第16回「どうする自治会・町内会」(後半第1部)

 第16回の研究会では、「どうする自治会・町内会」をテーマに、既に紹介した茂呂研究員による基調報告(「どうする町内会」)の後、各会員から自治会・町内会に関する現状や考察について発表していただきました。(2023年4月)(山川先生の助言と報告)

 中井研究員の報告(「自治会・町内会のタイプ区分とそれらの歴史的変遷、地域差について」は後日、本HP掲載予定)の後、山川先生から重要な助言をいただきました。
 自治会・町内会等の地域自治組織の活動の持続可能性は、その団体が持つ経済的・財政的基盤の有無にかかっている。中井研究員の報告にあった氏子集団についても、おそらく山林などの伝統的コモンズのような集落が持つ財産的基盤の上に活動してきたのであろう。平成の大合併で誕生した島根県雲南市は、旧自治体の地域毎に「地域自主組織」を設置し注目されている自治体であるが、以前から小水力発電が運用されるなど、再生エネルギーの地産地消の取組が盛んである。こうした取組が経済的基盤を豊かにし、地域の自治力の向上につながっているのではないかと指摘されました。
 今回のテーマである自治会・町内会を維持・発展させていくためには、こうした経済的基盤が重要になっていくのではないかとの思いを新たにしました。あわせて、山川先生から、「町内会をどのようにとらえるのか」と題し、町内会の歴史と分析を行いとりまとめた岩崎信彦他編『町内会の研究』(御茶の水書房、1989年刊)の一部を、参考資料として提供いただきました。500年の間、様々な変遷と評価を与えられた中で生き延びてきた町内会の姿がこの資料から読み取ることができました。

 報告会の後半は、自治会の現状について報告が続きました。

(廣瀬報告)
 廣瀬からは、実際に自治会長として過ごした2年間の実践記録を伝えさせていただきました。下記の報告資料を見ていただければ、当時の自治会活動の状況をお分かりいただけると思います。
①役員選任などの決定過程の不透明さ ②旧態依然の活動内容と情報伝達方法 ③会長の負担感の増大 など様々な課題がありました。在任中に一定の改善を図ることはできましたが、自治会・町内会の持続的な発展のためには、多くの抜本的な改革が求められていくのは間違いありません。

東京都の「東京の自治のあり方研究会「最終報告」」(2015年)では、2003年から2013年の10年間で、自治会加入率は約61%から約54%へと大幅に下がっているとの結果が公表されています。小平市も同期間に約47%から約40%へと、現時点では33.7%まで減少しています。また、市により加入率そのものの実態も大きく異なっているのも多摩地域の特徴です。武蔵野市のように全市的にネットワークされた自治会・町内会を持たない市や西東京市の約20%と低い地域がある一方、八王子や府中、町田、東村山のように50%を超える地域もあります。(数字はいずれも2018年立川市調査)
 現在住んでいる地域の自治会の役員は持ち回りで運営されています。いずれ役員となる機会があれば、この間の経験を生かしていきたいと思います。

報告資料はこの👉「「どうする自治会」事例報告」をクリックしてご覧ください。

(内海会長報告)
 さいたま市の大世帯の自治会の班長を務める内海会長からも口頭の報告がありました。
 自治会名はさいたま市南区別所第三自治会。地域はさいたま市南区別所3丁目、4丁目、5丁目で、総会資料によると加入世帯数は1273戸、3100名で、加入率は69%。地域は、県庁に近い古い住宅街で、一軒家が8割ほど。構成は、会長、副会長、部長、班(4~10世帯。班長は輪番)。自治会として2018年に法人格を取得し、ホームページも作成(名称は別所第三自治会)。法人格の取得は地方自治法第260条の2にもとづき、そこには特定の政党の利用は禁止されているため、それ以降、顧問等に政治家はいなくなったとのことです。当自治会の活動は、地域内の交通安全、防犯活動、清掃活動をはじめ、桜祭り、夏祭りなど、他の自治会と同様の活動を行っています。近年のコロナ禍で、いくつかの行事は中止となり、自治会の存在自体が希薄化し、この間は回覧板を回しているだけという現状ですが、今後は活動が再び行われます。私自身は、地域の元からの住民ではないため、今のところ役員の話は来ておりません。
 従来、町会・自治会には法人格が認められておらず、土地や建物などの不動産を所有していても団体名での登記ができませんでした。しかし、1991年の地方自治法改正により、認可地縁団体制度が導入され、団体名での不動産登記が可能となりました。2017年時点で、全国51030団体で全国の自治会等の地縁団体数の17.2%となり、認可数は増加傾向にあります。今回の研究会の中では、この認可地縁団体についての議論はできませんでしたが、これからの地域コミュニティを考えていく上で、一つの論点になっていくかもしれないと思いました。

(岩田研究員報告)
 最後に、秦野市で現に役員をしている岩田研究員からも報告をいただきました。
 自治会の世帯数は171戸。14の組で構成され、それぞれ組長・副組長の役職があり、会長のほか庶務、会計等6名の役員職が置かれている状況です。非加入の住民も一定数おり、今後の役員や会長の担い手不足が課題であることは、他の自治会と同様であるということでありました。

(最後に)
 自治会・町内会には、これからも地域コミュニティを支える組織として一定の役割が期待される一方、自治会加入率のさらなる低下、役員の高齢化と担い手不足が続く現状では、その持続可能性には多くの課題があることが分かりました。
 価値観の異なる世代間や新旧住民間の融合、行政との新たな協働の模索、上意下達方式に頼らない自律的な自治会運営の在り方、地域コミュニティ活動における経済的基盤の確立など、今回の研究会の議論の中で出た論点をさらに深め、一人ひとりがそれらを実践的に取り組んでみることが大事だと思います。その先に、基調報告でいうところの、新しい第三の支柱としてのコミュニティ像が見えてくるのかもしれません。

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