学び直し風邪診療

献本御礼。非常に興味深い本だった。

風邪を論じた良書は日本に多い。おそらく海外よりも多い。それは逆説的に、日本がこの疾患とうまく折り合えていなかったがゆえの苦悩の表れでもある。

ぼくは「立場から」論ずる事自体に否定的で、学会で「なんとかの立場から」みたいなシンポを見ると「けっ」と思ってしまう方だ。言説は普遍性を持つべきで、ある「立場」にある人に特権的なコトバがあることが断絶や対立を生んでいると考えるからだ(イスラエルを見よ!)。が、あえて言うならばこれは東京医科歯科大学の感染症の教授の「立場から」書いた本ではない。そういう眼差しの本ではないことは読めばすぐ分かるし、執筆者も厳選されている。風邪の診断や現象論はかなり詰められていたのだけれど、セッティングごとの対応の違いなどをここまで論じた本は他に知らない。風邪はまだまだ論じる隙間の多い疾患なのだろう。

とはいえ、ほんの10年くらいまでは表舞台で、わりとエラい人が「それでも風邪は抗菌薬で治す」など大っぴらに主張していた。そんな時代を考えると、感染症の世界も隔世の感がある。

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