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人影と覇気を喪失したすすきのの真ん中で。

「みよしの日劇店」2020年12月13日(日)

それは穏やかというより、不気味だ。
12月の雪の少なさもさることながら、深刻的に人が疎らだ。
戦闘地域に行ったことはないが、おそらく地雷でも埋まっている地を避けていると言われても仕方あるまい。

この日も朝食と昼食と晩食を兼ねた放浪が始まる。
けれど、年末を吹き抜ける寒さがそれを阻む。
手っ取り早く済ます、という手法が頭をかすめた。
札幌の新たなB級グルメとして名高い看板に屈するように店内を覗いた。
すすきのの中心のかなり手狭な店内。
そこに兆すリスクはもちろんあるだろう。
だが、おそらくすすきのは最も密ではない。
入ると、元気を失った高齢の女性スタッフがビニール袋で包まれたスプーンとキャベツの漬物をカウンターに据えた。
この店の定番は、言わずもがな餃子カレーだが、究極に近い空腹が「得みよしの盛カレー」を導いた。
元気を失ったスタッフに注文を告げる。
さほど待つことなくそれは徐に訪れた。
大盛のライスに6つの焼け焦げた餃子がルーとの分断役を務めている。
温玉を投じてルーとの融和を図り、福神漬けも添え、餃子とともにライスを頬張った。
カレーは少し甘くて熱もなく、餃子の焼き過ぎも否めない。
酒を飲んだ勢いで締める餃子カレーの印象の強させいか、記憶と現実の齟齬が差し迫る。
餃子もまた熱を欠く。
焦げ目が強いのに作り置きしたのような冷淡さは、新B級グルメの名を低めてしまうのではなかろうか?
何よりも、覇気のない沈鬱とした空気感が漂ったままだ。
せめて、この空気感を打破すべく、しっかりと完食して会計を済ませる際に「ごちそうさまでした」と声を張り、旺然として店を後にした…

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