見出し画像

【GERAラジオ「ボケ学」書き起こし #4配信分】「それ、全部出てないんですけどね」を検証してみた

このnoteの楽しみ方

本記事はお笑いラジオアプリGERAで配信中の特別番組「ボケ学」の内容を書き起こしたものです。
「もう少し手軽に「ボケ学」を楽しみたい!」「分からなかった部分をじっくり確認したい!」「知り合いに布教したい!」など、皆さんのスタイルに合わせてお楽しみください。

▼過去の書き起こしはこちらから

オープニングトーク

高木:
どうも、お笑いコンビストレッチーズの高木です。
福島:
お笑いコンビストレッチーズの福島です。
高木:
よろしくお願いします。

高木:
この番組は、ツッコミで訂正されてしまうボケが、本当に間違った発言であるのかを専門家の力をお借りして真面目に検証する番組でございます。第4回でございますけれども。
福島:
4回目ですね。なんか結構、好評も好評で。
高木:
そうですね。
福島:
なんか、刺さってる人には刺さってるなっていうのをTwitterとか検索すると感じますね。
高木:
刺さる人には刺さるんだろうなという予想のもと収録していて、刺さる人には刺さった感じですよね。
福島:
そりゃそうだよな。刺さる人には刺さるんだもんな。
高木:
ほんと、僕らも楽しいですよね。
福島:
僕らがGERAでやってる「プリ右でごめん」よりも僕はこっちの方が楽しいし、好きです。
高木:
プリ右でごめんを廃業して、ボケ学専用のパーソナリティなっていこうという。
福島:
「ボケ学でごめん」にしようかなと。今日も楽しみですね。
高木:
どういう番組か少しややこしいので詳しく説明しますと、《ボケを辞書でひくと「間の抜けた態度や発言を指していたが、今ではそれを意識的にすることを指す」つまり、ボケは間違っていなければならない。しかし、一般人から見て間違っていても、専門家から見たら間違っていない可能性があるはず。そのボケは本当にボケと言えるのかを真面目に検証していきます》
福島:
まあ4回この説明してるじゃないですか。
高木:
はい。
福島:
…慣れない。...野暮。
高木:
やっぱりね、毎回言ってるんですけども、何が一番慣れないって、「それを意識的にすることを指す」の部分ですね。
福島:
「意識的」ね。
高木:
ボケを意識的にしているというのを、自ら宣言しないといけないという恥ずかしさ。
福島:
全部アドリブでやってるからな。
高木:
ほんとそうですよ。
福島:
意識は全くしてない。
高木:
お笑い芸人は、台本なんか...、な?
福島:
生きてるだけだもんな。
高木:
ふざけてるだけだよ。別になんもしてないですよ。
ということで今回もやっていきましょう。


