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パスタ

梅野田「18、19の頃かな、『夜のきらびやかな街を歩いていて、色々楽しいことや理不尽があった結果、いつの間にか牛の胃袋の中に自分が入っていた』って言うような内容の小説を書いたんだけど、あんなのどう言う感覚で書いたんだろうな。はは。今じゃあ無理だわ。はは」
飴川「つうか小説なんか書いてたの」
梅野田「うん。暇な時書いてた」
飴川「ふうん」
梅野田「うん」

飴川「ナポリタン喰う?」
梅野田「ナポリタン?」
飴川「ナポリタン」
梅野田「何でナポリタン」
飴川「何でって、お前」


飴川「知らねえよ」
梅野田「そうだな、俺もよく知らねえな、何でお前がナポリタンなんて言ったのか」
飴川「そうだろ」
梅野田「うん」
飴川「じゃあよくわからないけどナポリタンを作るか」
梅野田「うん。ああ昨日の飲み会の帰りにシーチキン買ったよな、あれ使ったら」
飴川「うーん。ほんとなあ。何だろなあ。あんなの買わなきゃ良かったなあ」
梅野田「飲み足りないからお前ん家で飲み直そうって、帰りにスーパーでつまみにって、自分で買ったんじゃん」
飴川「そうだけど」
梅野田「だろ」
飴川「そう言って大概はそんなに飲めないんだよなあ」
梅野田「知らねえよ、気付いたら寝てるし」
飴川「いやあ。駄目だねえ」
梅野田「別に駄目じゃないけど」
飴川「あ、ほんと。じゃあ大丈夫か」
梅野田「別に大丈夫ってわけでも」
飴川「どっちだよ。どっちにするんだ。自分の道は自分で決断するんだ」
梅野田「じゃあカルボナーラで」
飴川「どう言う了見だ、お前。ミートソース作るぞこの野郎」
梅野田「おお。いいよ。大丈夫だ」

飴川「大丈夫なの」
梅野田「良かったな」
飴川「良かった。大丈夫で良かった。凄く良かった」
梅野田「俺も安心したよ。ほんと良かったなあ」

飴川「良かった良かった」
梅野田「良かった良かった」
飴川「涙が出るくらい良かった」
梅野田「息が詰まるくらい良かった」
飴川「七夕を『ななた』って読んでしまってあながち『たなばた』と語感は似てなくもないなと思えるくらい良かった」
梅野田「ナポリタンにはシーチキンは合うのか、知ったことではないけど飴川が勝手にナポリタンとか言うから適当なこと言って良かった」

ふたり「良かった」



良かったらしいですよ。

終わり

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