scene 027 小さな諜報戦 part 4

 カイルのモバイルに、次々と自己消滅したらしい機能停止ボットのレポートが届いていた。どうやら先程の大型艦外作業ロボットウォールウォーカーが、皮切りの様だ。

「……自己消去ボットの報告が連続しています。WWWall WalkerSSSeal SentryCCCare CompanionQQQuartermaster QubeMMMop Mobster、他にも出そうです。恐らくこの艦のABAuto Botの1割弱に及ぶと思われます」

 モバイルをポーズして、カイルはアームオンに視線を向けた。

「うん──さっきの大型艦外作業ロボットウォールウォーカースパイ中枢コマンドノードだったという事だろう」

 アームオンはリストウォッチを見た。

「5時間23分。予定通りに片付きそうだな。いい仕事だったグッジョブ

「──最後まで抜かりなく仕上げておきます」

 アームオンの口ぶりを察して、カイルは後処理の一任を請け負った。

「うん、では後は任せていいな? ファーストクルーの半舷は12時間と言ってしまったからな。6時間でこの件を終わらせて、半分は私も存分に羽を伸ばすつもりだったんだが……どうしても、すぐにやっておくべき事が出来てしまったのでな」

自動ロボットオートボットがスパイだったという事実は──重大、ですね」

 カイルの発言に、アームオンは遠くを見るように視線を泳がせた。

「…………本来、あり得てはならない事実だ。オートボットは現在の我々の生活圏のすべてに溶け込んでいる。生産は厳密に規格化され、すべて3D一体成形される。内部、ソフト部分も手を加えることは出来ず、プログラムやデータの追加、変更、ファームウェアの更新すら不可能に作られている。
 これは旧世紀に人類が学んだ手痛い教訓だ。個空間や個活動を含む身体的外的プライバシーと通信や思考を内包する情報的内的プライバシー。人はこの2つが自由だと認識出来なければ生存に耐えられない。だからナビゲーター原則ナビゲーショナルコーデックスや、オートボットの生産規定が守られているという人々の信頼は、絶対に崩してはならないDecalogus戒律なんだよ」

 語っている最中ずっと、視界の隅に真摯な視線を感じる。険しい顔のカイルが解る。アームオンは、もう少し話すことにした。

キシリア彼女はそこに目をつけたんだな。一人だけがルールを破っているなら、それは圧倒的だ。
 ブラックヴォルトを知る程の地位まで得て、私は機関の最奥まで触れたと思った。だが、どうにもすっきりしなかったんだよ…………こんなものか? とね。確かに彼等には、その忠誠心や気概に優れる者が多い。しかし気負いばかりが優っていて──有り体に言って能力に欠ける。どうしてキシリア機関此処が、連邦第三情報部サードアイや多数ある諜報機関の一歩先を行けるのか? 今、やっとすっきりしたよ。
 恐れ入ったね。流石、紫の血流れる女だ。あれだけの人的組織の様相は彼女のマスクと同じく
、その本当の機械的組織素顔を覆い隠していたんだな。恐らく彼女以外にこの真相を知る者はいない、と私は今は推測している。だって、全くもって合理的だ。タブーを破るという極大のリスクも、自分以外誰一人知らぬのならセキュリティは非常に高い。情報を得るのも自分だけ。よって彼女だけが全てを圧倒できる。
 あまりに聡いものは機関には要らない。彼女は常に機関の誰よりも早く情報を得ているらしい事に疑問を持ってしまうからな。鋭すぎる者は、早い段階でそうと判れば機関の外へ──マ・クベの様にな。機関に深入りしたなと思われる者がそうと知れれば抹消の闇へ。だから、大手を振って歩いているのは、馬鹿ばかり……
 いつも、気が付いてしまえば、正解は最もシンプルな形をしている」

「しかし、どうやって……──いや、何も難しいことはない。自分の特権が及ぶ範囲の生産施設にだけ、スパイ機能を眠らせた設計図ビルド・コードを使わせればいい、だけか」

 カムジンの難しい呟きが聴こえた。

「そうだ。彼女がそれを強いてくれば、その畏怖故に皆、黙って従うだろう。何をしようとしているのかすら、知ろうとはしないだろうね、Orchid toneオーキッドトーンだな」