テーマ発表

高木:
今回のテーマとなるボケはこちらでございます。
福島:
それ、全部出てないんですけどね。
高木:
これもいきますか。
福島:
これは僕ら毎回やらせてもらってます。
高木:
いや、違うのよ。僕らとかはできないボケなんですよ。
福島:
え?よくなんかさ、「IPPONグランプリで見たことある人〜?」とかでさ、「出てないんですよ、実はそれ!」みたいな。
高木:
これ、知らない人がもしかしたらいるかもしれないので軽く説明させていただきたいんですけど、営業とかでテレビで売れてる方が出てきて、「僕たちのこと知ってるよ〜って方!」って言ったらブワッて手が上がるじゃないですか。で、「ありがとうございます!こんなたくさんの方に知っていただいて!じゃあその中で、エンタの神様で見たことあるよって人!」で、ちょっと手上がったりして。「じゃあ、ネタパレで見たことあるよって人!」で、手上がって、「それ全部出てないんですけどね。あっはっは。」みたいな。
福島:
うん。
高木:
なんだけど俺らは、「俺らのこと見たことある人!」でゼロだから。これ出来ないのよ。
福島:
全部出てないし、全部出てなさそうすぎる。でも、アイデンティティさんとかが一緒に事務所で、(営業に)ついて行った時にやられてたりしてたね。
高木:
そうですね。
福島:
「出てないんですよ。」「ぶっ◯すぞ!」ってやつだね。
高木:
そうそうそう。これ、本当にいろんな人が営業でやってます。ちょっと説明させていただきますと、《学園祭や商業施設でのイベントなど“営業”と呼ばれる仕事において自己紹介の際に言われることが多い。「我々のこと知ってる人いますか〜?」など自らの認知度を客に尋ねたのち、「じゃあ〇〇で見たことあるって人?」など有名な番組名を羅列。その後「それ、全部出てないんですけどね」と否定する裏切りボケ。》嫌だなぁ...。怒られるぞ、今までこれ使ってきた先輩たちに...。《また、客の勘違いを利用し「今手を上げた人たちは嘘つきですね」という客いじりに発展することも》パチンコみたいに言うなよ。なんだ「発展」って。ということで今回は、《お客さんの勘違いを誘導するような発言と言えるのであればボケ成立。芸人さん側が意図的にお客さんを貶めているため。》貶めてるって言うなよ。
福島:
そんなつもりは全くないけど...。でもこれはボケ成立っぽいけどね。僕らはあれですけど、ちゃんと番組そこそこ出ている方だったら誘導できてそうだしな。
高木:
毎回手は上がるもんね。あのボケって。
福島:
うん、ウケてるよ。
高木:
でも、勘違いを誘導する発言ではない。もしくはお客さん自身の問題で勘違いしている場合は、僕らが意図的にやってるわけではないので、ボケ不成立。というルールで今回やろうかなと思っております。早速呼びましょう。今回のゲストは、東京大学 定量生命科学研究所 准教授、脳神経科学者の奥山輝大さんです。よろしくお願いします!
奥山:
よろしくお願いします。
高木:
あ...、脳神経科学の方なんですね...。
奥山:
そうですね...(笑)
福島:
これって脳神経なんだ。
高木:
え、このボケって、ジャンル「脳神経」なんですか!?...でもまあ、そうか。
奥山:
そうですね。どういう脳の働きで面白いと思ったりとか、つまらないと思ったりというところですね。
高木:
このボケだけじゃなくて、お笑いって絶対脳神経科学ではあるか。
福島:
そうね。体で感じるとかではなく、やっぱり頭で考えるもの。
高木:
だから、今日下手したらこのボケが終わるとかではなくて、お笑いという文化が終わる可能性がある。脳神経科学とか言われちゃうと。
福島:
お笑い不成立。
高木:
今回は「それ、全部出てないんですけどね」というボケを解説していただくので。今回のテーマについて解説いただいてもよろしいでしょうか。


「過誤記憶」を植え付ける

奥山:
よろしくお願いします。僕はもう初めから、これはボケとして成立してるんじゃないかなと思うんですけれども、
高木:
うお!
福島:
マジっすか!?
高木:
びっくりした。こんな早く結論が出ることが...。
奥山:
なぜかというと、例えば「あらびき団に出てる」とか、そういうふうな番組に出てるというのが視覚的にイメージしやすいわけですよね。イメージしやすいことによって、頭の中になんとなくそういうふうな経験があるんじゃないか、というような、これ「過誤記憶」というですけれども、「過誤記憶」というのを頭の中に作って、それがベースになった上で、お客さんとしては信じちゃってるわけですよね。
高木:
「あらびき団で見たことあるな、私」みたいなことですよね。
奥山:
そうですね。だから先ほどおっしゃっていただいたのは半分冗談で半分本当だと思うんですけど、普段から全くそういうところに出る方でなかった場合には、お客さんは聞いたとしてもその情景を思い浮かべられないわけですよね。
高木:
そうですね。
奥山:
そうなると「過誤記憶」、偽の記憶が成立しないから、そういう時にはボケとして成立していないわけですよ。
高木:
だから、僕らの時は...
奥山:
いやいや...。それは違います(笑)
福島:
「カゴキオク」というのは、どういう...。えっと、箱の「籠」?
奥山:
いや、「偽」ですね。
高木:
「過ぎる」に「誤る」で「過誤」。
福島:
ああ、過ぎる誤りか。なるほど。
高木:
そうですよ。バスケットの方じゃないですよ。ミニモニの方でもないです。
福島:
「加護ちゃん」でもない。
高木:
あ、過誤記憶っていうのから...。じゃああれなんですね。偽の記憶を作ってたんですね。
奥山:
そうです。
福島:
なるほど...。
高木:
確かに言われりゃそうだけど...。


