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僕にとってのゲストハウスという場所は


2002年、19才中卒の僕は「これからどうやって生きていこう」と真っ暗なトンネルの中を手探りで歩いているような気持ちで毎日を過ごしておりました。

友達たちは大学に行き毎日楽しそうに見える、同じような中卒の友達は仕事をして休みは彼女と遊んだり、好きな趣味などに打ち込んでいる。ようにみえる。

僕は、勉強もやる気はない、やりたくない、仕事も長続きしない、何をしたらいいのか解らない、何をしたのかも解らない。
全てがしっくりこない、社会に属せていない、毎日が不安で不安定、な状態でした。

そして旅に出ます。

ヒッチハイクで仙台から沖縄まで。

梅鉢さんPhoto1


その旅は出会いの連続、

乗せてくれた人はまさに多種多様、普段の生活では絶対に出会わないような人たちで車の中の会話は新鮮で驚きの連続、時には家に泊まらせてもらい夜な夜なお酒をのみかわしたり、その地その地を観光させてもらったり、日々日々が「今日はどんな1日になるのだろう」と刺激的で予測不能な毎日でした。

そして、目的地の沖縄についた時ある言葉に出会います。

一緒に旅をしていた友人の一言
「オレ、現実が見えている旅人と、見えていない旅人がいると思うんだよね」

打ちぬかれたような気持になりました。


僕のヒッチハイクの旅は全て人の善意によって成り立っている旅で言うなら人任せ、風任せ。
自分で「やっとここまで来た」なんて達成したような気になっていた私はその言葉を聞いた時に自分の足でちゃんと歩いているのかな?
という疑問が沸き上がります。

さて、ヒッチハイクの旅を終えた僕は一度仙台に戻り次は京都へ向かいます。
目的は
「夕暮れの鴨川でみた恋人たちの風景が忘れられなかったから」

しかし心の中は地元に居たくなかったという気持ちが強かったように思います。
着の身着のまま京都に向かった僕はとにかく安く泊まれる所を探します。

そして見つけたのがゲストハウスです。

ワールドカップイヤーの2002年、沢山の外国人たちが日本に来ていました。
英語なんてしゃべれないけど、いつの間にか肩を組んで笑いながら酒を飲み交わしているような毎日。

「仙台ってどんなところ?」
「君はどうして旅をしているの?」
そのような会話の中で
「え、オレそんなこと思ってたの」
って自分自身が驚くような返答している自分に驚くことが多々ありました。

ゲストハウスでの日々は自然と仙台のことを考え、自分の気持ちと向き合う日々となりました。

そしてお金のない僕はオーナーに直談判しスタッフとして働かせてもらうことになります。

ゲストハウスのお客さんは多種多様。
一日中共有スペースで日本舞踊を踊っている中年の白人女性、高野山から一時下山したお坊さんの卵、自称小説家、留学をきめた同世代の日本人等々、

そしてなんといっても個性豊かなオーナー。
彼はゲストハウスオーナーだけではなく京都市長選に立候補したり、当時戦争中のアフガニスタンに旅をしに行ったり、セクハラで3回訴えられたり、と様々な伝説を持つ名物オーナー。

とにかく様々な「こんな生き方ありなの?」って思うような同僚スタッフや泊まりにくる同世代の日本人、外国人はもちろん本当に色々な人と交流することが出来、様々な生き方に触れることが出来ました。

梅鉢さんPhoto2


印象に残っている会話があります。

「日本人はこんなに恵まれているのにどうして自殺者がおおいの?」

その人はアジアの貧しい国の人でした、仕事を探しに日本に来ていた人で、自分の国では電気も安定せずすぐに停電になるし、一部屋に家族全員で寝る。テレビもない、とっても貧しいけど、でもみんな幸せそうなんだよ。
家族をとても大切にしていて、いつも笑っているし、隣町に可愛い子がいるって聞いたらみんなで一晩かけて見にいくんだ。と自分の国のことを教えてくれました。

僕の中で一つの考えが沸き上がります。

「幸せってどううことなんだろう」


そしてこう思います

「オレもゲストハウスがやりたい」

直感でした、
こんなに自由にみんなが互いの夢を語り合い、それを尊重することが出来る空間を自分でもつくりたい。

そして僕は仙台に帰り、ゲストハウスを始めるための準備を始めます。
祖母の空き家を使わせてほしいと交渉し手作りで看板を作り、イオン、当時のジャスコで布団と扇風機を買い集め、手作りのビラを作り、さぁ開店だ
名前は「ROCK GARAGE」です。

