い場所に、昔セグラスという魔術師が造った地下迷宮があるのだが、誰もいなくなったはずのそこから怪物が出てくるようになったという。

「村人がひとり、またひとりと村から消えているんです。そして先月、迷宮から『黄昏の騎士』を名乗る者が現れ、恭順の意を示すよう言ってきたんです。さもなければ、村人全員を迷宮の奥に連れ去ると」

「村人は全員で何人いるんだ?」

ゴディは不思議なことを聞いた。

「え?……100人ほどでしょうか」

「毎日村人が連れ去られたとして、3ヶ月くらいで居なくなるな。迷宮に村ができるなあ」

「……」

「すまない。ゴディに悪気はないんだよ」

仲間のエルダが間を取り持った。
ゴディは立ち上がると、「大丈夫さ。そのナントカの騎士を倒すからな。村はこのままさ」と呆気に取られている村長を置いて家を出た。

「さて、皆行くよ。タルタルの騎士を倒してオイラは英雄になる」

「黄昏な」

剣士のアンドレはそうゴディに指摘すると、迷宮で見つけた宝は自分のものになるという話に思いを寄せた。

「悪くない話だ。もしかしたら、この冒険で妹の治療の金が稼げるかもな」

3.一回目の迷宮探索

村からさほど離れていない森に到着すると、その迷宮はあった。

ランタン持ちのフェズが先頭を歩く。クリーチャーに遭遇した時には直ぐに戦えるようにすぐ後ろにゴディが付いた。ランタン持ちのフェズは小柄の為、ゴディの視界を邪魔しない。

そもそもゴディは普通の成人した男より頭一つ背が高い。

「なんだか昔を思い出すなあ」

フェズは子供の頃、冒険者ごっこをしていた時から明かり持ちだった。

しばらく狭い通路をランタンの明かりを頼りに歩いていくと、がらんどうの部屋に出た。通路はまだ続いている。

「何も無いなあ」

ランタンで部屋を照らしていたフェズが呟くと、「おや?あれは?」とゴディは部屋の一点を指差した。

明かりに照らされて、分厚いガラスの瓶が半分土に埋まっていた。

「見つけたらオイラの物にしていいんだよな?アッシュ?」

「アンドレだ。そうだな。迷宮で見つけたものは自分の物にできると公示人も村長も言っていた」

「よし。この瓶はオイラの物だ。中身はなんだろう?ワインだと良いけど」

「治療のポーションのようですよ」

コルクを抜いて匂いを嗅いだ荷物持ちのゴーザが自慢気にゴディを見た。

「僕のお婆さんはまじない師をしてましたからね。治療のポーションはよく作っていましたよ」

「そうか。じゃあこの瓶はゴーザが持ってて。扱いに慣れてるやつが持っている方が割れないだろ」

たまにまともなことを言うのがゴディだった。

剣士アンドレは治療のポーションと聞いて、妹の治療に欲しいという思いを飲み込んだ。

「冒険が終わったらでいい」

そうアンドレは自分に言い聞かせた。

隊列を整えて通路を歩き出したゴディ達は、海からは近いとはいえだいぶ離れたこの場所で磯臭さを感じた。

通路の先にあったドアを開けると、中は一層磯臭い。

「……末裔がいる」

剣士アンドレが身構えた。部屋には一体の末裔、魚に手足がついた魚人がギョロリとこちらを見ていた。

「なんだ?あいつは?」

末裔を見たことがないゴディは様子を伺った。というより、その見た目に興味があったのだ。
ヌメヌメした魚の身体に革鎧を来て両手に槍を持っている。目を引かないわけがない。

「オまえノなかマヲよこセ。ペソンプレノいけにえスル」

やっと聞き取れる言葉で【ワイロ】を要求してくる。

「仲間?イヤだね。大切な仲間は渡せない」

「ナラ、シネ!」

末裔は槍をゴディに向けた。槍の一撃を板金鎧で受け止めると、ゴディはモールで末裔の頭を“軽く”小突いた。
頭を潰された末裔はすぐ動かなくなった。

「あれえ。手加減したのにな」

ゴディは頭を掻いて、動かなくなった末裔の身体を漁った。そのあたりは抜かりがない。金色に光るものを3枚懐に入れたゴディは皆に声をかけた。

「ここは、磯臭くてかなわない。このまま先に進むけど皆は平気か?」

全員が頷いた。

通路をしばらく進むと、焚き火の跡と簡易な藁のベッドが敷いてある場所に出た。迷宮に入って来た者が野営地としている場所のようだ。

「あー、ベッドがある!」

ゴディはその藁のベッドに横になると、「みんなも休むといい」と言った。

まだ迷宮に入って時間は経っていなかったが、緊張から皆少し疲れていた。

ほんの少しの休息だったが疲れを取るには十分だった。

隊列を整え、ゴディ達はさらに迷宮の奥に進んだ。

次の部屋には顔を布で隠した者達が待ち構えていた。

「なんだ?」

不意を突かれて相手の先制を許したゴディの武器を狙って布で顔を隠した者が次々と手を伸ばす。

ゴディはそれを身体に似合わない俊敏さで躱すと、「なんだよ!」と身構えた。

「お、俺達は“真夜中の盗賊”さ!」

布で隠した顔を見るが、街にいる“本物の盗賊”のような迫力はない。ハイホロウ村にいる者と変わらない朴訥さを感じる。

5人の“真夜中の盗賊たち”を名乗る者だったが、ゴディたち冒険者の相手ではなく、あっと言う間に彼らは動かなくなった。

「もしかしたらだけどさ。こいつらハイホロウ村の者だったんじゃない?」

顔の布を剥がしながらエルダがそう言うと、ゴディは何も言わなかった。


その2へ続く。





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