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交換日記(9)世界の終りと始りの日記帳

交換日記。懐かしい響きだ。小学生の頃から仲の良かった友人達と、途切れ途切れながらも続けていたそれは、中学生になって勉強や部活動、新しい人間関係に忙しくなった私達の習慣から、自然と存在を消してしまった。思えばそれも一つの世界の終りと言えるのではないだろうか。

始りは、私が買った交換日記帳だった。何故、それを買ったのかは、今となっては定かではない。恐らく、当時流行っていて好きだったキャラクターが描かれていた、そんな子供らしい単純な理由だったのだろう。次の日、ちゃちな銀色の南京錠と鍵の付いたそれを、私は学校に持っていった。友人達は、交換日記への参加を快く承諾してくれた。

彼女らと一緒に他愛の無い事を書いた。その日の面白かった出来事や愚痴、連絡帳代わりにも使われた。勿論、日記帳に書いた事は私達だけの秘密だ。その秘密が、私達の世界をより強固なものにしてくれていたように思う。私は、口語と文語での性格の差異が大きいらしく、彼女達はよくそれを「面白い」と言って笑ってくれた。普段、おとなしい私が文章の中でははっちゃけられていたのだ。思えばその頃から、書く事に対して何か思う所があったのかもしれない。

世界の終り。それは、日常に潜んでいる。私達は、個々でそれぞれの世界の中に身を置いているのだ。今日も何処かで世界は終り、そして、また新たに始まっている。どうか、大切にしてほしい。あなたのその世界を。

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