一週間の総売り上げ、1000円。
一週間で閉店しました。
お客さんは友人が紹介してくれた友達一人のみ。

思えば最初からうまくいくなんて思っていなかったのかもしれません。

ノリと勢いで「まぁ、やってみよう」くらい。
つまり、今思うと失敗しても痛くない程度の頑張りでしかゲストハウスのことを考えていませんでした。

そして僕はアルバイトをしながら人生を模索する日常に戻りました。

しかし、
変わったことがあります。

「幸せの価値観のベースが出来たこと。
自分なりの普遍的な技術を身に付けたい」
という思いが明確に芽生えていました。

2年の時が経ち僕は21才、のちに結婚する相手、梅鉢の女将の敬子さんと出会ったのもこの時です。

そして僕は、昼は和食の店で働きながら夜間の調理師学校に通います。

初めて自分の中でできた目標、
「この人と結婚したい」
「自分で自分の空間を創りたい」という思いの中で一心不乱に働きながら調理の技術を習得します。

当時、朝の8時から夜の23時まで週一回休み、厳しい和食の世界で働きまくっていた僕はある日全身に激しいかゆみに襲われます。
そして皮膚科に行ったところ「アトピー性皮膚炎」と診断されます。

店を代えます。

次の店でたくさんの仲間に出会います。
同世代の同じような夢をもった仲間たちと切磋琢磨しながら調理の技術だけでなく、店の運営の仕方を学びます。
相変わらず働く時間は長く、休みの日でも会議や勉強といった日々でしたが仲間と共に成長している自分を感じることができて頑張ることができました。

なによりこう思っていました。

「なにもないよりずっといい」

10代後半から20代前半、悶々と先の見えぬ不安を抱えていた僕は自分の人生の目標や達成したい自分を見つけ出せたこと、できることが増えていく自分に喜びを感じていました。

そして
「大検資格、電気工事士、日商簿記検定」の資格を働きながら取得します。

26才5年の修業を経て、なんとなく自分の作りたい料理が作れるようになり店の運営のノウハウを学んだ僕は次のステップへ向け旅にでます。
今度は妻と二人、ゲストハウスを巡る日本一周の旅です。

前回の旅とは全く意味の違った旅でした、社会人としての経験を経た僕は自分のフィルターを通して各地の光景を見ることができ、それは5年間で自分が積み重ねてきたものが明確に見えるように感じました。
社会の中での自分の位置を踏まえたうえでその旅は僕に新たな刺激を与えてくれました。

そしてなにより、その旅には共に共感できるかけがえのないパートナーが隣にいました。

しかし当時の僕は、このまま調理師として働くのか、自分で店をやるのか、それとも別の道を行くのか悩んでいました。

旅から帰ってきた時に母親から言われます。

「あの時できなかったゲストハウス、いまなら出来るんじゃない」

イナズマが落ちました。

自分の旅や料理の経験を活かし旅人に温かいご飯を食べてもらい、交流を通して知らない世界や新しい自分に出会える場所、今までの自分の人生の経験や悩み、出来事の全てが1つの線となり次に進むべき道としてゲストハウスという明確な形として見えた気がしました。

それから、事業計画書、旅館業法の勉強から始まり、融資の相談、工務店と打ち合わせの毎日。

その当時どこにいっても「ゲストハウスってなんですか?」から始まり、そこを説明するところから一歩一歩だんだん形になっていき、2年半の歳月をかけ29才になった僕はゲストハウス梅鉢をオープンすることができます。


初めてゲストハウスと出会ってから10年の月日が流れていました。


2年半の準備期間、飲食店時代の友人たちが時間の融通を利かせてくれたから食いっぱぐれることなく働くことが出来ました、妻や両親が理解してくれたから安心して計画を進めることができました、全くわからない建築業界で私の「やりたい」という気持ちをかってくれて協力してくれる職人さんがいてくれたから、いつだって応援してくれた友達がいたから頑張ることが出来ました。

そうした点がつながりあってゲストハウス梅鉢は誕生することが出来ました。

「点を繋いで目的地まで」
かつてヒッチハイクをしていた時に出逢った言葉です。

そして今年ゲストハウス梅鉢は10年を迎えることができます。

何をしていいか分からないときが一番つらかった。
だけどそこから一歩踏み出した時、いつだって助けてくれる人がいました、恐れずに飛び込んで良かったと思います。

全てのコンプレックスや悩みはきっと何かを始める時のバネになると思います。

自分の心と向き合い、何がしたいのかを自分基準で判断して飛び込んでく。
皆様にとってゲストハウス梅鉢がそういうきっかけの場所になってくれたらいいな、と思っております。

梅鉢さんPhoto3


仙台ゲストハウス梅鉢 代表 加賀真輝


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