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かくということ、それから「カワイイだけじゃ、いやよ」と思っていることについて

昨年から毎月、カレンダーをつくってTwitterなどで投稿していました。季節にまつわるイラストをかいて。今年に入ってからは、そこに言葉を添えて。ここのところ、自分がこれからかいていきたいものについて変化があり、勝手ながら、六月より作製をお休みしています。

何かを「かく」ことをはじめたのはいつだったか、幼少の頃は本ばかり読んでいて、そののち、少女漫画をたくさん読むようになったので「わたしも高校生になったら、背の高い男の子とうんぬん」というような妄想をしながら、漫画を描いていたような気がします。胸に大きくて赤い、制服のリボンを結んだ女の子を、自由帳に鉛筆で。

とは言っても、絵は描くより観る方が好きだったかもしれない。美術館が好きだったし、美術の授業は鑑賞の時間が好きでした。そして授業おわりに感想文をかかされる。用紙が回ってきたときはめんどくさいなあと思うけど、書き始めたら、すごく夢中だったのを覚えています。絵を描いている人への憧れや尊敬がありました。

やがてわたしも高校生になるわけですが、その頃時間を費やしたものは音楽と映画が中心でした。通っていた高校の制服にはリボンもネクタイもなかった。「背の高い男の子とうんぬん」ということもなかった一方で、教室でつけまつげをつけているあの子の、笑顔とか、テニスのラケットを背負って部活に行く姿とか、永遠に唇からわきでてくるたわいない話と冗談とか、そういうものをわたしはすごくカワイイと思っていて、かなわないと思っていて、羨ましいと思っていました。

当時、だれでも簡単にブログなんかがつくれるようになって、みんなこぞって、ネットに日常のことや想いをかいていた。わたしも窓際の席でグラウンドを眺めながら、なにか放出したい、と思ったのかもしれない。今と同じスタイルで、五分ほどで読み切れるような短い小説をこっそりと書き始めました。

昔、漫画みたいなものをかいていたけど、言葉だけを羅列していくのは、なんだか面白い行為だなと思いました。頭の中にある風景とか。仕草とか、目線とか。においとか、体温とか、目に見えないものまで、全部あつまってきて、並んでいく。

インターネットというのはすごいもので、顔も知らない人がわざわざ読んでくれて、コメントをくれるということがあった。今ではSNSの普及でそういう体験も身近になったけれど、当時はなんだかそれが、世界がひっくり返るような驚きだったように思います。だから同時に、それがわたしの出発点というか、わたしもこういうやり方なら、だれかに言葉を伝えることが出来るんじゃないかって、思いました。クラスメイトのあの子が、遠くに遠くにいても。

ここ何年か、「ショートストーリーと、イラストをかきます」と言って創作を続けていました。文章をかくということの助けとして、もっとうまくイラスト、かけるようになりたいなと思って、集中して絵をかいていた時期を経て、少しずつ、出会う人に「イラストかいている人ですネ」と言われることが多くなってきました。それから「カワイイ絵ですネ」と言うお言葉も。作品を見てくださっていること、そして「カワイイ」という最強の褒め言葉をとてもありがたく思いながら、心のどこかで「わたしって、イラストかいてる人なんですかねえ」と、思い、「カワイイだけじゃ、いやよ」と思っていることに、気づいたのでした。

なんてちぐはぐで、強欲なきもちなんだ、とおもうのですが、その気持ちは多分、少女が大人の女性に憧れるようなもので、早く頬から、ファンデーションの匂いをさせてみたいと思っているということ。まだわたしはグラウンドを、ぼんやりみている。

イラストをかくとき、小学生のころもそうだったけれど、目に見えるかきたい対象物が必ずそこにはありました。長いまつげがかきたい、ペンを握る指がかきたい、あの大きなリボンがかきたい。そしてそれを見ながらでないと、かけない。文章の場合はわたしにとって、必ずしもそうではなかったのでした。目をつむりながらでも、頭の中にうかんでくるものをひとつひとつ捕まえれば、さまざまなものが目の前にあらわれてくるという点で。また、その行為が自分にとって、あまりにも心地よいという点で。

だからやっぱり、文章をかくことにフォーカスをあててゆきたい。イラストに関しても、表現手段の一部や、表現の欲望のひとつとして大切にしてゆきたいものですし、今まで関わらせてくださった方にも感謝の気持ちでいっぱいです。なにかをつくってだれかに伝えたいという目標は、文章でもイラストでも同じでしたから。言葉の力を借りて自分なりの表現方法をどうするか、夜な夜な思いを巡らせていて、いろいろと実験をしていきたいと思っています。なにかこそこそとやっているなーと、見守っていただけたら。

それから最後に。あらためて、告知をさせていただきたいと思っていますが、この夏に一冊ZINEを発売予定です。ショートストーリーを八話おさめたものです。挿絵もかきました。でも、いつもとはすこし画風を変えて、なるべくストーリーを読んでくださる方の想像が、限定的にならないようにと思いながらかきました。そのギリギリのラインを、攻めてゆきたく。

「かく」ことは人それぞれに、こぼれ落ちそうな思いがあるものだと思います。たくさんの「かく」人に敬意を払いつつ、あの、なんにもなかったようで、ほんとは原点でもあった高校時代のことを時折思い出しながら、かいていきたいとおもう。カワイイあの子に、ホントは今もかなわないなと思って。

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