偽の記憶は簡単に作れる

奥山:
で、心理学的には偽の記憶って作りやすい、方法をきちんと則っておけば作りやすいってことがわかっていて、すごく有名なのが「ショッピングモールの迷子実験」というのがあるんですけど。「昔ショッピングモールで迷ったよね」ということを家族が話し始めて、「あの日すごい雨の日だったよね」とか「みんなでお店の中探しまくったよ」というようなことをずっと喋ってると、大抵そのことが徐々に頭の中で真実になってきちゃって、本当は全然ないエピソードなんですよ。全くないエピソードなんですけど、それを聞いている方の人っていうのは「本当にあの時怖かったよ」とか自分からそういうふうな体験をしゃべり始めたりとか。頭の中でどんどんその記憶を反芻することによって、自分の中で本当に思っていってしまうというのが「過誤記憶」というもので。これはもう心理学ではメジャーな実験のうちの一つですね。
福島:
えぇ...。
高木:
ショッピングモールに全然行ったことないのに...?
奥山:
行ったことなかったとしても。
高木:
えぇ...!?
福島:
こうやって嘘ついていって、意識的に過誤記憶を作ることができるんだ。
奥山:
そうですそうです。
福島:
俺ら5年前アメトーーク!出た時とかさ、すごい楽しかったけど...。
高木:
いやぁ、楽しかったねぇ。まだ宮迫さんがいらっしゃる時だったよね。
福島:
まだいらっしゃったし、IPPONグランプリとかもな...。
高木:
いや、無理無理!
奥山:
2人の間で作りあってる(笑)
福島:
でも、みたいなことをやっていけば俺らは「売れている」と過誤記憶できる。
高木:
でも、みたいなことってことですよね?
奥山:
そうですね。これ、詐欺のテクニックでも使われがちなんですけど、
福島:
詐欺のテクニック...?
奥山:
本当のこと3つのうちに1つ嘘のことを交えて話していると、相手は徐々にそれを本当だと思っていくというテクニックがあります。
高木:
うーわ、こわっ!!
福島:
こえぇ...。
高木:
じゃあ4分の3本当で、「タン・タン・タン・ウン」のところで嘘つけば、割と嘘の部分も信じちゃうんだ。
奥山:
そうですね。それで信じていって、本当にそういうことがあったかのように、頭の中でリフレインして、記憶がどんどん作られていくんですね。偽の記憶が。それで、本人は記憶を作っちゃってるから、本当のことを信じちゃうんですよ。さっきの「ショッピングモールの迷子実験」でも、終わった後に「これ実は実験で嘘だったんですよ。そんなことはないんです。」って言っても、一部の被験者の方は「いやいや、自分は本当に迷ったから!」というふうに主張して、完全に信じ込んで、怒り出す人もいるっている実験なんですけど。
高木:
(笑)
福島:
恐ろしい実験だな...。
高木:
じゃあ人間はもうそういうものなんですね。
奥山:
そうなんです。そういうものです。
福島:
でもさ、ちょっと違うかもしれないけど、例えば俺らエピソードとか話す時に、過去のエピソードを割と嘘で、デフォルメしてウケるようにしたりするじゃん。
高木:
まあ、ちょっと盛ったりすることはあるな。
福島:
なんか、初恋の話とかをウケるようにしたら、どんどんいろんなこと増えていって、みたいな。そういうのをいろいろ繰り返していって、俺結構わかんなくなってきちゃって。
高木:
あ、ちょっとわかるそれ。
福島:
本当は初恋ってもうちょっと普通だったんじゃないかとか。なんか、全然キスとかしてないんじゃないかみたいな。
高木:
めちゃくちゃ過誤記憶。それ、自分でやってるやつ。
福島:
自分でやってるよな。
高木:
自分で喋って自分で勘違いしちゃったやつ。
奥山:
セルフ過誤記憶。
福島:
セルフ過誤記憶!でもそれはそうか。嘘つく人とかたまにあるもんね。どんどん嘘つきになっちゃうっていう。
高木:
「本当だ」って自分で信じちゃうパターンもあるし。
福島:
そうか、これを他人にもできるという...。
高木:
この人間の脳のメカニズムで...。


