「いつかの世界。君と私」(HIKARI「感情材料」より)
はじめに
HIKARIさんのインスタに「感情材料」というハイライトがあって、そこに散文が掲載されています。
短いゆえにいろいろな解釈が出来て、想像するのがとても面白いです。
いろいろ想像しているうちに、HIKARIさんの散文をもとに、少し物語をふくらませてみたくなりました。
HIKARIさんの意図や皆さんの世界観とは違うかもしれませんが、こういう見方もあると読み流していただければ幸いです。
拙文ご容赦ください。
※ 8/6現在、4つの散文が載っています。もっと、投稿してくれないかな。(ライスボールの活動とは関係なく、個人的趣味だそうです。)
HIKARIさんの散文
著作権の関係で、引用せず、リンクを貼っておきます。
「いつかの世界。君と私」
ある晴れた初夏の休日。
天然の芝生が広がる海岸の丘は、たくさんの人でにぎわっていた。
風景を写真に収める人、駆けっこをする子どもたち、肩を寄せ合う恋人たち、みんな思い思いに綺麗な世界に溶け込んでいる。
そんな楽し気な人たちを避けるように、私たちは少し離れた場所に腰を下ろした。
私たちは、世間的には好ましくない関係だ。
(それは、私もわかっている。)
もともと、私が一方的に君への想いを募らせたのだ。
いろいろ言ってくれる人もいたけど、そんなことよりも、ただ君と一緒にいたかった。
君はどう思っているのか、ずっと何も言ってくれない。
どこかへ出かけるのも、誘うのはいつも私の方だ。
だから、君から海に行こうと言われたときは、嬉しかったけど、ちょっと不安でもあった。
「海と空、青くて綺麗だね。」
君は海の彼方を見ながら、そうつぶやいた。
「緑がたくさんで綺麗だね。」
「この世界って綺麗だね。」
私の言葉を待たずに、君はまたひとりごとのように。
戸惑う私に、君の言葉は不意に放たれた。
「僕等とは正反対だ、」
不安が的中した。
私は言葉が出なかった。
ただ、できるだけ長く君と一緒にいたかった。
私には、君の「言葉」は、早すぎた。
私は何と言えばいいのだろう。
「そうだね」と言えば、私の気持ちが嘘になる。
「なんで」と言えば、君を困らせる。
いっそ、このまま言葉が出なければいい。
私は、君の横顔だけを、ただ、見つめていた。
この時間が、永遠であればいい。
「でもね、」
君は私の方を向いて、少し微笑みながら言葉をつないだ。
「こうして君に伝えることが出来て、僕は嬉しかったよ。」
嗚呼、私は君のこと、君の言葉、一生忘れない。
君は私の手を取って立ち上がった。
そして、ほかの恋人たちと同じように、ふたりで、芝生の上を長いこと、いろんなことを話しながら歩いた。
「ばぁば、うみとそら、たくさんのみどり、すごくきれいだね」。
言い終わらないうちに駆け出していく幼い後ろ姿を、微笑みながら私は見ている。
あの日と何も変わらない景色。
(私たちとは正反対だね)
あなたがいないこの世界は、きょうも綺麗であふれている。
あとがき(解説みたいなもの)
HIKARIさんの文中の
「嗚呼、私は君のこと、君の言葉、一生忘れない。」
これをどう解釈するかが難しかったです。
君は、「僕等は、(綺麗とは)正反対だ」と言い、そしてそれを「君に伝えることが出来て、僕は嬉しかったよ。」と言います。
普通に考えれば、ネガティブな感情、それも相手を傷つけるであろう感情を伝えておいて、「嬉しい」はないと思います。
そうすると、「君のこと、君の言葉、一生忘れない。」という私の感情は、「私に酷いことを言って、二人の関係を終わらせた。そんな酷い君を私は一生許さない」ということなのでしょうか。
また、「僕等とは正反対だ」を文字どおり「僕等は世間的に良くない関係だ」と解釈すると、「世間的に良くない関係を続けても、最終的に「私」を傷つけることになる」だから「君が傷つく前に別れを切り出せてよかったよ。嬉しいよ」という意味とも考えられます。
しかし、「君が傷つかなくてよかった」というのは欺瞞の匂いがします。
本当は「君を傷つくのを見ずに済んでほっとした」あるいは「君が傷つくのを僕のせいにされるのがいやだった」
つまりは安堵感であって、嬉しいとは違う気がします。
私も当然そのことに気づいて、共感することはないでしょう。
(もっと意地悪に解釈すれば、「自分の評判が悪くなる前に、どうにかして別れよう」という気持ちかもしれません。でも、そこまで悪い人じゃないと信じたい。)
そういう解釈もあると思いますが、筆者は「君が嬉しいと感じたことに私も共感した」と解釈しました。
(解釈というより筆者の勝手な願望ですが、)
嬉しい気持ちには、何か前向きな要素が入っていてほしいのです。
「僕等とは正反対だ、」の筆者なりになぞ解きしてみると、海と空は確かに青くて綺麗ですが、暗雲が立ち込め、強風が吹きつけ、荒れ狂うときもあります。
たくさんの緑も、人に害をなす虫がいたり、季節が変われば枯れたりすることもあります。
陽と陰、清と濁、正と邪…、あらゆるもの(こと)に二面性があります。
綺麗なものにも影があるとすれば、「僕等とは正反対だ」という言葉の意味は「僕等は、世間的には好ましくないように見えても、実は純粋なんだ」ということになると思います。
「君に伝えることが出来て、僕は嬉しかったよ。」ということは、これまで、君は私に何かを伝えることがなかった、あるいは、本音で話すことがなかったということでしょう。
そして、初めて伝えた本心が
「僕等は純粋だ。(だから、周囲のことは気にせず二人で生きていこう)」
だった。
私はそのことに気づいて、嬉しくなったのではないでしょうか。
さて、二人はその後、結ばれたのか別れたのか。
どちらとも取れるように書いたつもりです。
読んだ方のご想像にお任せします。
おわり
(あとがきが本編より長くなってしまいました🙇)
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