キングオブコント2019キングオブコント2019名古屋1回戦【Bブロック】感想文

モーリス「夏休み何してた?」
バナナマンの名作「Secretive person」を彷彿とさせる台本。いかにも素人さんって感じのコントで、間違えた時に「間違えたな」って言ってたのが微笑ましかった。アマチュアが今後も続けるためにはまずウケたという経験を積んで貰うのが手っ取り早いのだが、ここの壁を乗り越えるのはなかなか難しいようで。俺の所きてくれれば1回戦ならウケたなぁ、って思わせてあげられると思うんだけども。連絡待ってます。

轟ハイラックス「アメリカンTVショー」
トリオ。ハーフの男がテレビ番組の光景にツッコミを入れていく。まずツッコミが上手い。言葉ひとつひとつが立っているし、断定する言い回しなので笑うポイントが明確でスカッと笑える。ボケの男女2人もきちんと役を全うしている。気になるのは声量の差。今の段階ではツッコミの声が群を抜いて届くのでボケ2人は声を届ける努力が必要だろう。ツッコミに関しては基本はめちゃくちゃ上手いので、何か言い方やフレーズで個性が欲しい。今回のネタのツッコミは、音程、長さ、テンション、どれもほぼ同じような印象で後半のワクワクが少なかったように思う。死んで生き返った所などはもっとテンションを上げても良かったのではないか。この番組にのめり込む様子が見たかった。あと「何で会話できるんだよ!」とか「何で生き返るんだよ!」とかのボケについてだが。最近はああいう理不尽には何か理由が欲しくなる。こじつけでもいいので何故か、という理由を明確にする、または理由も考えたくなくなるくらいにブッ飛んだ内容にするか、どちらかに振り切った方がいいと思う。

おもてなし「レジ前のおばちゃん」
おばちゃんがお札を出す時に指を舐める際に指先に毒が塗られていた。おばちゃんのキャラが良い。「ちょっと、待っててね。」の言い方でもう掴まれた。「独特のフェチズム!」などのツッコミも良い。惜しいのはツッコミの声に張りが無いので届ききっていなかった。語尾が小さくなって、大きな笑いを逃している箇所があったように思う。これは私の個人的な意見だが、ツッコミは最初の音と最後の音をきちんと発音する事を心がけると良い。あとは感情を込める。この設定であれば店員はもっとビビった方が見やすい。ちょっとヘラヘラしてるように見えてしまった。
オチに関しては、これだけ奇妙な世界観が出来ているので、おばちゃんはヤバいままで終わって欲しかった。最後小さくまとまっちゃったので。コントの整合性も大切だと思うが、もっとインパクトを残しに行く方が勝てる。

協調性よろしわるし「お笑い芸人の出待ち」
素人にバカにされる芸人の心の叫びをコントに昇華した、性格の悪さ全開のネタ。2人ともピン芸人として活動しているが見事なユニットだった。コント「◯◯◯◯」のネタバラシからの気持ちいい逆転、ギャグに対するツッコミがだんだんと応援にシフトしていく感情の変化も自然で観客が乗っかりやすい。途中の「それはちょっと面白いw」をきちんと演じきれる所でもう勝っている。落選理由は恐らく芸人をイジるタイプのネタだったから。それ以外に落ちる理由が見当たらない。素晴らしいコントだった。

やつやつファミリー「学芸会の練習」合格
このコンビについては完全に身内なので評価が難しい。ウチの相方とその息子のコンビで、私もネタについてあーだこーだ口出ししたので。子供を使うというズルさはあるが、それにしても合格に値するウケ方であった。恥ずかしいが、改めて客席で見ると相方の表現力の高さに舌を巻く。声の張りが他の出演者と桁が違う。「伝えよう!」という意識は誰よりも強かったと思う。

ハネウマ「クレーム対応」
クレーム対応に困る部下に上司が手助けをするが結局何も解決出来ないというサラリーマンコント。演技力は高い。余裕のある上司の感じなので「ぶち殺すぞ」の言い方は笑いながらの方が違和感が強まって良かったのではないか。名古屋の観客は引いてしまった感じがしたので。展開は違和感無いのだが、その分、部下があまりに救いようが無いというか、この流れで上司が本当に何の制裁も受けないのは気持ちよく無いというか。現実的過ぎて流れで見てしまった。やはり2分で綺麗なコントをやるのは難しい。

SHOTA「英語の授業」
ホワイトボード、フリップが完全に横を向いている、ペンが薄くて見づらい。こういう部分は誰かに指摘されないと気づかないのだろうか。何となく、友達を集めて一度披露して、そこでバカウケだったんじゃないかな。変な発音というノリだけでやってのける潔さはとても良い。前半ただ乗ってるだけの生徒がブルーギルで急にツッコミ役になるのがちょっと違和感を感じた。「ブルーギル」の発音は面白い。おいでやす小田がこういうネタやってたよね。舞台経験を踏むとすごく良くなると思うので期待。