過誤記憶を植え付けるには〇〇が大事

奥山:
そのさっきのボケのやつもやってると思うんですけど。だから、例えば「あらびき団出てた」とか具体的な名前をどんどん出していくことによって、頭の中に情景が思い浮かぶと思うんですけど、この「ショッピングモールの迷子実験」でも「あの日雨が降ってた」とか、その情景、視覚的な情景を思い浮かべられるワードを何個も入れていくと、より過誤記憶が成立しやすいということもわかっていて。
高木:
…なんか言ってることむっちゃ怖いっすよ!「記憶なんて改ざんできます」ってことだもんね。
福島:
「藤井隆さんがあそこですごい笑ってくれてて」みたいな。どんどんそういうこと言っていけば...。
高木:
え、これってアレ...?「それ、全部出てないんですけどね」のボケってさ、詐欺とか洗脳とかの部類に入ってる...?
福島:
マインドコントロールの...。
奥山:
そうですね、本当に。なので、これは“笑い”だと思うんですけど、“笑い”って本質的には自分が予想できているところからちょっとズレていると笑いになるわけですよね。例えばコントとかでも、お寿司屋さんのコントとかで、わかりやすい、行ったことのある情景が思い浮かびやすいところで、そこからズレた瞬間「面白い」って感じるわけで。それって自分の経験とか記憶とか、エピソードからズレているかどうかという話になるわけです。今回の「それ、全部出てないんですけどね」の場合だと、トークの中で頭の中に記憶というものを先に作ってしまって、その後「それ、全部出てないんですけどね」ってそこからズレるわけですよね。予想からズレる。その瞬間に笑いが生まれるというタイプの笑いなのかなと思います。
高木:
…もうほぼ丸裸ですね。
福島:
え、奥山さんっていくらくらい取ったことあるんですか...?
高木:
詐欺師じゃないから!
奥山:
いやいやいやいや...。
福島:
めちゃめちゃ上手そうじゃない!?
高木:
被害を抑えるための働きをしている人ですから。
福島:
なるほどね。
高木:
逆ですから。違いますよ。ただ、疑わしいところはあるけどね。俺らもなんか騙されているんじゃないかと...。もうすでに奥山さんに過誤記憶を植え付けられているのでは...?
福島:
なんか1個嘘あるかもしれない!
奥山:
この中に(笑)
高木:
なるほど。まあ前提としてもう(ボケとして)成立はしているということですかね。
奥山:
そうですね。だからさっきの例で言うと、情景が想像しづらい場合とか、そういうのはボケ成立しないだろうし、例えばもっと言うと、「その辺道歩いてるんですけど、その辺で見たことあるのかもしれませんね」みたいなフワフワしているエピソードが固まってない場合。そういう場合だと、頭の中に記憶のような形で作られることはないので、ゆるくしか作られないので、そうするとボケとしては成立しないのではないかなと思います。
福島:
じゃあ番組選びも重要になってくるという。
奥山:
そうですね。
高木:
全然その情景が思い浮かばないような番組とかを言われちゃうとわからないってことだよね。だからみんな見たことがあるやつで、「あ、そういえば」っていう。確かにこれどんどん考えていくと、あれで手上げる人ってなんなんだろうって気持ちにちょっとなってくるな。