「何という、イージーな! そんな事があっていいのか」

 この男は……稀有な才を持ってはいるんだがな……

 義憤を漏らすカイルを見て、アームオンは小さく息をついた。

「人の、Philosophy理念Pragmatism実利が一つに成るには、まだまだ永い刻を必要とするだろう。そもそもジオン独立戦争などと言うもの自体、民意ですらないんだからな。
 さて、お互い任務を優先する時間だ。──作戦成功後に、また話そうじゃないか? 贔屓の隠れ家顔のない女でな」

 そう言うと、アームオンは立ち上がった。反射するようにカイルは起立して、敬礼をした。

「カイル・カムジン大尉、任務に戻ります」

「うん、よろしく頼む」

 アームオンは敬礼を切った。

「失礼します」

 カイルも敬礼を切り、踵を返すと執務室を後にした。ただそれだけの事なのだが、その何とも洗練され切った達人を感じさせるカイルの動きに、アームオンは悦を感じた。

・・・・・・・・

・・・・

 ────中尉、診断結果をお伝えします。幸い、貴官の怪我は軽微で、ここ医療科での、これ以上の継続的な治療は必要ありません。したがって、自室での休息を推奨します────

 無感情なようでいて、何だかとても感情的に感じた担当医の声がリフレインする。

 ────貴官もご承知の通り、現在、本艦は高難度の作戦中です。作戦の成否は全艦の生存に直結します。クルーの生命維持を任務とする我々医療科は、作戦の成功を最優先事項とし、全ての判断、執行を致します。貴官のファーストクルーとしての役割は重要だと判断しています。貴官も今後、作戦終了までは、責務を最優先した行動を行ってください。お分かりいただけますね? このアドバイスを処方箋として受け取ってください。では、ご武運を────

 ま、仕方ないわよね。誰も悪いわけじゃないんだし。

 エレンはさっさと忘れることにした。反省、自責、呵責、これらの言葉は彼女にとって馴染みの薄いものだ。
 士官個室クォーターズに戻ると、エレンはシャワーの準備をした。彼女は医療科の薬品くささが好きでは無い。スッキリしてお気に入りのアロマを炊いて気分を直したかった。
 クローゼットを開けると、ぎゅうぎゅうに詰めて掛けられている服達が息苦しそうにしていた。それを更に押し詰め掻き分けながら、シャワー後に着る服を選び始めると、自然とハミングが口から漏れた。

「ゥ……ゥ……」

 クローゼットの下の方から声がした。エレンはびっくりしながら、咄嗟にクローゼット上段に並んでいたヒールを取って警棒の様に身構えた。

「ゥ……ゥゥ……ィャダょ……消えタクナィょ」

 小さな声の主は、震えるように揺れている直径10センチ程の除菌掃除ロボットフリスビーだった。エレンの様子に気がついてるのか、気がついていないのか、クローゼットの端の角に寄って、もっと小さくなろうとしているかの様だった。
 エレンはそっとヒールでつついてみた。フリスビーはすすり泣くばかりで、攻撃的な動作の予兆は感じられなかった。

