第6回報告「水害対策をめぐる最近の問題点(マイタイムラインの有効性)」(茂呂英雄)
第6回目の報告は、茂呂研究員から「水害対策をめぐる最近の問題点(マイタイムラインの有効性)」について問題提起をしていただきました。(2021年3月)
平成27年9月関東・東北豪雨以降、必要性が叫ばれるようになった、マイタイムライン(自分自身が作る避難行動計画)に着目し、23区の現状を踏まえ、課題や今後の打開策について報告をいただきました。
マイタイムラインを作成することによって、
① 住民自身が地域の実態を知ることができる。
② 自ら避難することの大切さを意識する契機になる。
など効果が期待できる側面がある一方で、
実際のマイタイムライン作成の作業過程では、様々な矛盾を感じるようになる。
具体的には、
➀ 大都市における水平避難は無理がある。
② 実際の避難情報は直前のため事前の避難行動は難しい。
③ 現状では住民自身で判断しうるだけの知識も情報もない。
などの問題点が示されました。
想定外のリスクを克服するには、住民に身近なコミュニティで解決することが理想と言われるが、大都市の地域にはそのような力のある地域はごくわずかである。残念ながら、住民だけでなく、行政にも地域の災害を正確に説明できる人材はほとんどいない。コミュニティも自治会等の組織率が落ち、高齢化が進み、活力が低下している。など地域の災害への対応力の脆弱な現状が示されました。
その打開策として、茂呂研究員は、
➀ 自治体は管内の実態をしっかり把握し、対策を練り上げること
② 練り上げた対策を踏まえ、地域住民との真摯な話し合いとその繰り返しが重要。その中から、地域特性の共通理解が生まれ、訓練などを通して、地域の実情にあった対策が生まれてくる。
③ その成果を教育の面でも取り上げていくこと
の3点が重要であるとまとめていただきました。
マイタイムラインの作成過程を、できあいの雛形に合わせ形骸化させてしまうのではなく、まさに茂呂研究員の言う②に重ねることができれば、実効性のある避難行動計画になるのではないかと思います。そして、③の人材と教育の必要性の指摘は、第5回の報告とつながりますが、地域づくりには、やはりここが肝心なところだと感じました。
災害を含めた地域の特性把握を得意とする地理学を学び、仕事を通じて社会貢献してきた我々として、これから何らかの形で地域貢献できるよう、頑張りたいと思います。
報告資料は下記「水害対策をめぐる最近の問題点(問題提起)」を👆クリックしてください。
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