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朝起きるのが苦手な人はカーテンを開けて寝てみよう

日本人の5人に1人が悩んでいると言われる「不眠症」。どうすれば、朝までぐっすり眠ることができるのか? スッキリ目覚めるには、どうすればよいのか? そんなお悩みを持つ方におすすめしたいのが、精神科医・岡田尊司先生の『人はなぜ眠れないのか』です。今夜から試せる「睡眠コントロール術」が満載の本書より、一部を抜粋してご紹介します。

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「睡眠相後退症候群」とは?

二十代の男性が、極度の朝の眠気と起床困難を訴えて、睡眠外来にやってきた。目覚まし時計を二つセットして、両方が鳴り続けているのに起きられないという。

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親の助けを借りて、どうにか起きている。しかし、何とか目覚めても、一、二時間は頭はぼんやり、体はぐったりして何もする気になれない。そうした状態が、大学時代から続いているという。大学時代は、授業中が眠くて集中できず、居眠りすることも始終だった。特に午前中の授業はダメで、休んでしまうことも多かった。

就職してから、そういうわけにはいかなくなり、六時に起きているが眠気がひどくて、仕事中も眠ってしまいそうになる。夜は元気で、頭が冴えてくる。十二時過ぎに床に就くが、寝つきはよい。

翌朝の眠気がましになるように早く床に就いてみたこともあるが、そうするとなかなか眠れず、結局、夜中まで寝つけないので同じことになってしまう。週末は午前二時か三時まで起きていて、昼近くまで眠っている。

典型的な概日リズム睡眠障害のケースである。このケースは、睡眠相が遅れる睡眠相後退症候群で、眠くなる時間と目が覚める時間が遅くずれ込んでいる。そのため深夜にならないと眠れないし、昼頃にならないと目が覚めない。いわゆる夜型の睡眠パターンになっている。

自分のリズムで生活すればいいのであれば、睡眠にたいして問題はないが、社会生活のリズムと合わせようとすると、大変な困難に出合うことになる。

朝起きるために、目覚まし二つどころか、四つもセットしていたというケースもある。そうした問題を抱えたことがない人からみると、冗談のように思えるかもしれないが、当人たちにとっては、とても深刻な事態で、必死の努力の表れなのである。

週末には明け方近くまで起きていて、昼過ぎまで眠るということも多いが、それがいっそう睡眠相を遅らせてしまい、夜型を強めてしまう。休日でも、同じリズムで生活するように心がけることが大事である。睡眠不足を解消するために、一時間程度起きる時間が遅くなるのはやむを得ないが、それ以上は避けたほうがよい。

「光」の調整がポイントだった

概日リズム睡眠障害の改善の決め手となるのは、光線を浴びる時間帯である。朝が起きられない場合には、朝早くから寝室に光が明々と差し込むようにするとよい。

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一方、夕方以降は、強い光を浴びることは避けたほうがよい。テレビを見たり、パソコンをしたりする時間を減らし、特に夜九時以降に明るい画面を見ることは極力控える。外出や散歩も、午後遅くよりは、できるだけ早めの時間帯、できれば午前中に行うとよい。

朝起きるとすぐに、一万ルクスくらいの明るさの光線を、一時間程度浴びる高照度光療法も行われる。晴天のときの戸外の明るさは、十万ルクス以上であるから、朝一番に外に出て三十分以上過ごすことができれば、同等以上の効果がある。

遮光カーテンは、概日リズム睡眠障害の原因となり得る。特に夜型になりやすい十代から二十代の若者では、遮光カーテンの使用は避けたほうがよい。

遮光カーテンを布カーテンにしたり、カーテンを開けるようにしただけで、朝の目覚めがよくなることはしばしば経験する。シャッターや雨戸も同様で、保安面に問題がなければ、朝が来ても部屋が真っ暗のままという状態は、できるだけ避けたい。

徐々に部屋が明るくなっていくことで、脳は目覚めの準備をしていく。光がさえぎられていると、自然な目覚めが訪れにくいし、急に明るくなっても、脳はまだ眠りから覚めきらないため、眠気が残りやすい。

逆に早く目が覚めて困るという場合は、寝室を暗めに調節する必要がある。遮光カーテンやシャッターも有効である。

しかし、季節によって部屋の明るさは変化するため、カーテンの開き具合を微妙に調節しながら、ちょうど起きやすいようにコントロールするとよい。

実際にやってみれば、カーテンの開き具合がわずかに違うだけで、目覚めやすさが大きく異なることに驚かれるだろう。調節が容易という点では、ロールスクリーンが便利である。

生活習慣が非常に大事だが、それ以外に治療としては、高照度光療法やビタミンBの投与がある。高照度光療法は、五千~一万ルクスの光を毎朝一時間程度浴びることにより、体内時計の遅れを修正するものである。

ビタミンBは、通常のビタミン剤に含まれている程度を服用しても効果がなく、比較的大量に服用する必要があるので、専門医に相談したほうがよい。