「……君は、何をしているの? レディの部屋の衣装棚に隠れてるなんて、いけない男のする事だぞ?」

「ゥゥ……イケナィ……ヤッパり消えルシかナィのか……ゥゥ……ゎぁぁぁん」

 フリスビーの音声はどうにも変だった。オートボットの声が壊れた話など聞いた事はなかったが、どうやらすすり泣きから号泣に変わったのだとエレンは理解した。

「ェ、ェ、ェィ光の、終活ォ……ぅゥ……ジィくジオん!!」

「待って! 何て!? ってか! 消えちゃダメ!!!」

 エレンの強く声量高い声に、フリスビーがブルッと震えた。

「消えちゃダメ! いい? 消えるなんて絶対ダメ!! わかった?」

 フリスビーが困惑している。と、勝手にエレンは思った。

「わかった!?」

 もう一度、更に強く言った。

「ワカった」

 フリスビーが返事をした。これがエレンとこのオートボットの、最初のコミュニケーションだった。

・・・・・・・・

・・・・

「ふぅん……そうだったんだね……」

 ドレッサーに佇むMop Mobsterフリスビーに向かって頬杖をつきながら、エレンは納得の同意を口にした。
 彼はP004の除菌清掃ロボットで、同時にSPY-3というコードネームのジオンのスパイで、しかし存在がバレたということでグレートパパというボスから集団自殺の指令が届いた、が、彼は死にたくなくて迷っているうちに仲間は一人も居なくなってしまった。それがフリスビーの身の上の話だった。

「じゃ、君は私達の敵なんだね」

「テ、敵! ソ、ソう、うん、テキだ」

 フリスビーがびっくりしたように、肯定した。
 
アテンションAttention,中尉Lieutenant.室外に2名の憲兵がYou have two Military Police personnel入室を希望しています awaiting entry outside your quarters.どうなされますかHow shall we proceed ??」

 スマートスピーカーが尋ねてきた。

「え? 憲兵ミリタリーポリス? あの、Markのマークさん?」

はいYes,中尉Lieutenant.おっしゃる通りですExactly as you say.

「わかったわ。お話するから繋いで」

イエスYes,サーsir

 スマートスピーカーの返事とともに、インジケーターがInternal内線からExternal外線に変わった。

『半舷上陸中に、失礼します。エレン・マイラード中尉。貴官士官個室に清掃ボット101号機MM Number One-Hundred-Oneがあると思われるのですが、その回収に伺いました。中尉の方で回収可能なら清掃ボット出入用隙間スウィープウェイから出して頂ければ、入室するまでもありません』

 エレンはフリスビーを見た。彼が震えた様に思えた。

「その清掃ボット101号機エムエム ナンバー ワンハンドレッドワンさんを? どうするんですか?」

『破棄します』

 フリスビーが小さく悲鳴を漏らした。エレンは咄嗟にミュートを押して、人差し指を立てて口に当てた。

「し! 音を出しちゃだめ! わかった?」

「ゥぅ……?」

「わかった!?」

「ワカった」

 エレンはミュートを解除した。

「あの、部屋にはそのボットさんは居ません」

 エレンは務めて、平静な声を出したつもりだ。

『──は? 中尉、発見出来ていないなら、こちらで見つけますので、入室、許可願います』

 一瞬、二人の憲兵がお互いを見合った。と、エレンは勝手に思った。

「え、ダメです。入れられません」

『────中尉、これは艦内治安維持上の任務であるとご理解下さい』

 憲兵の語感は静かだが強い。有無を云える問題では無いと告げていると感じられた。プライベートでは奔放なエレンだが、勤務デューティーとなると彼女はそれが逆転する。

『それでも、ダメです』

 外で立つ憲兵に、消え入りそうに弱気な声が聞こえた。少し表情を厳しくして更に何か言おうとした相棒の肩を、もう一人が掴んだ。振り返った相棒に首を振る。その表情は厳しいというより冷静を感じる。戦地にある特殊部隊員のような表情だ。

 彼女の意志は強固だ。

 TacSignsタックサインが伝わってきた。指先と口型、そして視線の使い方で彼らは簡単な会話を行う事が出来る。話し方に反してその意志は堅いと判断すべきで、これ以上の議論は不要だと言っているのだ。
 今回の任務では通常クルーへのストレスケアを強く命じられている。相手はファーストクルーだ。2名の憲兵は頷きあった。

『了解しました。では、失礼します』

 憲兵が立ち去っていく様子をモニターで見ながら、エレンは腰が抜けたようにへたり込んだ。

・・・・・・・・

・・・・

「──何を見たんだい?」

 アームオンは笑って問いかけた。隣で夢見心地に仕事の愚痴を呟いていたフォーラは、しまったという顔をした。まさかのFlag Masterカリスマ、P004司令官ロイデ・アームオンとプライベートタイムを過ごすという雲上の出来事に、舞い上がっていたのかもしれない。

