第5回報告「地域ネットワークを活用した持続可能な地域づくりとその実践事例」(小金澤孝昭)

第5回目の報告は、小金澤副会長から「地域ネットワークを活用した持続可能な地域づくりとその実践事例」について報告をいただきました。(2020年11月)

 報告では、持続可能な開発目標(SDGs)が普及していく中で,注目されるようになった「持続可能な地域づくり」に焦点を当て、その中でも具体の課題を解決していくことができる人材育成の重要性と東北地方の実践例を紹介していただきました。

 農山村地域の人口減少は、それまで地域の定住を支えてきた「農業・農村」や「学校教育」などの社会的共通資本(定住資本)の衰退が招いたものであること。これからの持続可能な地域づくりの方法には、こうした地域における社会的共通資本や地域コミュニテイーの再構成とそれに伴う、交流人口,関係人口の拡大,移住による定住人口の拡大が必要であることが示されました。

 そして、その具体的な地域づくりの方策として

1 求心力のあるテーマの存在

2 課題解決のための関係団体のネットワークの創設

3 外部への情報発信・地域づくりのための人材育成など地域教育・地域づくりの内容

の3つの観点から、東北地方の4つの地域の特徴と実践事例を取り上げ、豊富な資料に基づき、様々な分析を加えていただきました。

 4つの地域の共通点は、世代を超え地域で学ぶ「全世代型平泉学」、気仙沼市の「復興・海洋教育」を軸としたESD(持続可能な開発のための教育)の実践、大崎市の世界農業遺産を生かした消費者教育と学校教育との連携、ユネスコスクールを活用した「只見学」など、人材育成を進める教育力が根付いているということ。そして、いずれの地域も地域内外のネットワークとの連携・連帯の存在が挙げられると説明されました。

 一方、様々な連携で生まれた地域の教育力を地域経済や地域社会の活性化へどう結び付けるかが課題であるとの指摘がありました。

 小金澤副会長の報告を通じて、持続可能な地域づくりのためには、魅力的な地域づくりのテーマと文字通りその取組を持続させていく担い手である人材の育成、そのバックボーンとしての地域の教育力が重要だということがよく分かりました。

 コロナ禍にあって、国内移動もままならず、“GO TOトラベル”のような即効性のある支援もできない中、これまで以上の厳しい状況が想定される地域の課題解決にどのような支援やかかわりができるのか、考えていきたいと思います。

報告資料は、下記「地誌東京研究会報告資料」を👆クリックしてください。


👉「地誌東京研究会報告資料」

参考資料は以下の資料を👆クリックしていただければ見ることができます。

小金澤孝昭(2020)「地域ネットワークを活用した持続可能な地域づくり―世界文化遺産・世界農業遺産・ユネスコエコパーク・震災復興をキーワードにしてー」 成蹊学園・成蹊大学サステナビリティ教育研究センター『サステナビリティ教育研究』第2号 pp.35-50


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