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金魚と子供、子供とアクアリウム

3月3日は金魚の日。1990年に現在の観賞魚事業振興組合が制定しました。江戸時代、ひな祭りに金魚も一緒に飾ったことからこの日が選ばれたそう。
桜の季節には少し早いですが、観賞魚業界にとってはシーズンINのタイミングでもあります。
コロナ禍の影響がなければ、全国のお祭りでの金魚すくいを通して、子供たちが金魚と出会っていたと思いますが、残念ながら金魚すくいの機会は減りつつあります。
今日は、金魚と子供、子供とアクアリウム、というタイトルで少し書いてみたいと思います。

小学生の数と金魚飼育率

ペットフード協会が発表している各ペット生体の飼育率調査では、1990年代後半、金魚は日本人の約9%が飼育しているペットでした。現在の犬、猫の飼育率が10%前後ですので、となりの家や友達、親戚でも金魚を飼っている家庭があった、というレベルではないでしょうか。
2022年末に発表された金魚の飼育率は2.2%。日本の人口減の影響もありますが、飼育率は約1/4まで落ち込みました。
小学生の児童数は1998年に約770万人から2022年は610万人(※学校基本調査)。児童数をグラフ化すると、金魚の飼育率の減少のグラフと波型がほぼ一致します。
金魚すくいから小学生が魚飼育をスタートする、小学生の減少とコロナ禍のお祭りがなくなった影響が、現在の金魚飼育率の結果として出ているようにも思えます。

日本の歴史、文化をどう残していくか


金魚が日本に渡ってきたのは室町時代と言われています。美しい姿は人々を惹きつけ、現在に至るまで金魚飼育は日本に根付いています。
一方で水槽で飼育をする魚は金魚だけでなく、熱帯魚や最近ではメダカも人気です。金魚から魚飼育を始めた子供も、熱帯魚に興味を持ってアクアリストの第一歩を歩みだしたり、改良された美しいメダカに惹かれて魚飼育を始める人も増えたと思います。

その中で、金魚飼育を楽しむ人をもっともっと増やすにはどうすればいいか。
それはやはり原点に戻って「美しい金魚」「慣れる金魚」を、自ら飼育したい、と思えるような魅力、情報の発信が必要ではないかと考えています。
金魚すくいは確かに金魚との出会いの機会ですが、金魚が好きで金魚すくいをする子供よりも、ゲーム感覚で楽しんだ結果の金魚飼育、というケースもあるかもしれません。

『自分の意志で”金魚”を飼育してみたい』
そう思ってもらうために、私たちは飼育用品の開発はもちろんですが、それ以上に『金魚の魅力』を発信していきたい、と思っています。

もっと多くの人にアクアリウムを楽しんでもらうために

どんな業界でも、子供と女性がマーケットにいることはとても重要と言われます。10歳の子供が楽しんだ経験を、20年後の30歳になって自分が、もしくは子供に再び経験させる。その繰り返しでブランドや市場、業界を維持、発展させていく。
金魚飼育を金魚すくいから始めた子供が親御さんに水槽を買ってもらう。もしかすると金魚がいなくなってしまって、残った水槽に「もっと違う魚を泳がせたい」と熱帯魚飼育を始める、そしてアクアリウム、という世界を知る。そんな経験をした人もいるかもしれません。

それだけ、最初のきっかけは大切ですし、反対に創りだすことのは難しいもの。
魚飼育は子供が小さな命の大切さや儚さ、愛おしさを知る機会にもなったり、なにか問題が起きたときの「なぜ?なぜ?…」という、探求の心をはぐくむことにもつながるはず。
金魚の魅力とともに、今まで目を向けられていなかった、生きものと暮らすことの価値、そんなものまで、私たちから発信できれば、と思っています。