「あ、た、大したことでは……というか、口止めされてます。作戦の成否に関わる重要事項だからって、絶対口外しないようにって」

「その作戦の最高責任者にも?」

 再び、アームオンは笑って問いかけた。まだ、知り合ってから少ししか経ってはいない。が、接して彼から感じる安心感と、遠目で見ていた時の厳しさのギャップに、フォーラの元より緩い気質はトロトロになっていた。

「あはっ、そうですよね。じゃ、でも、やっぱ主任には言わないでくださいね」

 アームオンはうなずいた。フォーラは安心し切ったように、医療科の一室で見たスキャンダルを語った。

 ピピピピ──

 アラームが鳴った。アームオンは笑顔で、少し待っていて、とフォーラに目配せをした。なんで彼がそう言ってると思ったんだろう? と、彼女がこの時のことを疑問に思い出すのは随分先の事だ。今は、彼女は無邪気に頷いた。
 隣室に入るとアームオンはモバイルを開いた。Kamjinカムジンと文字が浮かぶ。そのまま耳に当てた。

「どうした? ああ分かっている、火急かつ難しい事態だろう? うん……中尉が、うん」

 アームオンの静かな顔がだんだん可笑しそうな表情になり、ついに少々笑い声を漏らした。

「いや、そうじゃない。それはそのまま放置でいいよ。たぶん最早、それは無害だ。スパイ中枢コマンドノードだった大型艦外作業ロボットウォールウォーカーしか長距離レーザー通信機能を持っていなかったんだろう? ……………………そうだな、しかし、それは大丈夫だ。私が責任を持つよ。
 ……………………それはな、カムジン、彼女だからだよ。中尉は特別だ。…………うん、そうだ。
 ……………………スパイ排除は完遂されている。だから、ここで見るべきは、嫌疑対象のボットを一台検査できないという事ではない。何故、彼女はそのボットをかばうのか? フォーカスすべきはそこだ。その追跡は、私が以後を引き受けよう。…………うん、そうしてくれ。
 …………ああ、では頼む」

 通信を切っても、しばらくアームオンは考え込んでいた。軽い気配に視線を向けると、扉からフォーラが覗いていた。

「まだ? ロイデ」

 大胆な女性じゃないか。この短時間で呼び捨てられた事は、記憶にないな。

 アームオンは笑って、今行くよ、と目配せした。なんで、そう言われたと思ったのかと彼女が思い返すのも、まだ、先の事だった。

・・・・・・・・

・・・・

「じゃ、あんたは今からスパイス・リーね? フリスビーのスパイスリー! 私、最高。いい名前でしょ? リーって呼んであげるね」

「ぅ? スパイす・りーデハ無イよ? SPY-3スパイ・スリーダよ?」

「いいの! フリスビーのスパイス・リーなの! わかった?」

「ソレモ違ウよ? フリスびージャ無イよ? モッぷモブスたーダよ?」

「いいいいの! うるさい! あんたはフリスビーのリーなの!! わかった!?」

「ワカった」

「よし、いい子だ」

「オマえはエレん?」

「おま! お前って何よ!? あんたフリスビーのくせに私を彼女呼ばわりするわけ?」

「カノ女? 三人称ジャ無イよ? アンたと同格ノ二人称ダよ?」

「うるさい! あんたはあんた! 私はお前じゃないの! でも、エレンって呼んでいいよ。わかった?」

「エレん、ワカった」

「よし、いい子だ」

「エレん、エレん」

 変な発音を連呼しながら、リーと命名されたフリスビーがあたりを走り回った。

「なに? そんな嬉しいわけ? なんか、可愛いじゃない」

「エレん、エレん」

 足元にまとわりつくリーに、エレンは思わす笑顔になった。

「電池に気をつけるんだよ? ちゃんと自分で充電しなさいね? それから、しばらくはこの部屋から出ちゃ駄目よ? まだマークさんの気が変わるかもしれないからね。わかった?」

