メロペンか、ピプタゾか

よく臨床現場で迷うのは「メロペネム(メロペン)か、ピプタゾか」ではなかろうか。素朴な方法としては、メロペネムは届け出、許可が必要な病院が多く、面倒くさいのでピプタゾ。患者の容態がよくないとき、よくならないときはメロペン、といった、割と雑な使い分けが多いようだ。
せっかくなので、生成AIのPerplexityに聞いてみた。ピプタゾではなく、メロペンのほうがベターなシチュエーションを訊いてみたのだ。以下の違いが列挙された。
有名なものでは、Merino studyで優劣が分かれたESBL産生菌がある。この場合はメロペネムのほうがピプタゾよりも効果が高い。しかし、そもそも日本で見つかるESBL産生菌だとセフメタゾールが第一選択になりやすいし、そもそもCTXなどに代表される日本のESBLが、海外のMerinoの結果をアプライできる菌なのかは不明なままだ。私個人は、ことさらにESBLを考えてメロペネムを使うことはない。

Harris PNA, Tambyah PA, Lye DC, et al. Effect of Piperacillin-Tazobactam vs Meropenem on 30-Day Mortality for Patients With E coli or Klebsiella pneumoniae Bloodstream Infection and Ceftriaxone Resistance: A Randomized Clinical Trial. JAMA 2018; 320:984–994.
 
AmpC産生菌、特にEnterobacter, Citrobacter, Serratiaなどにはメロペネムは安定した活性を持つが、ピプタゾはしばしばそうではない。とはいえ、この場合もセフェピムを使えばいいわけで、ことさらにメロペネムを使う根拠としては弱い。
アシネトバクターにはカルバペネムの方が良い、という海外の知見もあるが、日本のアシネトバクターはほぼほぼアンピシリン・スルバクタムに感受性があるため、これも根拠としては弱い。あと、Listeriaにはピプタゾよりもメロペネムのほうが活性が高いらしいが、アンピシリンを使えばいいので、これも使用の根拠にはならない。
というわけで、日本の診療現場ではとりたててメロペネムをピプタゾに優先させて使用する根拠は乏しい。もちろん、生命危機が差し迫っている敗血症性ショックのときなどは、私もメロペネムを用いて、あとでDe-escalationを目指すことは多いが、そうでないときはことさらにメロペネムに固執する根拠は乏しい。
ピプタゾを使っていて熱が下がらない、あるいはCRPが下がりにくい、みたいな理由でメロペネムに変えるプラクティスをよく観察するが、殆どの場合は下策である。その多くはソースコントロールの不良や、あるいはまったく両抗菌薬とは関係ない感染症、あるいはそもそも感染症でないことが多い。「ピプタゾー>メロペネム」が良策である可能性は非常に低い。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?