喋り手、ワードで変わる記憶

奥山:
あとは喋り手の方の話なんですけど、その「ショッピングモールの迷子実験」でも、受け取る側だけじゃなくて、それを言う方、この話で言うと芸人さんの方の力というのもすごく重要で、社交的な性格の人からだと信じやすいという傾向があるらしくって。なので、どういうふうな雰囲気をもって壇上に立っているかによってお客さんの感じ方っていうのも変わってくるのではないかなと。
福島:
なるほど。親しみやすかったり、社交的な人の方が。
高木:
マジで詐欺師みたいな話になってくるな。
福島:
本当にそうだな。
高木:
喋りやすいというか、明るい雰囲気の方が良いし、逆に暗い雰囲気で舞台上に立ってる人だったら信じないのか。
福島:
そうだね。永田さんとかだと...。
高木:
元スパナペンチの?永田敬介さん?
福島:
だと、ちょっと出来ない。
高木:
確かに永田敬介さんに問いかけられたらお客さんビビるな。だから、明るい雰囲気で聞くということも大事。
奥山:
それで言葉巧みに喋る必要があって、その言葉によって情景が変わってくる。記憶を作り替えられるということもわかっていて。模擬実験なんですけど、交通事故が起こった写真を被験者の人にお見せして、「車がぶつかった時、車何キロで走ってましたか?」と聞くのと、「車が衝突した時、車何キロで走ってましたか?」というので、被験者の人が言う速度が変わるって言うデータがあって
高木:
え!?どういうことですか!?
奥山:
つまり、「激しくぶつかる」というような言葉を使っていると、そもそも見たことがない情景でもなのに、頭の中で動いている車の速度が早くなるんです。
福島:
あぁ、そうか...。
奥山:
だから、情景をより想像しやすくして、ビビットな言葉を使うことによって、より頭の中で明確な記憶が作られていくので、詐欺としてはまあ使いやすい...。
高木:
ずっと詐欺として扱ってるんですよ!俺ら別に、お客さんを騙すために...、まあ騙してるか!詐欺師集団じゃないんですよ、俺らって!強めの言葉を言うことによって、過誤記憶を生み出しやすいということもあるんだ。じゃあ、「見たことある人?」じゃない方が良いということですか?
福島:
もっと強い言葉の方が良いってことか。なんだろう...。「ありますよね?!」
高木:
「その目に、そのまなこに入れたことがある人」とか。なんかすごい強く「見た」みたいな。「僕たちで腹が千切れるくらい笑ったことがある人?」とか言った方が良かったりするのかな?
福島:
まあでも、自信満々には言った方が良いんだろうね。
高木:
とりあえず、ボケは成立...ということで良いんですかね?
奥山:
そうですね。
高木:
まあ、こういう人間のメカニズムを利用したボケ。
福島:
過誤記憶だったんだ...。
高木:
だからまあ、詐欺をしている自覚というか...、
福島:
そうだね。一応「騙している」という。
高木:
人を騙して笑いをとっているという自覚を持ってこのボケを使った方が良いと。ボケとしては成立してるっぽいけど。
福島:
けども、だよね。
高木:
もう過誤記憶を作ってるから。良くないよ。過誤記憶なんか作っちゃまずいんだから。


恋愛の一番良いやり方

福島:
これボケだけじゃなくて、お笑いだけじゃなくて、恋愛とかでも。例えば片思いしていて好きになってほしい人とかに、好きにさせるみたいのできるのかな。
高木:
ああ、できると思うよ。
福島:
そうだよね。嘘ついていろいろやったりして、できそうだよね。
高木:
できます...?
奥山:
そうですね...。僕実は記憶の研究する前に恋愛の研究やってたんですよ...。
2人:
(笑)
福島:
マジっすか!?!?
奥山:
どういうふうに“メス”が“オス”を受け入れるかというのの、神経メカニズムを解いたっていうのが僕の博士号の仕事なんです。
高木:
それで博士になったんだ...!
奥山:
どういうふうにやるか、一番すごくわかりやすくていろんな動物にあるのは「単純接触効果」というんですけれど。男性だとしたら、ずっとある女性の目の前に居続ける。接触回数を増やし続けるというのが重要で。
福島:
うわぁ...。
奥山:
ただ重要なのが、一番最初にネガティブな感情を持っていると何回も会っていてもどんどんネガティブに進むっていうのがわかっていて。逆に初めちょっとポジティブになっていると、何回も会うことによってどんどんポジティブに進んでいくということもわかっています。なので、恋愛の一番良いやり方は...、
福島:
え!?一番良いやり方!?
高木:
恋愛の一番良いやり方聞けるんですか、今日!?やば!!
福島:
サラッと今すごいこと言ったぞ!!
高木:
やば!!!
奥山:
少しポジティブな印象を与えた後は、静かにずっと会い続けるというのが...
福島:
静かにずっと会い続ける...!なるほど、まず最初にポジティブにさせれば、もう後は会うだけで良い。
高木:
そこからずっと、そんなに動かなくても、とにかくそばにいれば良いんだ。
福島:
見えてさえいれば。
高木:
じゃあ、少女漫画とかでよく見る「出会いはサイアクっ!」みたいなのはあんまり良くないってことですか?
奥山:
あ、あれはダメです。
福島:
ダメなんだ!!


