見出し画像

2-1 3年間は突っ走れ!

新人の皆さんにボクが伝えたいことは、
「無理をしろ!」
ということである。世の中、自分のペースや自分のライフスタイルを大切にするという風潮があるが、職業人にとって一番大切な時期は最初の三年である。この3年間にどんなペースで仕事をするかが、この後の職業人としてのペースを決める。マラソンではなく、400mや800mの選手のように走り出す必要がある。
幸か不幸かボクが最初に就いた教職は、最初の1年目から学級担任を任された。それも複式学級の3・4年生。学校の先生のしんどさは、自分が伝えたことがそのまま、子どもたちの知識に直結することである。ボクがサボってやらなかったことは、クラスの子どもたちはずっと触れないまま生きるかもしれないのである。そういう意味で、ボクは最初から責任のある立場におかれた故に、手を抜くことができなかったというのが本音のところである。当時読んでいた本には、、黒帯の教師になるために、100の研究授業をすべきだとあった。何でも100回やってみたら精通する・・・と。ボクらの仕事では、それは何にあたるか?ボクは、「事業をする」ことではないかと思っている。毎月1回、事業をすれば、1年で12回。9年も続けると、100回になる。それを経て、ようやく黒帯になる。ただ、黒帯で喜んでもいられない。お客さんは、新人であろうとベテランであろうと、求めているサービスが完璧に提供されることを求めている。いや、プラスアルファの仕事がされたときに、本当に感動するものである。故に、いかに黒帯の段階に近づき、そしてプラスアルファの仕事を提供できるか、そこにお客さんの感動が伴ってくる。
新人で入ってきた職員にボクが伝えることは「無知の知」作戦である。施設のわからないことを、来ている人たちに「教えてください」と聞いてまわるのである。これは、ボクも29歳のときに、青年の施設で実践したことである。
「私がわからないので、教えて・・・」
と頼むと、ほとんどの人が
「しょうがないなあ」
と言いながら教えてくれる。ボクは、そのことを通して、その場所の物事の進め方を覚え、そして教えてくれた人に感謝することを学んだ。そして、そのことから信頼関係が生まれた。30代後半で児童会館に異動したときも、子どもたちに聞いてまわった。
「先生そんなことも知らないの?」
なんて言われながらも、子どもたちと関わることができた。しかし、よく考えてみると社会教育施設において、職員は知識を伝える役割を担っているというよりは、人との関わりを作っていくことが本当の仕事である。無知を隠さず、それを逆手に人の中に入っていったときに、今までと異なる人間関係が生まれる。それこそ、本当のグループワークである。ただ、人間なので相手から「わからない!」
と馬鹿にされることは時に傷つく。しかし、おさえておくべきことは
「その施設の設置目的が何なのか」
そして
「ボクらの仕事とは何なのか」
ということである。そのことを心に秘め、人の中に入っていき、その人たちがどんなふうに考え、何に困り、何をしたいと考えているのかをキャッチする。そのことが、次の事業の大きなヒントになる。児童会館に実習に来た大学生に、言われてうれしかったことは、
「児童会館の先生方が子どもやその親のことを真剣に考えていることに感動した」
という言葉である。初めのうちは、自分が思うほど、人の役には立てないかもしれない。しかし、誰にも増して施設に来ている子どもたちや、親のことを考えている・・・そのことからスタートしてもよいと思う。札幌農学校の2期生の新渡戸稲造さんは、「学問より実行」という言葉を残された。これは、学問と実行を比較する意味ではなく、学問をすることは「実行するためにある」という言葉である。ボクらは、利用している人のことを考え、そして実行する者でありたいと思う。
3年間は、突っ走れ!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?