オカダタイム「医者と変なヤツ」
変なヤツが現れるコントが何組かあったが、全組に言えるのは相当変なヤツが出てこないと見る側は変なヤツと認識しないのだという事を感じた。そして、変なヤツには変なヤツの理論や正義があるハズなので、ただ変なヤツが変な事しても普通の人間が無理して変なヤツをやっているようにしか見えない。変なヤツが面白い事を言うんじゃなくて、変なヤツがまともな事を言うから面白いのだろう。

スペードの3「スケート選手とコーチ」合格
台本の完成度であれば今日の中でもトップクラス。最近特に多くなったいわゆる設定バラシのコント。男女コンビは男女コンビ出ないと出来ない設定を出さないと評価されにくいが、今回は良かった。失礼かもしれないが「普通の女子」なのがいい。キャラクターとしては弱いが、裏を返せばどんな役でも出来るという事であり、事実どんな役でも違和感なくやってのける。長いスパンで見たいコンビ。ツッコミもアベレージは高い。スペースワールドなどの遊びの要素も楽しく、スキが無い。2回戦を突破するにはツッコミのコーチがどう立ち振る舞うかだと思う。きちんとツッコミは出来ているが、その分コーチとしての役割が薄い。仮にも手塩にかけて育ててきた選手の晴れ舞台であんなに全否定するだろうか。どこかで選手に対しての愛情を感じられたり、コーチと選手の関係性が色濃く見える部分が見えても良いのではないか。感情の起伏も今の状態だと怒りのみになっているので他の要素も盛り込めるといいと思う。お芝居としての完成度を高める事はこのコントを面白くするうえでプラスに働くと思う。一言一句言葉を練り直して詰められる所は詰めてもいいと思う。例えば「お父さんもお母さんもおばあちゃんも、それにウチで飼ってるチワワだって」は少し長いので「両親」に置き換えてもそこまで変わらないはずだ。
あと考えすぎかもしれないが、共食いのくだりはちょっと丁寧にやり過ぎて読めてしまった。

ウェイウェイズ「ことば研究会」
博士の振り切った感じはとても良いと思う。否定では無く肯定がベースのツッコミなので冷めずに見る事が出来る。良い作戦であると思う。内容に関しては、まずフリップの大きさが会場に合っていない。客席後方では相当見づらかったのではないか。発想自体は良いと思うが、嫌なものを可愛い女優に置き換えるだけだとリアクションが一辺倒になってしまう。最後の部分もいかにも伏線回収のためという印象があるので大きな爆発にならない。観客が「なるほどぉ!」と思うか「…で?」と思うかで笑いの爆発力は大きく変わってくる。今回は残念ながら後者であったように思う。あと、根本的な事になってしまうがこのネタ、ピンのフリップ芸で成立するのではないだろうか。

アイドルず「エステ」
こういうタイプの人がやりがちなのだが、自分達の話しかしない自分たちのファンに向けたやり方しか出来ない。これは危険である。今一度、自分達を知らない人には一体どう見られていて、どこから説明すべきか、どう見られるべきか、というのを客観視して作らなければならないと思う。ましてや漫才では無くコント。本来のアイドルとしてのキャラクターを役柄にどう反映させるかを徹底的に考えないと、ただただ痛々しく見えて損である。こういう人達はとてつもない武器を持っているので、やり方次第で1回戦ぐらい余裕で合格する可能性があるので頑張って貰いたい。

フルフラット「取り調べ」
楽しいコントではある。2人とも若干早口で聞き取りづらいのがちょっと損。わちゃわちゃしているうちに終わってしまった感じがした。決してウケていないわけではないし悪くも無いのだが、そもそもを言ってしまうと、設定として使い古された「取り調べ」というのは相当何かが秀でていないと減点になるのような気がする。正直似たタイプのコントを作った事がある身としては、例えばこのノリは国会でも成り立つし、なんでもありなのである。取り調べじゃないといけない必然がないと厳しい。

スペーズ5号「幼稚園」
男装の幼稚園の先生と現実的で冷めた生徒とのやりとりを描いたコント。男装がコントのメインテーマじゃないのは非常に見づらい。ここもアイドルずと同じで、自分たちがどう見られているか、どう見せたいかをきちんとプロデュースしなければならない。普通のコントをやったってしょうがないのである。せっかく男装という他には無い武器があるのだから全力で使うべきだ。その設定が見つかれば合格は余裕だと思う。
あと、彼らの事も何度か見ているが、まだまだ「誰かにやらされてるんだろうな」という感じが抜けない。要は楽しんで無いように見える。これは凄く損をしているので、面白い事を言わなくても、変な奴として出てこなくてもいいから、とにかく本人達が心から楽しめるような設定、役柄を考えた方が良いと思う。

恒和寮「居酒屋」
ふらっと入店したサラリーマンと新人バイト店員とのコント。ツッコミが完全に観客にお尻を向けていたのが残念。こういうタイプのコントはツッコミに感情移入がしやすいので、きちんとリアクションを見せた方がウケると思う。メニューの大喜利も後半に行くにつれてクオリティが上が申し分ない。セリフも感情がしっかりと乗っていて楽しい。舞台の立ち姿を改善すれば合格していたと思う。仮に2回戦に行くとするとどこまで大喜利の発想を飛ばせるかヒネれるかにかかっている。メニューが全て「動物の◯◯」に限定されているので、そのルールからはみ出すか、ルールの中でもっといい解答を考えるか。