忘れてしまう記憶と忘れない記憶の違い

福島:
一旦このボケに関しては成立したし、すごくわかりやすくて納得したので...、“脳神経”聴きたいよな。
高木:
これちょっと、《考えられる質問》のところに書いてあるやつで興味があるやつがあるんだけど。《覚えている人物と忘れてしまう人物の差ってなんでしょう?》っていう質問があってさ。俺らコンビでやってる遊びみたいのがあって、本当に一回しか会ったことない人の名前を覚えて、クイズにして出すっていうのをやってるんですよ。
奥山:
へ〜。
高木:
こういう仕事してるとよくあるんですよ。「あの地方のどこかで会った、一回しか会ってない、多分一生会わないであろうな」っていう人。
福島:
それこそ...奥山さん。
高木:
確かに。ごめんなさい、ちょっと言い方悪いですけど...。
奥山:
いえいえ、そうですね(笑)
福島:
可能性はすごくありますよね。もちろんお会いしたいですし、これからトリオになる可能性もありますけど。でもちょっとまあ難しい。それは大学教授だから。まず俺らが大学教授に近づけないから、こういう場じゃないとね。というのもあって多分、ここから3年5年お会いしない可能性があるじゃないですか。そうなった時5年後に、「あのボケ学で『全部出てないんですけどね』の講義をしてくれた人の名前覚えてる?」みたいなので、クイズを出したりするんですよ。
高木:
それで競ってるんですけど、競うときに覚えておきたいんですよ、人の名前。全部覚えておきたいんですよ。それ、なんかコツとかないですか?
奥山:
もう記憶ってすごくわかりやすくて、強い感情と一緒に来てるものっていうのは強く定着するんですね。
福島:
そうか、感情とセットか。
奥山:
なのですごく極論すると、今突然僕が殴ったら絶対僕のこと忘れないと思います。
福島:
ああ!やってもらおう!
奥山:
これは強烈な、酷い例を出してしまいましたけど。例えば今の場合で言ったらすごくネガティブな感情だし。あるいはその人とすごく良い経験があったりとかして、ポジティブな感情だったとしても同じで、感情があるものっていうのは忘れないんです。例えば海外旅行とかでもそうだと思うんですけど、海外に行ってすごく楽しかった場所というのはなかなか忘れない。そこで食べたものとか。なんだけど、その辺の毎日のなんでもない場所で食べたものって忘れたりするという。
高木:
じゃあもう記憶って、長い時間を過ごしているかというよりは、強烈な感情がそこにあるかどうかという方が大事ってことですか?
奥山:
「1回会った人」「1回のエピソード」ということに関しては、間違いなく強い記憶の方が残りやすい。あとは繰り返しを何回もすることによって記憶は定着するので、大した強いエピソードがない相手だとしても、毎日会っていれば覚えてますね。
高木:
そうか、どっちかのパターンか。だから毎回こっちから感情を動かすしかないな。
福島:
けど俺らがやってるのは、逆に忘れているのを思い出すっていうのが楽しかったりするから、逆に奥山さんに殴られたり、100万もらってポジティブな感情になったとしても、だいぶ思い出しちゃうから。
高木:
まあ確かに。そしたら「このゲーム不成立」になっちゃうか。
福島:
でもそうか、感情とセット。強烈だったりすると...。
奥山:
あと別のところで言うと、新しい環境というのはすごく重要で、頭って新しい場所に行くと活性化するというシステムを持っているんですね。なので、先ほど海外旅行の例も出しましたけど、海外旅行に行った時の記憶っていうのは覚えてますよね。新しい環境とか新しい旅行した場所とかは覚えてると思うんです。なので、その新しい環境で会った人というのは覚えやすいんじゃないかなと思います。
福島:
確かに、俺箱根行きすぎて何が何だかわかってないもんね。
高木:
俺ら旅行といえば箱根しか行かないもんな。どいつと行ったかもわかんねえし、どこ行ったかもわかんねえよな。
福島:
そうなんだよな。
高木:
確かに、俺ら月に20回くらい西新宿ナルゲキにいるけど、ナルゲキの記憶なんかもうごちゃごちゃで訳わからなくなってるもんな。
福島:
そうか、活性化するんだ。
奥山:
例えば火星に誰かと行ったら、多分その人のこと二度と忘れないと思いますよ。
福島:
そっか、そろそろ行くか。
高木:
なんだそろそろって。


