第16回「どうする町内会!」(茂呂英雄)

  第16回の研究会では、「どうする町内会」をテーマに、茂呂研究員から基調報告をしていただいた後、各会員から自治会・町内会に関する現状や考察について発表していただきました。(2023年4月)

 まず、茂呂研究員からは、自ら町会活動を行うにあたって昨今の自治会・町内会の現状を振り返り、コミュニティとしての自治会・町内会の役割を整理しておきたいとの問題意識のもと、報告がなされました。経済学者:ラグラム・ラジャンの著書『第三の支柱』等を参考に、下記のような論点の提示がなされました。
 ラジャンの言うコミュニティは、国家や市場の行き過ぎを是正する重要な役割があるということ。また、そのコミュニティは対価を求めない協力関係が基になっているという点が示されました。
 そこから得られる理想的なコミュニティ像として、報告者は、まず地域の人々が安定した生活を送るためには、地域の課題を話し合い、協力して問題を解決していく集まりが必要であり、さらにその活動には政治や経済界に物を言うことも含まれるとしています。
 しかし、その現実はというと、報告者自身の自治会役員の経験やこれまでの行政職員での経験を踏まえると、自治会町会も行政も、コミュニティという言葉の内容やその役割・重要性を明確にしないまま使ってきたとの指摘がなされました。 
 以前は、コミュニティが担ってきた防犯や消防、福祉的協力などは、今では、警察・消防や自治体・社会福祉協議会などの専門機関が担うようになっている。明確な契約や取引がないあいまいな支援、協力であるコミュニティ活動は、煩わしさもあり、敬遠されるようになってきていることもまた事実であるとの指摘もありました。
 しかしながら、問題が複雑化する現代社会において、専門組織や法的な対応だけですべてが解決できるのか。改めて今、自治会・町内会の必要性を整理してみる意義はここにあると説明がなされました。

 防犯や防災分野には、専門分化した専門組織では手が回らない仕事が多く、自治会・町会が補完できる分野がある。また、高齢者支援では、高齢者の食事提供のための移動販売車の誘致や弁当の宅配システムづくりなどが考えられる。子供の居場所づくりへの協力など学校等の補完的役割は少なくないとの例示も示されました。

 自治会・町内会の活動を活性化するためには、自治体が自治会・町会の持つこうした意義や役割を明確に示すことが必要である。自治体は元々はコミュニティとして成立し、専門分化する形で行政機関が進化した。一方の自治会・町会は、任意団体として自然発生的な自主性が強調され、もがきながら活動しているという実態がある。その中で、コミュニティとしての自治体が地域をどう発展させていくのかを明確にし、その中で自治会・町会の役割を明確に示し、それを自治会・町会と共有することが重要であるとの指摘がなされました。

 最後に、報告者は、自治会・町会を母体としてコミュニティを育てていくための留意点を3点挙げています。①人々の多様性を認め合う関係 ②無償の協力関係、助け合う関係 ③「博愛」による自分と隣人や地域のための行動

 茂呂研究員は実践として、地元東村山で高齢者の食事提供の仕組みづくりに取り組んでいるとのこと。地域の人々が、小さな問題から話し合いをはじめ、解決に向けた協議や協力を繰り返し、継続的に行っていくことが重要であるとする。これにより、食料やエネルギーの地産地消などのより大きな問題にも取り組める協力関係=コミュニティが形成されてくるのでなないかと期待を示しました。

 報告資料は、この「地誌東京研究会第16回報告資料」を👉クリックしてください。
 また、参考資料については、こちら「自治会町会がコミュニティとして担う役割の考察」(茂呂英雄)を👉クリックするとご覧いただけます。


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