きんたまの皮がズル剥けた話

ーーーー2022年6月、僕のキンタマは死んだ。(タマタマの墓)


終わりの始まり

色黒の自分は、かねてよりニキビ顔と左頬のシミについて悩んでいた。
「男性が気にすることではない」と思われるかもしれないが、すでに30代を迎え老化が始まりつつある中で、いまだ童貞、婚活中の身分である自分は、これ以上の男性としての魅力が落ちることをなんとか抑えたかった。
そんな中、自己治療でトレチノイン+ハイドロキノンと呼ばれる美容医薬品の存在を知り、美白治療という手段を実行する機会を得たのだ。すげぇ時代だ。

はじめようか、自己治療

トレチノインはビタミンA剤である。主な効能として皮膚の産生を促すというものである。これにより古くなった皮膚が剥がれ落ちやすくなり、新しくできた皮膚をハイドロキノンによるメラニンの生成防ぐことによって皮膚がが黒くなることを防ぐ。その結果、通常4か月程度かかるターンオーバーを薬の力を借りて2か月で行う、というのがトレチノイン+ハイドロキノン治療である。

最初は順風満帆だった

副作用に猛烈な痒み、皮剥けがあることは承知しており、事実顔に塗布したときは治療開始後3日後くらいからまるで爬虫類の脱皮のように皮むけと乾燥による痒みが襲ってきた。
とはいえ、事前準備もしっかりしたうえで臨んだこともありそれら副作用にも無難に対処してきた。
治療を始めて1.5週頃から明らかにシミが薄くなったのを見て僕は歓喜した。
そしてそれと同時に、「なんだ、副作用ってこの程度じゃんwww」と慢心をした。
今にして思えばそれが終わりの始まりであった。

気になり始める足の付け根の黒ずみ

もとより皮膚が弱く、黒くなりやすい自分は足の付け根の黒ずみも気になっていた。しかし、普段から見える場所ではないのでさほど気にしてはいなかった。しかし、美白治療という武器と使い方を覚えた自分はこのように考えた。
「これも白くなればきれいじゃないか」
かくして、顔に加えて足の付け根の美白治療が始まったのである。

偏る情報源。そして女性と男性の性差

美白治療は性質として圧倒的に女性発のブログや情報が多い。男性発の情報ソースはなかなか見つからなかった。
自分と同じように付け根や性器周辺の黒ずみ治療をしているのをみて、同じ人間だから同じように治療はできるはずだと考えていた。
ーーーそう、きんたまのあるなしがなければね。(TamApple CEO)

付着。そして異変

足の付け根に薬品を塗布することにより、男性にぶら下がる袋に内股から薬品が付着することは自明であった。悲しいかな、前述の通り顔で誤った成功体験を手にしてしまった自分は問題ないだろうと考えていた。考えてしまったのである。
治療を始めて4日経過したころ、明らかにきんたまの皮が黒色・乾燥し始め、強制ターンオーバーの兆しが見えていた。これもトレチノインの効果によるもので特に気にしてはいなかった。異変を感じるまでは。

脱落と痛み

ある日の暮れ方のことである。シャワーを浴びていた時のことだ。いつものように体を流していると「ベシャ」という音と共に黒い塊が落ちた。
同時に股下から燃えるような、そして刺すような痛みが襲ってきた。
トレチノインの作用により表皮が脱落したのである。

本来ターンオーバーとは角質層(表皮)が作られ、その結果押し上げられた古い角質層が脱落していく。それを薬で無理やり期間短縮をしているのだから、皮の薄い箇所は「表皮が生成されるよりも前に皮膚が脱落する」ことが起こりうる。

そして現実としてそれは起こった。自分の金玉でね。

苦痛との闘い

もはや美白どころではない。赤く腫れあがったきんたまは風を切るごとに痛く、ところどころ赤い肉が顔をのぞかせている。
さらに悪いことに、歩くたびにきんたまと太ももが擦れあい、さらに状況を加速度的に悪化させていく。
歩くことさえ困難になり、スリラーのゾンビダンス(マイケルジャクソン)のように大股を空けて動かねばとても移動ができる状態ではなかった。
さらに股間のお毛毛が中途半端に刺激するもんだから、この世のすべての悪を飲み干して濃縮された呪詛を吐き出したくなるくらいに痛みと痒みが自分を襲った。
なぜ、こんな目に合わなければならないのか。美しさを夢見るだけでなぜこのような仕打ちを受けなければならないのか。悔しい。リア充爆発しろ。
最近、社内結婚した同僚、おめでとう。可愛い奥さんだね。実は片思いしていたんですよ。僕は苦しいです。

ところで、付け根にあかぎれや湿疹がある人は肥満率が高いという。なるほど、これほど痛みがあれば歩くのは億劫になるというもの。
痛みを犠牲に一つ賢くなった。

そして今

皮膚科に行き、ステロイド外用薬をもらって治療している。自分のかかっている主治医はパンツソムリエなので必ず着用している下着が綿100%か
厳しい審査が行われる。そして毎回怒られている。

ーーー僕のキンタマの軽快はまだ遠い。


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