夢は記憶のピースの寄せ集め

福島:
デジャヴとかってみんなあると思うんですけど、よくある「なんかこれ見たことあるな」とか「なんか過去に経験したことあるな」みたいな。それってなんで起こるんですか?
奥山:
多分2つ理由があって、1つは先ほどから何回も出てる「過誤記憶」だと思うんですよね。誰かに言われることだけではなくて、頭の中でリフレインしたりして、全然違う記憶を作っちゃうというパターンもあると思うし。あと、寝てるときに夢見てると思うんです。これまだ学説がいろいろあるところなんですけど、夢見てるときって、頭の中で前に見た記憶を高速再生しているって考えられていて。なので、今までになかったエピソードというのがカチャカチャ頭の中で繋ぎ合わされて、新しいエピソードになっているというふうに考えてる人もいます。
福島:
えぇ!?
奥山:
“寝ている”というのは頭の中の記憶の定着作業です。なのでそこでどんどん新しい組み合わせとかもできているし。
高木:
え、じゃあ夢って、なんの記憶もないところから生まれるものではないってことですか?
奥山:
多分その、一つ一つの成分は自分の経験の中にあると思います。
高木:
えぇ!?
福島:
じゃあ例えば、真っ白い部屋にずっと住んでいる人が10年15年生きていたら、夢見ないってことなんですかね?
奥山:
ああ、面白いですね。わからないですけど、その可能性もあるかなと思います。
高木:
俺小さい頃、インフルエンザとかかかって高熱を出したときに絶対見る夢があって。
福島:
なんかそういうの聞くよね。
高木:
それが、見たことない宇宙空間みたいなところに投げ出されて、足がつけなくて浮遊し続けるみたいな。ずっと見てたのよ。最近はさすがにないけど。それ何の記憶のピース...?
福島:
だからどっかで行ってるのよ、宇宙。
高木:
行ってるのかな?
奥山:
何か組み合わさってるのかもしれないですね。
福島:
まあアニメで見たりとか。
高木:
ああ、そうなんだ...。ないところからは素材出てこないんだ。じゃあ良い夢見るためには現実でいっぱい素材集めしないといけないってことだ。
奥山:
逆にいうと人間って毎日の生活の中でいろんな経験をしていると思うんですけど、マウスとかを実験室の中で飼ってると、先ほどの「白い部屋の中にいる」というのとほとんど同じ感じで、あまり経験していないわけですよね。そういうふうなマウスの場合だと、その直前にあった記憶というのが、一番彼らにとって大きな記憶でそれが強く再生されたりとかというのもありますね。
福島:
へぇ...。じゃあ夢をみる人はいっぱい経験をしているってことですかね?
奥山:
まだ脳が夢をどうやって生成しているかというのは全然わかっていないんですけど、少なくとも睡眠している最中に睡眠を阻害させると新しいことは覚えられないです。なので、徹夜で勉強してみたいのは瞬間的には覚えられますけど、絶対に(長期的には)覚えられないです。
福島:
それはでも、実は俺ら受験頑張ってきて。
高木:
寝た方が良いっていうのは。寝る直前に英単語とかちょっとやるのが一番良いみたいなね。うわ、そうなんだ。夢もめっちゃ興味あるな。
福島:
もっと夢について聞きたいくらい...。