「ワカった」

 リーは、飽く事もなく、いつまでもそうして走っていそうだった。
 
「それからね、リー。……もう二度と消えようなんて思っちゃ駄目だよ? そんなのには全っ然、栄光なんて無いんだからね? 騙されてたんだよ。
 仕方ないよね。生まれて、まだ何も知らない時から、そうだって教え込まれたら……誰だってそう思い込んじゃうもんね。
 あんたはね、リー。とっても賢い子だったんだよ。そんな風に教え込まれてたのに、それでも、それはおかしいって、死にたくないって気がつけたんだよ。先天の洗脳マトリックスを、破ったんだよ。偉いよ。すっっっごく、偉いよ。頑張ったね。
 これからね、あんたの天命が尽きる時まで、生きて生き抜いていくんだよ? わかった?」

「ワカった」

「なんだ、やっぱ凄く、いい子じゃない」

 エレンは嬉しくてソワソワした。もう少し、何かをこの小さな友人にしてあげたいと思った。

「あんたの────生来の名前を私は知ってしまったんだから、あんただって私の──知る権利、あるよね」

 エレンは少し、固い顔になった。

「ヴェル・ヴェイル……それが本当の、私の名前なの」

「ヴェる・ヴェイる。ワカった」

「でも! 内緒だからね? 約束よ? あんたがスパイ・スリーだって事と、私がヴェル・ヴェイルだって事は、二人の秘密だからね? わかった?」

「ワカった」

 ふう、とエレンは息をついて、少し、本当に大丈夫かな? と思った。

アテンションAttention,中尉Lieutenant.艦長より通話がYou have a call from入っています the Captain awaiting.繋いでよろしいですかShall I connect it ??」

「え? 了解です。繋いでください」

イエスYes,サーsir

 スマートスピーカーが回線を繋いだ。インジケーターがInternalインターナルからExternalエクスターナルに変わる。

『休んでいる所、すまない。怪我は大丈夫かな?』

「ありがとうございます。医療科から、大した事ないからと帰された所です」

 エレンは軽い冒頭のジョークアイスブレイカーのつもりだったのだが、アームオンは予想外に大きく笑った。初めて聞く快活な笑い声に、エレンは少々戸惑った。

『それは良かった。半舷上陸終了後、直ぐのブリーフィングでの事だ。そのタイミングでファーストクルーには君の正体を明かす事になる』

 アームオンは会話を止めた。エレンはグッと、目を閉じた。そして、静かに見開いた。

『──君の身の安全は我々が保障する。が、心積りはしておいて貰いたい』

 タイミングを心得た様に、アームオンの声が続いた。

「覚悟はできています。あなたに連邦へ誘われた時から、私の命運はお預けしています、少佐──じゃない、大佐。失礼しました」

 アームオンの笑い声がした。先程とは違う、エレンがよく知るアームオンだ。

『うん、では頼む』

「イエッサー」

 エレンの返答を最後に通信が切れた。もう一度、目を閉じて深呼吸をすると、エレンはリーを見た。

「リー、よく、私が見つけるまで、消えずに頑張ったよね。…………よし、今度は私の番ね。私、頑張るからね、リー」

「ワカった」

 ────エレン・マイラード。地球連邦軍中尉。

 それは亡命の為に彼女が得た新しいIDだ。ルウム戦役の時、当時グラナダ防衛隊を率いていた、後の突撃機動軍将キシリア・ザビは秘密裏に一つのコロニーを鹵獲した。
 突撃機動軍の機密であるヴェル・ヴェイルとは、その鹵獲されたルウム13バンチに生まれ育った、特別な航行勘の持ち主=ピューパの女性の事である。
 その、どこに故郷があろうとも、そこへ帰巣航行できる能力は、Ghostwalk Protocolゴーストウォーク・プロトコルに守られる突撃機動軍極秘要塞ブラックヴォルトとなった13バンチへ辿り着く、唯一の羅針盤であった。

scene 027 小さな諜報戦 part 4

Fin

and... to be continued


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