見出し画像

住宅街に密やかに仁王立つ、知られざる驚愕。


「居酒屋 かみがしま」2021年4月29日(木)

札幌という街は、東京よりもある種一極集中していて、
北海道のGDPの大半を占め、しかも街の構造も札幌駅、大通公園、すすきのという地下鉄3駅に連なるエリアにビジネスもショッピングも飲食店も集中している。
さらには再開発ラッシュによって新しいビルやホテル、タワーマンションが次々と乱立し続け、
現代風の都市設計で言うなれば、コンパクトシティと定義づけられるのだろう。
しかし、コロナの台頭はそのワンストップ型都市設計を否定し分散へと促す。
我々は足元だけの機能性と利便性だけを享受することを否定されたのだ。

札幌の郊外に目を向ける。
平岸というエリア、そこは札幌都心に寄り添うような住宅エリアながら、
地下鉄による都心部へのアクセスも快適で、それなりの飲食店やショッピング施設を有する。
数年前にとある賃貸不動産による爆発事故で一時的に全国ニュースにもなったことが懐かしくさえ感じる。
そのエリアで、我が友が最近出会ったという店に誘われた。
無造作にビールケースや段ボールが置かれた外観は、雑多な居酒屋というほかなかった。
17時の予約時間通りに店の中に入ってゆく。
カウンター席とテーブル席、そして奥には座敷席を有する昔ながらの店以外に印象はない。
ところが、其処此処に予約席の札が置かれ、追随するように予約客が雪崩打って入ってくる。
瓶ビールを飲みながら、壁面のメニューと料金を眺めると、有り得ないばかりの料金が並んでいた。
圧巻の時代錯誤というべきか、デフレーションの余韻というべきか?
すべてが驚愕的な料金でありながら、味わいもまた格段の質でもあるのだ。
愛想なく駆け回るスタッフは機械的なのだが、ほぼ満席状況下で注文をこなすには、
そうならざるを得ないのだろう。
おひたし、揚げ物、肉系、魚系、そして鍋までもが良心を超えた低料金で上質をもたらす。
瓶ビールを3本開け、芋焼酎をボトルで注文し、それすら空にしてしまった。
充足とともに料金を確認した。
札幌都心部では絶対的に不可能な2名分の合計料金を知ると、あらためて驚愕を受け入れた。

“自分自身が無知であることを知っている人間は、自分自身が無知であることを知らない人間より賢い。”
かのギリシャ哲学の賢人ソクラテスの格言は、食事をする上でも極上の響きを奏でる。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?