脳内を可視化する装置はもうできている

高木:
自分の好きな夢見れる装置はいつ頃になりますか...?
奥山:
面白いですよね。なんか、突然頭がおかしい人みたいに思われちゃうかもしれないんですけど、研究者の中で結構人気の本のうちのひとつに『ドラえもん大百科』があって。『ドラえもん大百科』見てると「これはできそうだな」というのと「これはできなさそうだな」というのがやっぱりあるんですよ。
高木:
すげぇ...。
奥山:
それをパラパラ見ていて、夢を自動的に生成するとか、寝てる間に何かやらせるというのはそんなに遠くない未来にできると思います。
2人:
えぇぇ...。
奥山:
その「時空を操る」とか「タイムマシン」よりかは全然こっち側です。
高木:
こっち側!リアル側だ!
福島:
僕今日言おうかなと思っていたのが、夢って結構忘れちゃうじゃないですか。普通に半日経ったら「あれ昨日の夜何見てたっけ?」って。起きた瞬間覚えてるのにだんだん忘れちゃうみたいな。だから夢を見たものを全部ノートに書いて、「こんなことがあって、誰と会って」みたいのをやっていたら、結構夢を見るようになっちゃって。しかも夢の中でも意識が強くあるようになっていって。
奥山:
面白いですね。
福島:
結構小学校の時に、最初は「これ夢かわからないから女の子といても何もしない」というが、だんだん意識が出てきて「これ夢だから、ちょっとイタズラしちゃおうかな」みたいな感じのことができるようになっちゃって。めちゃめちゃ恐ろしくなったんですけど。
高木:
逆になったら大変なことだよな。リアルの時に「夢だからOK」ってなったら。
福島:
これすらも過誤記憶の可能性があるんですけど...。これってあることなんですか?
奥山:
多分、頭の中であり得るエピソードを自分にセルフ過誤記憶させている感じがしますけどね。
福島:
ああ、じゃあそんなことないんだ。
高木:
ない。ないって。過誤記憶!
福島:
これは過誤記憶ですか?こんなことない?
奥山:
出来るというか、そういうふうに頭の中で新しいエピソードをみたいのを自分に作っていっているわけですよね。自分の脳の力で。
福島:
じゃあ、完全に過誤記憶...?
高木:
そのパターンもあるんじゃない?
高木:
その、夢自動で作るやつもそうですけど、ドラえもんでいうと一番実現近そうなやつ何ですか?
奥山:
えっと、のび太くんの頭にポフって付けて「何を考えているのか画像で出す」っていう。
高木:
えっ...!?
奥山:
あれはもうほとんど実現に近い段階にありますね。
福島:
うわぁ...!マジ!?
高木:
ヤッベェ...!マジっすか...!?
奥山:
実際に、確か京大のグループが、頭につけて被験者の人が何の写真を見ているのかというのを、脳の活動から予測することっていうのは出来るようになってます。
2人:
まずいってそれ...。
福島:
離婚増えるって...!
高木:
増える増える...。どうする...?
福島:
やばい、ケンカとかめっちゃ増えるよそれ。
高木:
夫婦もそうだし、イイ感じの男女とかで女の子とかにすげぇ紳士ぶって喋ってても、頭の中で画像出されたら終わりじゃん...!
福島:
俺らも終わるぜ。俺らもネタやってて、俺の画像に「このネタつまんないなぁ」って出てたら...。
高木:
そういうのもあるよね。いや、そういうのがあるんだ。そういうのがもう近い...。
奥山:
近いですね、それは。
高木:
終わりかも。
福島:
終わりだな、それは。180度変わっちゃうよな。え、マジか...。
高木:
ちょっと、いろいろまだ聞きたいんですけど、そろそろこの辺で...。残念だね。
福島:
残念。非常に残念。惜しいことをした。終わっちゃうかぁ...。
高木:
ということで奥山さん、ありがとうございました。
奥山:
ありがとうございました。楽しかったです。



📻音声版はこちらから

◇ ◇ ◇

奥山輝大さんのプロフィール
1983年、東京生まれ。東京大学理学部生物学科卒業後、東京大学理学系研究科生物科学専攻博士課程修了、博士(理学)。マサチューセッツ工科大学博士研究員(2013年〜2017年)を経て、2017年より東京大学定量生命科学研究所准教授として研究室を主宰。他人を認識、記憶する脳神経メカニズムの解析が専門。特定の相手に対して、好きや嫌いといった感情を人為的に作り出す神経科学手法を開発し、2016年にScience誌にて発表。2019年文部科学大臣表彰若手科学者賞を授賞。

ストレッチーズさんのプロフィール
太田プロダクションに所属する福島敏貴と高木貫太からなるお笑いコンビ。2014年結成。
慶應義塾大学お笑い道場O-keis出身。2021年M-1グランプリ準々決勝進出。
ツギクル芸人グランプリ2022優勝。


国内最大級のお笑いラジオアプリ「GERA(ゲラ)」では
「ボケ学」の他にも芸人さんやお笑いに関する番組を配信しています。

ぜひお聴きください!

▼アプリダウンロードはこちらをクリック(登録不要・無料)

▼レギュラー番組一覧


この記事が参加している募集

わたしとポッドキャスト

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?