全力クロール「忘れっぽいコンビニ強盗」
全力コントという割りには全力ではなかった。女性コンビがやらなくても良い設定なので、せっかくならもっと自分たちの等身大の設定を考えてやった方がいい。強盗も、怯える店員もどうしたって無理がある。

偽名「左遷される先輩」
またまたサラリーマンコント。左遷される先輩を励まそうとする後輩の前にエロ本が落ちている。小道具のエロ本が「FLASH」だったのは何か意図があったのだろうか。「FLASH」にエロ本のイメージが無いので、例えば乗ってるグラビアアイドルが凄く好き、とか何かしら条件を貸さないとすんなり入ってこないのではないだろうか。クローズアップおっぱいなどのいいフレーズもあったんだけども。あと、わざわざウガンダ支社にしたのは何故なのだろう。ボケだとするとそこまで飛んでいないので「ふーん」で終わるような気がする。

法応理電「合唱」
謎の歌を歌う生徒と指揮者の先生のコント。歌のオリジナリティが良い。ツッコミの「じゃあ民謡じゃ無いよ!根付いてないから!」も良い。
恐らく最初の「国歌だから!卒業式の練習だから!」できちんとウケたかったのだろうが、上手くいかなかった。フリが逆でも良かったんじゃないか。先生「今から君が代を歌いましょう」で生徒が歌う、のようにすれば伝わりやすかったのかもしれない。テンポももう少し詰められる部分もあった。
「待って待って、今のところなんて言ってるの?もう一回言って、サンハイ」
「♪板東英二の〜」
については間延びしてしまったので「もう一回言って、サンハイ」は無くても伝わると思う。


アホロートル「キャッチボール」合格
コーチが投げたボールを子供が捕球すると何故か・・・。世界観はブッ飛んでいるが、丁寧に過程を描く事で違和感なく入り込める。これは凄く上手い。何故グローブからアレが出てくるのか?の答えは出さないのだが、
ボールをキャッチしたと思ったら◯◯◯◯◯
→ボールをグローブに入れると◯◯◯◯◯に変化する
→野球帽を後ろにかぶると△△△△△△が出てくる
→△△△△△△を入れると◇◇◇◇◇◇に変わる
→◇◇◇◇◇◇により、コーチが豹変
と、最初の疑問よりも、もっともっと興味深い流れを用意しているから引き込まれるのだ。子供の喋り方もなんとも間抜けで良い。自分たちの事を良くわかっている。展開に言う事はないが、1つ口を出すならコーチはもっとコーチっぽい髪型にするべきだ。帽子をかぶるでも良い。最初は金髪が目立たない状態にした方が見やすいと思う。名古屋では顔見知りのお客もいるだろうからすんなり見てもらえるが、この後は知名度0の舞台に行くので、前半は子供にフォーカスが当たるようにした方が良い。後半は金髪が出てきても良いと思うが。後半のコーチはもっと狂ってしまってもいい。まだ平熱な感じがある。今回の予選で最も2回戦合格の可能性があるのはこのコンビなのでぜひ妥協せずにネタを練り込んで頑張って欲しい。

トラッシュスター「ヒーローショー」
ヒーローが緊張のあまりガチガチになるのをヒーローショーのお兄さんが必死にフォローする。お兄さんのマンパワーで盛り上げていたと思うが惜しくも落選。このコンビは近年、このヒーローネタでお馴染みなのだが今回の設定は演者と観客側のギャップがあったのではないか。素直にヒーローがキレ良く動き回るのが見たいと思う観客と、ヒーローネタを量産して少し亜流のネタをやりたくなる演者。双方のニーズが合致していなかったように思う。この辺りはキャラクターものをやるうえで避けては通れないのだろう。難しい部分だ。



【全体を通して感じた事】
・変なヤツが出てきて変な事をやるコントは、相当に変なヤツじゃないと評価されにくい。
・音響を使ったコントが軒並み落選していた。音響で大きな笑いを取らないと評価されない。
・今池ガスホールは広い会場なので、何を言っているのか聞き取れない時がかなり多かった。全てがはっきり聞き取れたコンビは数組だった。
・東京03の影響かサラリーマンコントが多かった。
・毎年数組はいる「名古屋予選はチョロいだろう」と踏んでやってくる遠征組。今回はプリズムシャワーが発見出来たのでどんどん来て欲しい。あとキングオブコント1回戦はどこも厳しいので、そんなに名古屋もチョロくない。
・M-1比べると明らかに参加組数が少ない。平日開催なので仕方ないのか。というかキングオブコントは頑なに平日開催にこだわる。
・全体的なアベレージは相当高い。昔なら目も当てられない下ネタをやるコンビも居たが。


以上ですあくまで個人的な意見です。参考になればと思います。どちらかといえば出演芸人さんに向けて書いているので。また思い出したら追記するかもしれません、

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