爪を噛んでいた話

物心ついた時から、私には爪を噛むクセがありました。幼少期は体が柔らかいことが奏して足の爪も噛んでいました。恐ろしいですね…。

爪を噛むのは決まって人の目がない時、一人の時。爪の白い部分があればすぐに噛んでしまいます。そのまま噛み砕いて飲み込んでたからすごい。「爪噛むの止めなさい」と親に言われたことはありますが、目がある以上親の前でも噛まなくなったので、さほど深刻に考えていなかったんだと思います。

爪の白い部分がない。中学の風紀チェックには引っかからないというメリット以外は恩恵を受けることはありません。むしろ風邪はひくわ変な味はするわで嫌な覚えしかありません。でも確実に爪を噛まないと保てないメンタルがあったんだと思います。無意識に、何を考える間でもなく、気づけば指を口に持って行っている。歯で噛み砕いている。大人になるまで爪切りとは無縁の生活でした。

中学、高校と、可愛くて綺麗に着飾る女子生徒の手元はそれは美しいです。指が長く見えるような、曲線を描く素敵な爪のフォルム。片や自分の爪は歯で砕いてますからガタガタです。「爪が割れちゃった」と言われれば(爪って割れるんだ…)という頓珍漢な感想。なんとか爪噛みのクセをやめたくて、透明なネイルを塗って自分に言い聞かせます。「あなたはマニキュアを塗られた爪を食べるのですか?」と。気づいたら食べてました。効き目は全くありません。

20歳を過ぎても、30歳を過ぎても、私の爪はThe女性とは無縁。諦めかけていた頃、その時はやってきました。コロナです。指先を口に運ぼうものなら即ウィルスが体に入る。その恐怖が私の爪噛みのクセを無くしました。え、あんなに色々やってもダメだったのに…。マニキュアさえ食べてたのに…。

今ではちょっと高いマニキュアを塗ってセルフネイルを楽しんでいます。稀にネイルサロンでポリッシュをお願いしています。綺麗に整えられて色が乗せられた自爪を見る度に気分が上がります。「爪の形、キレイだね!」と友達にも褒められて嬉しいです。でもつい数年前までは、歯が爪切りだったんですけどね。

30余年続いたクセでも無くなることってあるんだな、としみじみ思います。

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