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ビジュアル実証経済学6 スキー・スノーボードにおける主観採点のデータ解析

北京オリンピックが終わった.筆者がスキー場でアルバイトしていた頃よりも,確実に日本のスキー・スノーボードの技術水準は向上している.一方で,平野歩の超人技(決勝二本目)が正しく評価されていないことや,高梨沙羅のスーツ規定違反(4か国5選手がペナルティ)など,冬季五輪に関しては採点やジャッジのシステムが夏季五輪ほど洗練されておらず,疑惑の判定が多く存在する.

アルペン,(ダウンヒル・DH),回転(スラローム・SL),大回転(ジャイアントスラローム・GS),スーパーG(スーパー大回転,SG)のように速さを競うものは紛れが少ない.一方で,ビッグエア,スロープ,ハーフパイプのようにカッコよさ,美しさを採点するものは,主観が多分に混入する.では,主観点とは何であろうか,あるいはそれを客体化可能であろうかという点が問題になる.

例えば,安定性に関していえば安定感はある程度共通認識を持てるかもしれないが,わざとズラした軸…コークやロデオ・ミスティーをどのように評価するのか.あるいは高回転ほど得点が高くなるはずであるが,回転数を犠牲にしてローテーションが入るオシャレトリックとしてのシフト・レイト・シャッフル・ドライブ・タップなどは競技としては減点対象であろうか?さらにトゥ抜きのフロント,ヒール抜きバック,スイッチバックヒール(セージコッツェンバーグ,セブ,マークスクリーブランドくらいのイカれ超人くらいしかしらんけど…)の,それぞれの難易度をどのように評価するのかは多分に疑問符が付く.

ではこの主観による紛れは,オリンピックやX-Gameのような超人類の祭典に特有の問題なのであろうか?筆者は違うと考えている.大きな大会は五人三採なので多少はマシで,一般人の手の届く範囲(三人三採)の方がこの問題はより顕著に表れる.何であろうか…それは,基礎系・技術選や検定である.

よく検定等では,白馬(八方・岩岳),志賀焼額,野沢が難しい.一方で,比較的容易とされるゲレンデもあるとよく言われる.スキー場で働こう(リゾートバイト)と思うと,検定は大きく意味を持ち,一般的に2級以上を上級者とすることが多い.パトロールやレスキュー,ディガーなどは2級以上(2級は各種目65点以上,1級は各種目70点以上)を所有していることを条件にするゲレンデも多い.いや,なおさら検定に差が出たら検定の意味ないだろと…

そこで,今回はSAJ北海道が公開するプライズテストの合格者のデータをもとに,解析する.北海道を選択した理由は,北海道以外の都道府県では,各都道府県ごとに設置されたSAJが公式なデータを公開していないためである(事業報告及び決算収支が公開されており,PDFであるがないよりマシである).1級のさらに上位にテクニカルプライズ・クラウンプライズとあり,おそらくこの採点基準は,下位の検定でも同様に難易度が推移すると考えるのが妥当であろう.そもそも本当に主観により大きな差が出るのか?を検証したい.

開催地は下記のとおりである.

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検定合格率の開催場所ごとのデータを確認すると下記のようになる.

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2016年
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2017年
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2018年
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2019年

スキー場は昨今倒産などが多く,所有者が変更されている場合は最新の名前に統一して2016年から2019年までをグラフ化してある.この時,平均合格率が20%以下の年もあれば25%程度になる年もある.審査の難易度以外に,おそらく開催地の開催日におけるゲレンデコンディションや気象条件が大きく影響する可能性が多分にあると考えられるであろう.

次に,時系列グラフを確認すると下記のようになる.

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さっぽろばんけいスキー場やFU'sスキー場など札幌(都心部)に近いスキー場あるいは,2019年を除いてはニセコグランヒラフは比較的合格率が高いようである.これはいわゆるショートゲレンデの方が審査が甘い.あるいはリゾート(検定も含めて記念受験サービス)では審査が甘いからと言えるのではないであろうか.つまり都市・リゾートとしてのゲレンデと,スキー・スノーボードそのものを競技として行う地域の地域間格差が表れているのではないか?と筆者は考える.これに関してはさらに調査する必要がありそうではある.

まぁ,採点に文句つけるほど若くなくなっちゃったんですけどね…

スキー・スノーボードは,自身の滑走力に合わせて,安全にお楽しみください.

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