ガーナ人 生活保護申請 腎臓専門医の視点で思う事
はじめに
最近ネットニュースを眺めていたら、こんなニュースが目に入ってきました。
詳細はリンク先を読んでいただきたいのですが、簡単にまとめると2015年に来日し、定職にはつかずアルバイトで生計を立てていた?ガーナ人の若い男性が2018年に透析導入となった。
そのガーナ人男性が、理由は不明ですが労働ができないために生活保護の申請を求めたものの、却下されたため裁判を起こしたというニュースです。もちろん申請は却下されています。このガーナ人男性は控訴を検討しているようですが。。
判決は妥当だと思いますが、今回お話ししたいのは、このニュースを通じて、ネットニュースがいかに情報が不正確で誘導的な記事を書いているかということです。その根拠を腎臓専門医としての視点も含めてお話しします。
※できるだけ専門用語や医者しかわからない話は避けようと思いますが、腎不全について一般の方にわかりやすく説明することが趣旨ではないので、その辺はご了承ください。また、多くの部分で私の根拠のない想像を含みます。
このガーナ人男性は悪人なのか?
記事を読んでいて、2点ほど気になる点がありました。
透析導入に至った原疾患は何であったのか?
このガーナ人男性は日本で透析や生活保護を受けるために来日したのか?
これらが記事を読む限りでは、わからないのです。一つ一つ考えていきましょう。
透析に至った原疾患について
透析を行うという事は、言い換えると腎臓の機能が退廃してしまっているということです。退廃してしまう原因は当然一つではなく、複数あります。日本の透析導入原疾患は1位が糖尿病性腎症、2位慢性糸球体腎炎、3位腎硬化症となっています。
現在33歳という事は、29歳で透析導入となったという事です。これは透析導入の年齢としてはかなり若いです。もちろんこの年齢でも糖尿病性腎症で導入となることはないとは言えません。10代のころから糖尿病で、コントロールが悪ければ十分にありうる経過です。
しかしながら、可能性としては高いとは言えないと思います。むしろIgA腎症などの慢性糸球体腎炎が未治療であったとか、全身性エリテマトーデスなどの膠原病、もしくは黒人という事を考慮すると高血圧緊急症などの非常に急激な腎機能低下を認める疾患がベースにあったのではないかと考えます。
有名な話として、黒人はACE阻害薬やアンジオテンシン受容体拮抗薬 (ARB)といった、腎臓を保護する薬の効果が他の人種と比べると明らかに悪いというものがあります。黒人というだけで他の人種と比較して慢性腎臓病のリスクが高いのです。
本当に日本の医療目当てだったの?
仮に来日した目的が医療目当てだったとしましょう。そうするとこのガーナ人の行動はかなりお粗末と言わざるを得ません。2015年から透析導入に至る2018年までに何故なにもアクションを起こしていないのか?3年もあったのに。
今現在、支援団体に頼っているところを見ると、そういうことをする能力はあったのでしょう。それであれば、なぜ2015年から永住権を得るなどの行動に出なかったのか?
私には2018年の透析導入が本人の予期しないものであったように思えるのです。
明らかに誘導している記事
冒頭の記事から引用させていただきましたが、これではまるでこのガーナ人が糖尿病性腎症をもともと患っていて、日本で透析を受けるために来日したと思ってしまうでしょう。
しかしながら、このニュースもそうですし、他のニュースを見ても原疾患が糖尿病性腎症であると確定できるようなものはなさそうです。もちろん、来日が透析を受けるためであったかどうかもわからないのです。
繰り返しになりますが、外国人に対する生活保護を与えることは私も反対です。そんな余裕が今の日本にあるとは到底思えません。しかしながら、一方的にこのガーナ人が悪いとする記事の論調については賛同しかねます。
さいごに
自分が医者でなかったら、何の疑問もなくこの記事を読み、とんでもない外人だ!とっとと国に帰れ!と思っていたでしょう。実際そのようなコメントばかりが目立ちました。
自分は陰謀論とか大嫌いですが、今後はネットニュースは半信半疑で読んでいこうと思いました。
というか、ガーナ大使館は何をしているのでしょうか?ガーナ大使館がきちんと対応すればこんな大きな問題にはならないと思うのですがね。。続報を待ちたいと思います。
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